─光る波の間─

現在ほぼツイッターまとめ投稿。アート(名和晃平、奈良美智他)映画・音楽・食べ物(日々のご飯)・雑貨etc...

ソロモンの指輪

2006-12-07 23:50:15 | 
私が生まれる前に書かれた、名著中の名著。
文庫化もされているそうですが、
今年再び訳し直されてハードカバーで出版されました。

まだ読みかけなんですがね。
面白いデス!
動物行動学というジャンルを作ったローレンツ博士。
彼の学問書というより、生活の一部始終。w
「天才志村動物園」の「家でいろんな動物を飼ってみよう!」を
そのまま実践しているという感じで、
通常動物たちを隔離して閉じ込めるための檻も、
博士の家では動物から避難するための、人間のためのもの。w




ムツゴロウさん?と言えなくもないが、
それともちょっと違うような。。。
だってこういう生活をウィーンなんてとこでしてたなんて!

この本が書かれた時代と現在では、
動物学の考え方も大きく変わっている。
でも、翻訳をした日高敏隆先生も言うように、
「変わったのは学問であって、動物たちそのものは
なんら変わっていない」のだ。

素晴らしく活き活きとして、発見の喜びや珍事件の顛末を語る文章は
淡々としながらユーモアに溢れている。
日高先生の翻訳の上手さかもしれないが、それもローレンツ博士という人を個人的にも
よく知っていて、自身も動物学者として共感することがたくさんあるからでしょうね。

ところでこの日高先生。
ご本人の著書は未だ読んでいないのですが、対談をいくつか読んでいます。
『ワニはいかにして愛を語り合うか』で、竹内久美子さんと。
『マザー・ネイチャーズ・トーク』で、立花隆さんと。
そして、『あなたが子どもだったころ』で、河合隼雄先生と。
日高先生は登校拒否児だったうえに、真剣に自殺を考えたことがあるそうだ。
「その当時は登校拒否なんて言葉がなくて、ま、ずる休みですわ。笑」
けっこう多いですよね。その分野の第一人者と言われるような人物が、
子どものころはいわゆる問題児だったっていうことが。

話が逸れました。
ソロモンの指輪っていうのは、それをつければ
あらゆる生き物たちの言うことがわかるっていう魔法の指輪のことで、
手相でも、どこかの指の下に輪を作るようなシワがあると動植物と深く親しむ能力が
あるとかなんとか、何かで読んだ。
しかし、動物と話ができるからといって彼らを思いのまま操るとかそういう行為は、
傲慢極まりないことなわけです。
もちろんローレンツ博士はあくまで動物たちの目線に合わせて彼らとつきあう。
したがって・・・

 ・・・父は机に向かってお茶を飲みながら、静かに新聞を読んでおり、
 パンをちぎっては一切れずつガンたちに向かってさしだしてやっていた。
 ガンたちはこの部屋に入るのははじめてだった。
 それで彼らはだいぶ神経質になっていた。
 ところがそのことが彼らの腸の活動に影響を与えて、じつに不愉快な結果となったのである。

という、想像に難くない惨劇に対しても、
 このガンの訪問から11年以上たった。じゅうたんの上の暗緑色のしみも、
 いまではさすがに色がさめて、あわい黄緑色になっている。


と、淡々と語るのみなのだった。
怒髪天ついてガンを追い出したり、檻に閉じ込めたりしない。
まだらに染まったペルシャじゅうたんも、捨てたり買い換えたりしない。
博士も凄いが、博士のお父さんも奥さんも子どもたちも凄いわ~・・・と思いながら、
さて、続きを読むことにしましょうか。^^

*