NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

『glee』をパクるなら、もっと巧くパクれ。「カエルの王女さま」

2012-04-13 | 授業
ツイッターで反応を検索したら、元ネタを知らない痴情波なかたがたは概ね高評しているという現状に頭がくらくらしてくる思いがしました。。。


「カエルの王女さま」(フジテレビ)



日本のドラマの歴史を見れば、海外ドラマのパクリの歴史であることは周知の事実ですが、先人たちには元ネタを超えてやろう的な野心や知恵などがあったような気がします。犯罪都市マイアミを横浜に置き換え、コミカルにアレンジしなおした日本版『マイアミバイス』こと『あぶない刑事』とかこちらも日本的な湿ったユーモアで包みなおした『刑事コロンボ』の日本版『警部補古畑任三郎』など枚挙に暇がありません。

それでは「カエルの王女さま」はどうか。開始前から言われていた下馬評通り、『フラガール』をベースとした『glee』のパクリ。それも本当に酷いエピゴーネン。「歌って踊れるキャストを揃えた」と製作側が言う割には何故かアテレコの歌唱シーン。オープニングの天海祐希のダンスシーンの微妙さ。本人の問題もありそうだけれど、一番の問題は振り付けと演出。観ていて全然アガラない。演出はいつものフジテレビ演出。



「歌って踊れる人を集めたから、お芝居は、物語は二の次ね」と言わんばかりの最近の日本のドラマに良く観る、起伏を作り出すためだけに作られたコンフリクト。物語的にあまり意味の無い山場は意味が無いので、イラつくだけ。コーラスとはどんなものかと隣の市のコーラスグループの公演を見に行くシーンはその極み。何故再開間もない弱小コーラスグループの存在を隣の市のコーラスグループが把握してたのか。あんまり考えて書いてないのはもちろんこと、このシーン自体が『glee』の第一話の同様のシーンの丸パクリ。

さらに言うと、glee部のメンバーが視察した強豪校のグリー部の公演はエイミー・ワインハウスの「Rehab」のショークワイア。観るものを圧倒する素晴らしいコーラスワークと一糸乱れぬダンスが展開されるワンコーラス。劇中のglee部の面々も顧問のシュースター先生もそのパフォーマンスに圧倒されるが、同時に観ている視聴者を圧倒する。だからこそ描写に真実味が増すのに、「カエル」のそれは単なる80人のママさんコーラス。それは普通想像するママさんコーラスの域を出るものでは決して無いし、ましてやパフォーマンス全体を見せるわけでもない。正直見ていて少しもすごいとは思えないのに、劇中のコーラス部の面々は打ちのめされる。ここの乖離からして視聴者に不誠実だし説得力が無い。

唐突に加わるゲイっぽいフェミニンな少年。ファッションからも見るからに『glee』のカート。ピアノ弾きのおじさんもそのまま。練習部屋もglee部の部室そのもの。『glee』で描かれたスクールカーストの代わりに地方の底辺を描いているんだろうけれど、その描き方が中途半端でステレオタイプで全然そこを真剣に描こうとしているとは、少なくとも第一話を見た限りだと感じられなかった。またいつもの上っ面だけの感動路線を展開する気がすすけて見える気がするのは気のせいでしょうか。福原美穂を引っ張り出してきたのは面白い試みだと思うんですが、他にもミュージシャンを引っ張り出せばよかったのに。でも演出付けられないか、こんなドラマの演出家じゃ。




『glee』(NHK Eテレ)
こんな三流のバッタものを見るくらいなら本物を見たほうがよいはずです。百聞は一見にしかず。幸いEテレで4月から本家が地上波で放送開始されています。絶対こっちのほうが面白いって!吹き替え版の主要キャストに関しては若干いいたいこともあるけれど、基本的には素晴らしいと思います。とりあえず『坂道のアポロン』観ましょ。『Lupin the third 峰不二子という女』も素晴らしい。菊池成孔の音楽素晴らしい。

追記:『坂道のアポロン』の千太郎のドラムシーン!劇中の人物も視聴者も圧倒する表現をちゃんとしてる!こういうことだよ!