よみびとしらず。

あいどんのう。

つごもり

2018-09-30 10:20:43 | 詩(M)
淡く降る雨 傘のした
世界はやわらかく色づきはじめて
入口の向かう側では鈴虫が一斉に鳴いていた

薄墨色に染まる木立は
影と形の仕切りなく
ただ静かに雨を受けいれ
すべては解け合いひとつとなった

交差してなお一筋の道を目指して

道は光となり天に昇り
泣いていた誰かの頬をやさしく照らす

水のぬくもり
あたたかき血潮

巡りめぐるものに包まれて
この手の平に触れる先のありかを

いつかまたお会いしましょうと

約束を交わしてわたしは帰路に着く
傷ついた足で歩くわたしを
雨雲の向かう側から月がみていた

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