よみびとしらず。

あいどんのう。

おにぎり

2020-01-23 00:02:59 | 散文
いいたい言葉はなに一つ吐き出せないまま
うるさい黙れと無言になった
色彩も熱ももたない感情はうずくまり
丸まった個体は呼吸を続ける
吸ったら吐いてを繰り返されて
あの日吸い込んだものは何だったのか
吐き出された塊は空にまぎれた
苦しみも歓びもいっしょくたにされて
包みこむ大気にあなたは宿る

吸って吐いてを繰り返す意味を
誰かに重ね合わせて自問自答した
生きることに真摯(しんし)な臆病者は
おそろしい明日を厭(いと)うて願う
どうか世界が美しいものでありますように

そして別に美しくなくても構わないんだよと
わたしはお握りを片手に海辺を歩く
好きな具材は梅干しかツナマヨか
それが分かるだけでわたしの世界は救われた

吸って吐いては繰り返されて
いいたい言葉はなに一つ吐き出されないまま
それでもなにかが吐き出されたあとに残った空気を吸い込み
わたしはお握りを食べながら海辺を歩く

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