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「九つの答」 その2

2022年07月07日 | JDカー
■エリック・アンブラー「シルマー家の遺産」(1953年)「恐怖へのはしけ」(1951年)やっと読み終わったよ。
★時間かかりましたよね。
■あんまり面白くなかったからなア。今となっちゃあ、古臭い国際スリラーだからね。
「シルマー家」はナポレオン戦争の時代から説き起こして、
現代(第二次世界大戦直後)までシルマーという家筋を追う話なんだが、
『遺産』の意味が最後で分かるという趣向なんだ。
「はしけ」はB級スリラー。冒頭に出てきた船の名前がラストで再出現するところは、
ほんのちょっとだけワクワクしたけど。
「恐怖へのはしけ」には巻末に都筑道夫の解説があって、曰く
『出版社から昔のような冒険スリラーをと請われて、筆名で発表したのでは』とあるんだ。
この時代のアンブラーは高級スリラーに移行していて、
アンブラー名義でB級スリラーは書きたくない、ということなんじゃないかな。
★でも表紙にエリオット・リード(エリック・アンブラー)とあるじゃないですか。
■よく分からないけれど都筑の書き方からすると、
早川の仕業じゃなくて、底本がそうなっていたんじゃないかな。
★オリジナルの出版社が、筆名と本名を一緒に掲載していたということ?
■売れ行きを考えたら、そうしたくなるよね。
都筑の解説から、出版社より作家へのプレゼンがあることだとすると、
「九つの答」もカーが版元かエージェントからのプレゼンを受けて書いたんじゃないかな。
★「カー先生、これからはこういう冒険スリラーがパラダイムになります、
カー先生なら書けますから、ぜひお願いしますよ」みたいに?
■それで、リアルな冒険スリラーが書けたのなら良かったのにね。
アンブラーはカーの三歳下だけど、筆致がリアルで登場人物の性格設定も現代的なんだ。
それに対してカーのほうは、主人公は19世紀末の「ゼンダ城の虜」的義侠青年だろう。
たぶん出版社は、流行のリアルなスリラーを期待していたんじゃないかなあ。
★アンブラーの作品にはやたらに「恐怖」が付きますね。
■「恐怖へのはしけ」の「はしけ」は大型船と桟橋の間で人やものを運ぶ船のこと。
それが恐怖って、ちょっと適当だよね。
★昔、キッスのアルバムにやたら「地獄の」が付いていたことを思い出します。
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