よみびとしらず。

あいどんのう。

蓮と蛇

2020-10-29 16:05:37 | 散文
聴こえるはずのない歌声は
聴こえてはならないものだと変換された
本音の響きの清らかなるを
醜き泥のなかにあるものは
何百年もの眠りについた
輪廻を託された蓮の種

あたたかな身体はくるまれて
微睡(まどろ)みのなかに声を探した
ポンと音を立て咲く花びらに
夜の帳(とばり)はおりてくる
夜のおりてこないうちに夢のなかへと
誘(いざな)われたのは蛇の足音
奪われた足には頓着もせずに
蛇は誘いわたしの瞳は重くなる
閉ざせば硬い岩戸の前に立ち尽くしたのは
遥かなる過ちへと続くはじまりの第一歩

わたしの眠りから蓮の種は目を醒まし
静かなる泥濘(でいねい)に祝福の歌は鳴り響く

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