
この本は1991年に宇宙理学委員会で計画承認され、1998年に打ち上げられた火星探査機「のぞみ」の2003年までの顛末をルポ風にかかれたものである。総額160億円のビッグプロジェクトである。
日本のロケット開発というと糸川博士の「ペンシルロケット」を思い出す。
映画館で、ニュース映画で見たものである。ロケットは垂直に飛ぶものと子供心に思っていたが、水平に飛び、障子紙のようなものを次から次へと破いて行く画面が印象に残っている。
そこから、日本のロケットは始まったのである。その意味では戦後日本の経済と科学技術発展に感慨深いものがある。
探査機を運搬するロケットそのものの開発は大きな問題はなかったと言える。そこには日本の固体燃料ロケットの一歩一歩着実な進歩が伺われる。
しかし、何故科学衛星が固体燃料方式でなければならないのか?の疑問に明確に答えてくれない。本来振動が少なく、制御しやすい液体燃料方式の方が適していると思う。
打ち上げの第一段階は極々順調であったが、予想外の事態が途中から数え上げることが出来ないほど頻発する。そのためにこの書籍のページ数も増えてくる。
その対策に奮闘される場面、不具合の原因追求とその対策、通信の確保、軌道計算等々は、結局のところ、完全な失敗であったにしても、得られるものが余りにも少なかったにしても、確かに感動的である。
しかし、結局のところ、測器の性能検査すらほとんど出来なかったのである。
「火星探査」を何故、今、日本が、しなければならないのか?そこが全く理解できない。
確かにこの探査機で得られると想定されたデータは貴重なものであり、我が国の惑星科学の先端性を示すものになろう。世界に通用する論文を出し、世界の惑星科学の発展に寄与したかも知れない。
しかし、実は、データのプライオリティだけでそれが可能になるのではないだろうか?単なる功名心から来る先陣争いでしかないのでないか?
この計画が、国際的にオーソライズされて、10年計画で二年に一回火星へ探査機を打ち上げる機会があるとして、総計10機の計画であれば、未だ納得できる。失敗してもその経験を生かした次がある。
今回の一回限りの打ち上げは成功したとしても結局のところ「山師」と何等代わりがない無いのである。
一方、同じ理学系の分野であっても、例えば、『種の多様性』『地球環境』等のフィールドでの研究、直接『人と社会』の分野である人文・社会科学系の研究への投資は余りにも少ないのではないかと思ってしまう。
あれやこれや、考えさせてくれた本ではあった。
書籍のデータ
書名:恐るべき旅路―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
著者:松浦晋也
発行所:(株)朝日ソノラマ
発行年月日:2005年5月30日 第1刷発行
日本のロケット開発というと糸川博士の「ペンシルロケット」を思い出す。
映画館で、ニュース映画で見たものである。ロケットは垂直に飛ぶものと子供心に思っていたが、水平に飛び、障子紙のようなものを次から次へと破いて行く画面が印象に残っている。
そこから、日本のロケットは始まったのである。その意味では戦後日本の経済と科学技術発展に感慨深いものがある。
探査機を運搬するロケットそのものの開発は大きな問題はなかったと言える。そこには日本の固体燃料ロケットの一歩一歩着実な進歩が伺われる。
しかし、何故科学衛星が固体燃料方式でなければならないのか?の疑問に明確に答えてくれない。本来振動が少なく、制御しやすい液体燃料方式の方が適していると思う。
打ち上げの第一段階は極々順調であったが、予想外の事態が途中から数え上げることが出来ないほど頻発する。そのためにこの書籍のページ数も増えてくる。
その対策に奮闘される場面、不具合の原因追求とその対策、通信の確保、軌道計算等々は、結局のところ、完全な失敗であったにしても、得られるものが余りにも少なかったにしても、確かに感動的である。
しかし、結局のところ、測器の性能検査すらほとんど出来なかったのである。
「火星探査」を何故、今、日本が、しなければならないのか?そこが全く理解できない。
確かにこの探査機で得られると想定されたデータは貴重なものであり、我が国の惑星科学の先端性を示すものになろう。世界に通用する論文を出し、世界の惑星科学の発展に寄与したかも知れない。
しかし、実は、データのプライオリティだけでそれが可能になるのではないだろうか?単なる功名心から来る先陣争いでしかないのでないか?
この計画が、国際的にオーソライズされて、10年計画で二年に一回火星へ探査機を打ち上げる機会があるとして、総計10機の計画であれば、未だ納得できる。失敗してもその経験を生かした次がある。
今回の一回限りの打ち上げは成功したとしても結局のところ「山師」と何等代わりがない無いのである。
一方、同じ理学系の分野であっても、例えば、『種の多様性』『地球環境』等のフィールドでの研究、直接『人と社会』の分野である人文・社会科学系の研究への投資は余りにも少ないのではないかと思ってしまう。
あれやこれや、考えさせてくれた本ではあった。
書籍のデータ
書名:恐るべき旅路―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
著者:松浦晋也
発行所:(株)朝日ソノラマ
発行年月日:2005年5月30日 第1刷発行