波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

帰還   コント

2019-04-05 15:50:13 | コント
☐ 帰還

ローカル線が
がたがたと曇天にのまれて行った
大失恋の若者が
故郷へ帰った
失恋が引き金となって
都会での仕事上の挫折ともなった
懇意にしてくれている
天ぷら屋のおかみさんも
若者の帰還の決心を
それがいいと
うべなうしかなかった
田舎には息子に都会へ行く勇気を与えて送り出した
気丈な母親がいるのだ
おかみさんはその母親のところに、若者を帰してやるのが
女の愛だと考えるようになっていた
若者の食生活は天ぷらオンリーで、
天ぷらうどん、てんぷら蕎麦、天丼、かつ丼、味噌汁にもかき揚げを浮かべた
彼はそれをおふくろの味などと、誇っていたが、おかみさんは満足していなかった



塀の上  コント

2019-04-05 14:50:31 | コント
☐ 塀の上


子雀が予告して鳴いている
間もなく親雀が現れると

別に訊いたわけでもないのに

来た来た お母さんが
おいしいものを運んで来た

子雀はそう叫んで、
人間の私を追い払った

二三歩進んで振り返る
塀の上は
親雀と子雀が
大写しになっていた