春合宿その2 雪崩事故(4月28日)
雪崩直後、生きてる実感
雪崩に巻き込まれるなんてそう簡単にあることではない、無事帰って来たことだし貴重な経験としたい。そして、今後に活かすんだ。
前日は氷点下10℃前後の寒さに降雪20㎝くらいはあったのか、そして今日の暖かさ。登っていると、下着にシャツとベストだけでも汗が出る。
雪崩直前の休憩中、続々と登って来る人たち
手前はメンバー、その向こうは後ろ向きに下る二人組。雪を落としながら下りて来る。正に、雪崩直前
テン場スタート2時間チョッとのザイテングラート右の沢筋を登って穂高岳山荘まで30分くらいの処で、4回目の休憩を取っていた。誰かの「雪崩っー」の声に上方を見ると、20~30m先で白い雲の塊のようなものが迫ってくる。ザックを下ろしピッケルも外していたので咄嗟にピッケルを手にしてうつ伏せに這う。が、あっという間に塊に呑み込まれ逆さまに流される。ピッケルでブレーキを掛けようと思うも逆さの滑落状態では思うようにコントロールできない。
何度も回転するうちに頭が上向きになりピッケルを刺すも効き目なく、ただ流されるだけ。そのうちスピードも緩めになりピッケルブレーキも効いて漸く止まった。流されたのは100m以上あったか。この間、意外と冷静だった。我々パーティー9人の他、後続パーティーの10人以上も一緒に続いていたため30人以上は流された筈。
止まってまずした事。息が出来るかを確認し、上を見ながらポケットのカメラを取り出し現場の状況を撮り出す。
100m以上流された後に先ずしたのは、息の確認とポケットからカメラを取り出すことだった
下の方の黒い塊は人、8人は居る。右の岩塊は無事スルー
その内に廻りはザワザワし出し、パーティー間や仲間同士で「〇〇さん」「□□さん」とメンバーの安全確認が始まり、ほぼ全員無事のようだったが二人組の1人が「△さんが居ない、青いヘルメットの男性です。居ませんか」、「△さんっー」と大声で呼んでいた。そして、後続パーティーはトランシーバーでヒュッテの県警と取り合っている、「一人行方不明だが、他は無事」って。
パーティー間で点呼、中央はトランシーバ―で県警と通話中
事故後、殆どが下山に掛かるが、メンバーの樺さんは眼鏡を探しに登って来た
中央、メンバーの山さんもザックを探している
皆必死に下っている、後ろ向きになって
そんな中、傍を登る人も
行方不明者はかなり下の方まで流され、少し時間が経って確認できたがどうやら腰の骨を折ったようだ。でも生きてるだけでも良かった、そんな中でも傍を登り行く人達がある。
この人はまだじっとしていた
メンバーの山さんも下る
デブリの下りに、その脇を登る人
大きく見えるのは殆どが雪崩に遭った人たち
今回は表層雪崩、幸いにも雪崩れた量が少なく完全に人が埋もれるほどでなく30人以上が数十mから100m以上流されただけ。そして途中に岩や木立もなく、ピッケル・アイゼンの切り傷などの大ケガもせず幸いにも大事に至らず。
左手のこの程度の傷で済んだ、幸運だったと思う
涸沢カールのデブリ、雪崩は起こって当たり前ってことか
過去と云うか例年はザイテングラート左のあずき沢を登っているが、今回は右の沢ルートを登っていたがここで雪崩れた。このルート判断が間違いと思っていたが、今日5時過ぎに撮っていたザイテングラート付近の写真を拡大して見ると、あずき沢の数人は態々引き返してザイテングラートの右に廻って来ようとしている。だから、今日のザイテングラート右のルートは間違いだと思われない。
28日、5時過ぎ。あずき沢から戻って来ようとしている数名
29日、6時頃。大勢の人が昨日雪崩があったルートを行っている
前日の雪と今日の暖かさが表層雪崩が起きる条件と云うのは本で読んで知識としてあるが、体験して初めて学習する。僕って云う人間って本当に馬鹿かも知れないが、これを事前に判断し引き返すって云う人 100人のうち1人でも居るのかなって思う。
現場からの下り、県警の人たちが僕を見て「ヘルメットは飛ばされたの?」と聞く。滑落リスク大ではヘルメット着用が必要なんだなと、気づかされる。
今回の事件、家族(嫁さん)には黙って置こう。まだ山には行きたいので。
メンバー:會、片、川、河(記)、樺、菊、田、山t(L)、山y