アルパインクラブ モルゲンロート

本会の活動状況と情報の共有

中ア 空木岳(2015.10.10~11)

2015-10-19 08:06:08 | 会山行(2015~2022年度)

前日仮眠した中央自動車道の小黒川PAから、登山口となる駒ヶ根高原の林道終点までは45分ばかり。途中、自動車道から見える千畳敷カールはモルゲンロート、それこそ朝日に赤く染まっていて秋の好天を約束して呉れていた様だったんだ。
 着いた林道終点の駐車場は僅かにあと2~3台の駐車スペースしか残っていなく、かろうじて停めることが出来たほどの混み具合に、20人分のスペースしかない避難小屋の空き状況が一瞬気になったが、これで堂々とテントが張れると逆に思い返す。
 登り始め、熊笹の続く登山道は木々に囲まれ、その隙間にカラマツの黄や、遠くにある紅葉などにウァーと声を上げ、歩む時間と共に徐々に高度を稼いで行く。途中ある難所は大地獄から小地獄の間で、アップダウンのやせ尾根が30分ほど続く。今回のこのコースで唯一緊張する箇所だ。やせ尾根は木々に隠れて下の方が見づらいのが良かったのか、所々では下を覗くとスパッと切れ落ちた箇所があり身も竦むが、至るところにワイヤーや手摺があって、慎重に踏んで行けばそうリスクはなさそう。この難所を無事に終え、宿泊地の空木平避難小屋には丁度お昼頃に着く。
 明日(11日)午前は空木岳に登り南駒ケ岳までをピストンの予定だったが、雨の可能性が高く、今日(10日)の内に空木岳に登ることにした。この登り、最初から最後までガレ場が続く。登り始め、廻りはダケカンバやナナカマドの木々に囲まれているが、もう葉っぱも落ちきってしまい、ナナカマドの赤い実だけが僅かに残っている。ここは小石や岩の上を踏んで行くので、少してこずった歩きとなるが、一時間チョッとを登りきると空木岳山頂だった。



山頂からは、あの御嶽山には噴煙が白い雲の様に濃く厚く未だに空に向けて上っている、近くの宝剣岳や、赤椰岳とその先の南駒ケ岳の荒々しい姿が目の前にある。前日までの雪か、所々に白く残っている。吹く風も強く、まだ秋だと云うのにここ空木岳に吹く風はもう初冬の冷たさだ。




そして気になるのは天気、空木岳山頂を後にして10分の午後2時過ぎ、振り仰ぐともう太陽はぶ厚い雲に蔽われて月の様に見える。さて、今日の宿の避難小屋には我々8人のほかに単独行の人が4名。夕方真っ暗な中、最後に到着のTさん、今日が3回目の山行とのこと。途中の迷尾根付近で日没となり、ヘッドランプを付けて暗い中を1人、小屋の灯りが見えたらホッとし、(遭難して)死ぬかと思ったと、震える体で云う。さぞや心細かったに違いない。多少なりとも誰もが経験することかも知れない、これに懲りずに山を好きになって欲しいと思う。
 夜半と云ってもまだ23時過ぎ、トタン屋根を打つザザーッと云う音と窓外のゴーゴーと云う風達が唸っている。朝方の2時・3時と目が覚める度にその音は止むことなく続いている。起きて身支度を済ました8時半頃には、雨に雪が混じってくる。無理することなく、もう今日(11日)の山行は断念するしかない。




雨が小降りになるのを待って、10時過ぎに避難小屋を後に下山する。見上げる空木岳方面もガスで真っ白だ。下山も同じルートを辿るのだが、このルート丸太の階段が多く雨で濡れているだけに滑り易い。一歩一歩ゆっくりと下って行くも何度か足を滑らし、下山口に漸く無事着く。
 最後に、こまくさの湯にて汗と臭いを洗い落とし、小黒川PAにてもう一泊した帰り、八ヶ岳PAから見える北岳が白くなっている。昨日の雨が本格的な雪となり、3000mクラスの山だとこの時期、アイゼンなどの雪山装備も必要だなと実感する。雨や霙に降られる前の、展望が効いた天候判断の良い空木岳山行でした。

メンバー:宮、田、井、川、荒、會、清、河(記)


南ア 便ヶ島から聖岳(2015.9.19~21)

2015-10-01 06:51:56 | 会山行(2015~2022年度)

僕には、便ヶ島から出だしのトロッコ鉄道跡の平坦ルートが一番恐かったのが今回の山行だった。登山口を登りトンネルを抜けると、右下の遠山川へは70~80mの切れ落ちた崖が続き、所々の土砂崩れにより狭い道を更に狭くしている。なるべく右下を見ないように前だけを前の人の靴を見ながら進んで行き、暫らくすると渡渉用のゴンドラを引っ張るロープウェイが待っている。左に下って行くと普段は橋も掛かっている筈だが、前日までの雨による増水で外れている。前の組がロープウェイをもたもたと進んでいる。この場を早く渡り切りたく、ロープを引っ張るのを手伝って、我々も渡り終えるのに15分くらい要す。
 暫し休憩の後、ここ渡渉地点から廃屋を過ぎると急登が続く。1100m地点から1500m地点までを、16分/100mと云う快調なペースで登るも途中で足攣りもありペースダウンする。苔むした緑の樹林帯を休み休み進んで行く。多くの倒木に付いた苔やシラビソの樹林が迎えてくれ、樹林帯から漸く抜け出し視界が広がる先が薊畑の分岐。下方には木道で守られた聖平の草原が広がっている、そして左奥が今日の露営地だ。もう色とりどりのテントが在る。
 未明頃か、皆が寝静まったなか川のザーザーと云う音が耳に付くも、割と広めのスペースでぐっすりと寝ることができた。
 翌朝(20日)、出発の準備を整え聖平小屋前に行くと、管理人が下方の幕営地に居る人に向かって大きな声で何か云っている。便ヶ島からの帰りの道が崩落し、通行止めで復旧は2~3日は掛かるかも知れないとのこと。帰りの心配もあるが、多分皆の頭の中もこれから登る聖岳のことしか無いと思う。今は余り気にすることもなく、聖岳に向かう。

 分岐点の薊畑に再び着くと、ここにリュックを置く。空身だけあって、小聖岳まで40分で着く。ここから一旦下り、左側に深く崩れ落ちた尾根を伝って行く。
途中、水のゴーゴーと云う音が聞こえる。こんな高い山(2600~2700m)の中でもこの山域は水が豊富だ。ここだけでなく、廻りを遠くの方に目を向けて見ていても、白い筋状の水が至るところで沢伝いに流れ落ちている。聖岳までの稜線を見上げると、頂上まで高さは200~300mはあろうかと云う登り道を30~40人くらいの人達が小さく点々と続いている。

 ザレ道をジグザグと漸く登り終えると目の前は一気に360度の展望、「日本アルプス最南の3000m峰」の聖岳頂上だ。広い山頂には50~60名の人達が思い思いに佇んでいる。兎岳、大沢岳、塩見岳、赤石岳、荒川岳、笊ヶ岳と布引山に富士山そして上河内岳に雲が掛かった光岳などをしっかりと記憶の中に焼き付けて置く様に見ていると、もうすぐにでも行きたくなる様な気持ちに引き攣られ、来年は赤石岳~荒川岳だとの声が上がる。
 帰りは坦々と下る。羊歯や苔の緑の世界が再び向かえてくれる。ヒヤッとしたのはトラバース道で1人転倒したことだ。そこは危険箇所なのか、丁度転落防止ネットがあり助かった、お蔭で20~30mの滑落を免れたことになる。
 さて、便ヶ島からの帰り道だが、今日(20日)夕方から通行できるよう仮設道路を整備していると云う。だけど、もう予定より遅くなったので、便ヶ島でもう一泊することになった。翌朝(21日)、仮設道路の通行開始の8:00前に一番に乗り込む。規制された市道出口には、市の職員とTV信州の人達。TV信州の記者から運転席のTさんが代表して、孤立して困っていなかったのか等と、車の窓越しに数分のインタビューを受ける。
 色々とハプニングのあった今回の山行、至るところにある豊富な沢水の流れ落ちる白と、苔の緑に赤い石、そして空の青と自然がもたらす色が心に残る南アルプス聖岳であった。
メンバー:荒、井、會、北、田、河(記)