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横溝正史の日記

2012年10月09日 | ミステリ
角川書店の「横溝正史読本」を読む。
再読ですが(再どころか何度も)、小林信彦が好きではないので、
読むたびにダブルバインドな心持ちです。
とはいえ、小林信彦による横溝正史インタビューは文句なく楽しいです。
話す内容を分かってくれる相手には警戒心もなく、思ったことを腹蔵なく言えるんでしょうね。



じつは元版には文庫版では割愛された正史の日記が載ってました。
昭和40年の1年間の日記ですが、
昭和40年は森下雨村と江戸川乱歩という正史にとっての大恩人が相次いで亡くなった年でした。
高知に隠棲していた森下雨村逝去の報は息子からの電報でしたが、
乱歩危篤の報には乗り物嫌いの正史ですらすぐに枕頭へ駆けつけています。
そんな正史も昭和40年には探偵作家としてはピークをすぎて、
する仕事といえば旧作の改稿ぐらい。
「人形佐七」を書き直す姿がちょっと悲しい。
(この時改稿していたのは、講談社の定本人形佐七捕物帳か春陽堂文庫の人形佐七全集?
講談社から出ていた新書版人形佐七捕物帳シリーズのためのようです)


ところがこの年の後半には、なぜかカーやクイーンなどをずいぶん読み返しています。
探偵小説の注文もない(旺文社からの注文が枚数の関係で掲載がボツになったのにもかかわらず書き上げたのが「上海氏の蒐集品」)のに、
この熱意はどこからくるのでしょうか。
とくにカーの未読本を次々と読破し、クイーンの「帝王死す」を途中でやめて、
『わけあって「悪魔が来たりて笛を吹く」を読み返す』というのは、
どんな理由があったのでしょうね、知りたいです。
知りたいと言えば、そのカーの未読本を読んだ感想も知りたい。

遺族から日記の掲載をよく思わないということで割愛されたと、
どこかで読んだ記憶もありますが、不確かです。
たしかに、正史以外の家族のプライベートなところに言及した文章があるので、むべなるかな。
以前に「子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集」がやたらに面白いと書きましたが、
正史の書簡もまとめると面白いのではないでしょうか。
世田谷文学館には正史の手紙が展示されていて、
「プレーグコート」について具体的な指摘が書かれていて(おぼろげな記憶ですけど)、ヒザをうった記憶があります。
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