水に薄められた思いを乗せて
産まれたわたしはどんな形か
憎しみも歓びも淡水に溶かして
解けた糸の先にある海は荒波の
怒りや感嘆を元の姿に呼び覚ます
元の姿を知らないわたしは
初めて触れたその激情に
精一杯の拒絶を示して
海とおんなじ涙の味を
なにも知らずに産まれ出た
元のわたしを知らずして
元の在処を知らずして
当たり前のように歩きはじめた
わたしは歌声も鱗も持たずに
ただ何かが欠けていると
誰に何を言われたわけでもなく怯えて泣いた
そしてただ何かが有り余っていることに戸惑って
わたしはかなしい歌を口ずさむ
なにも持たずに産まれたままの
不恰好なわたしの身体は
いつか泳いで溺れたあの海の青さを何も知らずして知っていた
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