spin out

チラシの裏

帝都東京・隠された地下網の秘密

2006年03月08日 | ノンフィクション
都市の姿というのは、ヒトの視線から見えるだけのものではないですね。下を見れば地下には地下鉄、地下道をはじめ目に見えない通路があり、はたまた空から見れば屋根と屋上はまた別世界。「帝都東京・隠された地下網の秘密」はそんな都市の裏側にある別の世界、もしかしたらありえたかもしれない別の東京を教えてくれます。

東京の地下鉄は戦前は渋谷と浅草をむすぶ銀座線だけだったはずです。いまの迷路のような地下鉄網は戦後に作られたもの、とされていました。ところが著者は2つの都市マップの中のささいな矛盾点に気づき、謎の東京地下ワールドへ入ってゆきます。本職は記者・ジャーナリストなので取材のツボは押さえているはずなのに、いっこうに謎の核心に近づけません。それはなぜか。

著者の仮説は、じつは戦前の大震災後の帝都復興のさい、当時の東京市長後藤新平によって地下鉄計画が立てられ、それは「実際に」建設されました。なぜかそのことは国民に知らされず、日本初の地下鉄は銀座線とされたのです。その地下鉄道は軍事施設に転用され、戦後は政府によって一部は使われているものの封じられたまま。戦後の地下鉄敷設は、この戦前の地下鉄道を利用にしたにすぎないのです。

もうほとんど都市計画版「鉄人28号」ですね。東京の地面を1枚めくると、そこにはまったく別の東京が現れる。しかも戦前にトロリーバス計画があり、東京の地下に敷設された地下鉄網にトロリーバスを走らせようとしていた、と著者は喝破しているのです。

しかし著者の視線はそこにはありません。なぜ国が隠すのか。べつに日本最古の地下鉄は銀座線でなくてもいいはずです。もし今の地下鉄が戦前の地下鉄施設を流用しているなら、「今の地下鉄を作るためのカネ」は何に使われたのか。まさかロハで作られたわけではないはず。国にはどこまでも隠さなければならない理由があるのです。

ところで、こういった謎をテーマにした都市伝説小説があり、「ボーン・マン」「地下鉄少年スレイク」「ルーフ・ワールド」なんてのがあります。フィニイに「レベル3」という作品もあります。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鳥を見た | トップ | ゴーストなんかこわくない »

コメントを投稿

ノンフィクション」カテゴリの最新記事