4月10日朝6時のぞみ1号で名古屋向かいました。
名古屋刑務所を出所するK青年のお迎えです。
彼は、手紙で「8時30分~9時までの間に出所します」と書いてきました。
東京発の新幹線の始発は6時で7:34名古屋着、それから市電を乗り継いで、三好ヶ丘着は8時48分、そこからタクシーで刑務所まで10分、到着は8時58分です。
前日9日名古屋刑務所に電話しました。
「明日出所するKさんのお迎えに行くグループホームの◯◯といいます。Kさんは、8:30~9時までに出所の予定と本人から連絡がありましたが、ただ、東京から行くので、8時半には到着できません。9時までには必ず行きますので、9時になってから出所させてほしいのですが・・・」
「その方は仮釈放ですか?満期ですか?」
「満期です」
「誰が出所するとかそういうことは個人情報ですからお答えできません」
「エッ、本人が明日出所するから迎えに来てほしいといっているのです。出所するかしないかを聞いているのではないんです」
「個人情報ですからお答えできません」
「あのう、本人が8:30~9時に出所するといっているんです。ただ8時30分までには行かれないから、9時に出所させてほしいと頼んでいるのです」
「本人が8:30~9時と言っているのですか?」
「そうです」
「だったら、8時30分までに来てください」
「そりゃあ、名古屋なり大坂に住んでいれば8時30分までに行けます。でも東京からなんです」
「お手紙で本人に伝えてください」
「出所は明日なんです」
「一人一人個別の対応はできません。8時半までに来てください」
埒が明かないので、言ってしまった。
「実は彼は障害があるんです。出所して誰もいなかったらパニックになって、何をしだすか分からないのです。せっかく出所したのに、舞い戻るなんてことにはしたくないんです。だから9時まで出さないで下さい」
「8時30までに来てください」
「あなた公務員ですよね。国民のために仕事する人でしょう。私国民です。あなたの立場では、それ以上答えられないのですね。だったら、もう少し裁量権のある方に代わってください。」
相手は黙ってしまった。
電話が切れたのかと思っていると「少しお持ちください」。
少し経って、それまでの木で鼻をくくった機械的な声から一変して、柔らかな愛想のいい声で
「わかりました。お待ちしています。気をつけて、ゆっくり来てください」
本当にびっくりした。
「ありがとうございます。9時までに行きますから、よろしくお願いします」
と言って切った。
いったいこれは何なんだ・・・結果はよかったとはいえ、突然の豹変、釈然とせずもやもや感が残った。
そして、10日、8時55分には刑務所の正門についた。
誰もいない正門の前で、門の奥の刑務所の建物を眺めていると、タクシーの運転手さんがおりてきて、
「誰もいないね。ここに呼び鈴があるから押したら・・・」
「いやいや、いいです。出てくるのを待ちます」
・・・普通の常識だよね、でも刑務所って常識が通用しないところのなんだ。
9時30分、K青年は両手に紙袋をもって、左足を少し引きずり3人の刑務官に送られて出てきた。
「お帰りなさい!」
「そうだ、記念写真撮ろうね」
刑務所をバックに写真を撮ると
「写真を撮らないでください」と刑務官。
刑務官は私たちが立ち去るまでフェンスの内側で見張っていた。
「今日は、何人出所するの?」
「ボクだけです」全くもう、何が個別の対応はできません!だ。
-Ka.M-