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男が一週間留守にして、北海道の実家から戻ると、郵便受けを囲むようにして、
雪柳が満開になっていた。
周りを囲むどころか、郵便の出し入れ口にも、枝の何本かが,顔をさし入れて
ポストの中まで明るく飾っていた。
世界は広いのに、わざわざ中まだ枝を伸ばして咲く花なんて、物好きな奴である。
雪柳にこんな習性があるのかと、男は頭をひねっていた。
新聞を抜き取り、宣伝のビラを捨てていくと、奥の奥に直子からの花便りが届いて
いた。花便りは郵便受けの中に散った雪柳の花に埋まるほどになっていた。事実彼は、
一枚の葉書を掘り出すようにしてすくい上げていた。
未完