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自然界とはかくも哀しく厳しきものなり

2024-05-16 | 日記

 例年今の時期は、鳥たちの繁殖の季節でもあるようです。軒先や、その隙間から天井裏にさえ巣作りをするスズメたち。それらの声が、毎日にぎやかです。

 生まれてまだ間もないヒナの姿は、決して愛くるしいものではありません。目が開かず、羽さえほとんど生えていないその様子は、子どものころには気持ち悪く思えたほどでした。そしてそれはしばしば、巣のある屋根から下に落ち、どうにもできない状態になっている…。子どもの時から何度も、そんな場面に遭遇してきました。そんな生後間もないヒナのことを、「あがびコ(赤びコ)」と称したものです。

 あがびコ落ぢでらどー。どうにか助けてもらいたいと思って誰かに知らせても、誰もそのヒナを助けることはできないのでした。子どもはもちろん、大人であってさえ、です。いや、もしかしたらどうにかできた大人がいたのかもしれません。でも、そうしたことに時間を割いていられるほど悠長な大人は、身の回りにはいませんでした。いのちが尽きるのを、ただ見過ごすほかありませんでした。

 

 今年は珍しく、今日までそんなことがありませんでした。それどころか、昨日の午後、よちよち歩きのヒナ一羽が、地面に降りていて、玄関横にいたのでした。

 そして今朝、もう一羽がすぐ隣にいて、2羽でちょこちょこ動き回っていたのを見かけました。なんとも可愛い、愛くるしい姿です。仲良さそうに、くっついたり離れたりしながら、鳴き声でコミニュケーションをとっている感じでした。2羽とも、おぼつかないような足取り。でも、数日のうちにきっと飛べるようになるだろうと思っていました。お昼に家に入る前に見た時も、2羽揃って元気に鳴き声を出していました。それは、自分の生まれた世界をおそるおそる確認しあっているようにも思えるような雰囲気で、ほほえましく思ったことでした。

 

 午後、作業のために外に出たとき、その姿は一羽だけになっていました。鳴き声もその一羽だけで、もう一羽の声は、どんなに待っていても聞こえてはきませんでした。まさか、カラス…? 確信はなかったものの、嫌な予感がしました。

 それから1時間もしないうちに、さらなる事態が起こりました。こちらは、その現場をツレが目にしたのでした。やはりカラスで、もう一羽も、連れ去られてしまったのでした。その2羽がどうなってしまったかを文字に表す気には、到底なれません。軒先の屋根の上では、10羽もいるだろうかという大人のスズメたちが、一生懸命動き回っているのが見えます。たとえ何羽かが、どれだけ鳴き叫んでカラスに対応したとしても、結果は同じだったことでしょう。それでも、そんな大人のスズメたちを見ながら、

「なにやってらったけなー。連れで行ってしまったねがー(何してたんだよー。連れて行ってしまったじゃないかー)と、心の中で叫んでしまったのでした。

 カラスのあざとさには、いまさら言うべき言葉が見つかりません。カラスだって、生きていかなければならないのですから。ただただ、「自然界とは、かくも哀しく厳しきものなり」という思いが、こころの中を行ったり来たりするのみです。できればそうなってほしくなかった、最悪の結果でした。

 

 せっかくなので、2枚。この数時間後に、2羽の命は消えました。