腹をすかせて研ぎ澄まされて
それでも視界は変わらずに
月を喰べた空の色はあまりに深く
満ち足りて微笑んだあなたの影は
いくつものわたしを覆いつくして夜は来る
音のない笑い声だけがこだました
なにも感じなくなるまでに
それがまさしく正しいことだと
思い違いも甚だしいと
雷(いかづち)は空を割りわたしの真下に落とされた
光に包まれて目は眩(くら)み
世界は暗闇よりもさらに恐ろしいものへと変化する
明るく賑わう朝の訪れに
わたしの感覚は反転された
一番の恐怖は腹のなか
何も分からないことさえ無かったことにされて
わたしは大切なあなたの顔を忘れた
なにもこわくないのだと嘯(うそぶ)いて
腹の満たされた月はふくらむ
夜空はあの頃と変わらぬ色をしていた
とても美しいものだけを見つめてわたしは眠る
置き去りにしてきたものたちに追い立てられて
今日もわたしは夢に入り
大切なあなたの影に触れんと手を伸ばす
きょうふはそこから始まった
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