波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

燕の来る町  コント

2019-04-04 23:58:03 | コント
□ 燕の来る町

燕が海辺の町についた
着いたその日
ハイスピードで町を回った
次の日は速度を落として
念入りに見て回った
三日目は
さらに速度を落として
丹念に去年の町を調べ
首を傾げ、寂しそうに、一つ一つ
見て行った

四日目にはその町を離れた
あの彼女はいなくなっていた

彼女はこの町から消えていた
甚だ辛い認識だが
そう断定するしかなかった
それでは彼女は
どの町に消えたのだろうか
燕は今の速度が衰えなければ
彼女を見つけられると考えた
燕は次の日から
風を切る速さを気流を切る速さに変えて
日本中を回りはじめた
今年は古里の南国には帰らず
越冬燕になる覚悟をしていた


形は同じでも  コント

2019-04-04 09:34:49 | コント
□ 形は同じでも


小鳥が引く
まとまって鳴く
強さにひかれて

残った少数の鳥が
落伍したとは思えない
思いたくない
力をたくわえ
来年は帰るだろうか
たぶん帰れない
人に寄ってくる鳥に
なるだろう
そうやって二種類の鳥になる
形は同じでも
心の乖離した二種の鳥
たとえば、
残り鴨、残り雁、残り鶴……