「九条自由広場」

「昭和区九条の会」(名古屋)のブログです。会と市民の皆さんとの交流の広場です。ぜひ「コメント」をください。

総選挙後の憲法をめぐる情勢とマスコミ報道 ②大西五郎さん

2009-12-01 00:18:27 | Weblog
[Ⅲ]鳩山首相はもともと憲法改正論者だが、選挙結果はそれを言い出せない状態を作り
   出している。
選挙結果が「九条を守る」ことにとってプラスになったかマイナスになったかを考える必要がある。自民、民主などの改憲派議員でつくる新憲法制定議員同盟という組織には、自民党の大物議員や中川元財務相などが入っていたが、今回選挙で大量に落選し、73人が39人になった。毎日新聞が選挙前に候補者に出した「九条を変えることに賛成化反対か」という質問の回答を当選者について調べたら 51%が「反対」であった。中日新聞が発表した共同通信の調査結果によれば、民主党議員の73%が国際貢献での自衛隊の海外派遣に慎重であり、集団的自衛権行使には過半数が反対である。毎日新聞調査によれば、国民の72%が「非核3原則」を守れとし、自衛隊海外派遣「恒久化」法には過半数が反対である。ただし、憲法改正に賛成は、58%であるが、その理由を見ると、首相公選制42%、自衛隊の位置づけの明確化37%などに対し、集団的自衛権行使のためは13%である。「九条を変えろ」は少数派である。
基地問題を抱えている沖縄では、普天間の辺野古への移転を進めようとした自民党の衆議院での議席はゼロになった。このように、現在の憲法状況は、危ういものを含みながらせめぎあいの状況にあると言える。

[Ⅴ]私たちは九条守れの憲法運動にもっと自身を持っていい
私は現在、あいち九条の会の世話人として広報委員会を担当している。その関係で全国の九条の会からニュースが集まってくる。それを見ると、各地の九条の会は凄く発展していることが分かる。現在、全国で7,433の九条の会(6月の全国交流会時点)がある。愛知県下でも280の九条の会がある。そういう中で、従来、保守といわれた人たちも集まって来るようになった。尾張旭九条の会の澤地久枝さんの講演には1,000人を超す参加者があった。これは、熱心に運動している人たちだけでなく、幅広い人たちが集まった結果である。津島、蟹江、佐屋の3つの九条の会が合同で品川正治さん講演会を行った際、4万数千枚のビラの新聞折込費用について協力を呼びかけたら、津島商工会議所会頭や医師会会長が協賛金を出してくれた。そうした中で講演会を津島市、蟹江町と両教育委員会が後援してくれてただけでなく、津島市総務部長、蟹江町副町長、弥富町元町長も参加してくれた。甚目寺町では、天野鎮雄さん講演会のビラの回覧を町内会の上部組織である区の区長さんにお願いしたら、14のうち12の区が回覧板で告知してくれた。「九条を守れ」という署名についても、私が属している東海放送人九条の会の代表世話人の一人でCBC元論説委員の人が小学校高等科や旧制中学の同級会で訴えたところ、120名もの人が、署名をしてくれた。九条の会の運動に抵抗がなくなってきている。
若い人たちの活動も盛んになってきている。この昭和区九条の会が先日行った「平和のつどい」でも女子高校生の人たちが、ボランティアで参加した。愛知大学九条の会が「若者が語る平和」というシンポジウムを行い、他県からの参加者も参加して活発な議論を繰り広げた。勝川九条の会の「若者が語る“平和” 世代を超えて」という集まりで女子高校生が、中学生の時代に広島の平和の祭典に参加したときの感想文を読んだ。それを聴いた女性たちが感動して「若い人があんなに頑張っている。来年は私たちも広島へ行こう。」と決意した。私たちは九条の活動の広がりにもっと自信を持つ必要がある。

[Ⅵ]日本国憲法は、GHQの押し付けではない。日本の知性が生み出したもの
日本国憲法はアメリカから押し付けられたものだといわれることがあるが、決してそんなことはない。「日本の青空」という映画で現憲法成立の経緯が描かれている。敗戦直後に高野岩三郎や後に愛知大学教授となる鈴木安蔵らが結成した憲法研究会が「憲法草案要綱」を作った。これがGHQの憲法案の下敷きになった。草案は、「国民は民主主義並平和思想ニ基ク人格完成 社会道徳確立 諸民族トノ協同ニ努ムルノ義務ヲ要ス」「天皇ハ国政ヲ親ラ(みずから)セス…国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル」などと書いている。現憲法の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた二十五条を始め、国民の権利に関する諸規定も草案に入れられている。GHQは、この草案を見て、「非常に民主的で良い案だ。」としてこれを取り入れてGHQ案を作った。そして、国会で若干の修正が加えられたものが現憲法であり、決して押し付けられたものではない。

[Ⅶ]世界は“非核”と協調による平和に向けて動き始めた
オバマ大統領は、チェコのプラハで「アメリカは核保有国として、唯一核兵器を使用した国として道義的責任があり、核のない世界を目指す」との演説を行った。さらに国連安保理事会の首脳会議を主宰し、「核兵器なき世界に向けて取り組む」決議を採択した。アメリカ政府はブッシュ大統領時代の単独行動主義から国際協調主義に政治の方向を転換した。
世界に目を向けると、コスタリカやパナマは、軍隊を持たず、すでに九条を実施している。スペイン領カナリア諸島のグランカナリア島の真ん中に広島長崎広場があり、スペイン語で書かれた九条の碑が立っている。スリランカや韓国には九条の会も出来た。このように九条や九条の会は世界に広まっている。
九条の考え方は、人類の知恵の結集したものである。17世紀のヨーロッパの相次ぐ戦乱のあと、宗教者や哲学者が平和についていろいろ考え、カントは戦争放棄、武器の廃絶を提案した「永久の平和のために」という論文を書いた。第一次大戦ではノーベルの発明したダイナマイトの破壊力により、従来とは比較にならない被害を与えた。その反省の中から、ノーベルは「平和的な技術や平和のため」にノーベル平和賞を設けた。第一次大戦後、ナチスドイツの勃興に際して、パリ不戦条約が締結され、日本も参加した。九条は、こうした人類の歴史の結晶であり、われわれは自信を持ってよい。

[Ⅷ]マスコミの伝える情報が重要、マスコミに対するアクセス権を行使しよう。
国民は「知る権利」を持っている。一人ひとりがそれを行使することはなかなか難しい面がある。それをマスコミが対抗している。マスコミが取材、報道の自由が憲法で認められているのは、国民の「知る権利」を代行しているからである。「こういうことを取材して報道して欲しい。」「私たちの運動や活動を紹介して欲しい。」とマスコミに要求すること、報道内容について意見を言うことをアクセス権といい、読者・視聴者(国民)の当然の権利である。マスコミに対し、どんどん意見を言っていき、憲法問題を正しく報道するよう要求していくことか゛必要である。
選挙後の状況は安心できるものではない。もっと運動を強め、マスコミに積極的に物を言っていく必要がある。