Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ネタばらし「わたしを離さないで」

2017-12-28 09:20:49 | 読書
カズオ・イシグロ,土屋政雄 訳,ハヤカワepi文庫 (2008/8).

発表は 2005 年,翻訳が出たのは 2008 年だが,ノーベル賞のおかげで現在ベストセラーランキングに入っている.映画化もされたが,ブック xxxx で 108 円だったので今になって購読した.
イシグロ作品体験は「日の名残り」「夜想曲集」に次いで3冊目だが,どれもスタイルが違う.自分的にはこの作品と一番相性が良かった.柴田元幸の解説によれば「細部まで抑制が利いていて,入念に構成されていて,かつ我々を仰天させてくれる,きわめて稀有な小説」である.
☆☆☆☆☆

Amazon の商品説明*****内容紹介
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点。解説/柴田元幸。*****

広義の SF.設定は現代.3部 23 章構成.提供者とは臓器提供者のために造られたクローン人間である.ヘールシャムはクローン人間として造られたこども達の教育施設.こども達には普通の人たちに臓器を提供し,最後は命を失うと言う運命が待っている.提供者を介護するのもクローン人間である.このシステムはページをめくるうちに次第に明らかになる.その過程がミステリーっぽく,ぼく好み.

キャシーの視点で進行し,ルース,トミーとの三角関係に発展する.彼らのこども時代を描いた第1部は少女小説みたいだが,巧みに伏線が張られている.こどもたちを教育する保護官 = 教師の苦悩が,こども達の見た目で語られるところがうまい.その後の展開はあらすじ専門のサイトをどうぞ.最後はクローン人間達の反乱...などと言うことはなく,もの悲しく文学的に終わってしまうのだった.

こうしたシステムはキリスト教徒が多数を占める国家ではいかにも虚構だが,現代の中国ならいかにも実現しそう.

「わたしを離さないで Never Let Me Go」はカセット (文庫のカバー) にあるポピュラーソングということになっている.映画化された時にこの曲も造られたらしいが,ジャズのスタンダードとは別な曲である.

原文で読んでみようか...
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reading

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