よみびとしらず。

あいどんのう。

テラリウム

2018-10-24 15:38:36 | 散文
照らし出されたテラリウムに迷いこんだ魚は
自分の居場所はここではないと知りながら
その美しさに心奪われて終の住処(すみか)とした
テラリウムの住民は突然の魚に戸惑うも
その心根の素直さに心打たれて魚を受け入れた

ただ光だけは認めずに
魚の住むテラリウムはテラリウムに非ずと
光は翳り(かげり)闇のなかへ
テラリウムの美しさを胸にひめた魚は
闇の彼方へと泳ぎだす
そこがどんな暗闇であろうともはや関係ないと
魚は胸のうちにテラリウムの美しさを引き連れて
魚の居場所には生涯テラリウムの森が広がった
魚が去ったテラリウムには再び光が射し込むも
そこはもう以前のテラリウムに非ず
ここはもうかつての美しい場所ではないと
魚を受け入れた住民たちだけが知っている

テラリウムは色あせた
魚がテラリウムの輝きを奪っていったと光は激怒して
もう二度と顔をみせるなと魚を海の底へと追いやった
テラリウムの美しさを知る魚は
海の底からテラリウムを探す旅に出る

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