晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

原発に思う事 / 風力や汐力や地熱をもっと活用しなければ

2010-05-13 00:00:03 | 社会問題
数日前に、『もんじゅ』が運転再開を決めた時、それについて書きたかったが、「いまさら」と言う気もして、ついつい無視して来た。


ところが、運転再開と同時に事故と来た。

しかも、作業員が作業手続きを知らなかった故のミス!

呆れ返って、言葉も出ない。


運転再開が悲願であった<原発>側が、いくら長年運転休止して来たとは言え、その間作業員の技術の維持を計ってこなかったのか、という笑い話は、別の機会に譲ろう。

ただ、今回<安全宣言>をして運転再開のGOを出した、組織なり個人なりの、身元、及び「安全である」と査定出来る資格と能力を、ぜひとも明らかにして欲しい。

常に同じ事を指摘して来たが、遺伝子組み換えにしろ、何にしろ、「安全宣言」をするのは、常に<利害関係>の当事者の身内の様な気がしてならない。
常に、前提として<再開>ありき、の儀式に過ぎない様に思う。

一体全体、何を持ってして<安全>と断定しうるのだろうか。
この疑問は、解決しない疑問でる。

問題が発生した時に、誰も責任を問えない様になっている。


ただ、その事はさておき。


この主題に関して、和久希世様のブログ『dendrodium』に、興味深い記事が掲載されているので、ご紹介したい。

原発がどんな物か知ってほしい



ところで、私が住んでいるフランスは、世界に名だたる原発大国である。


政府『原子力庁』の広報ペーパーによると、全発電量の75%を原発に頼っており、発電総量はアメリカに次いで世界第二位である。

エネルギー調達量の自給率を資源別で考えると、化石燃料からの発電は(石油/1975年当時75%を自給していた天然ガスと石炭)総てをひっくるめてほぼヒト桁%に過ぎない。

それに比べて、<電力>は100%を越えており、総エネルギー量で、50%の自給率となっている。

発電総量が需要を上回っている事が示す通り、フランスは隣接する近隣諸国に<売電>すらしているのだ。

コルシカ島最南端の、この世の絶景の如き美しい村『ボニファッチオ』と、肉眼でも見えるイタリアの島『サルデーニャ』の間の海峡は、海底ケーブルが施設されている。

南ドイツ『バヴァリア』地方にも、ベルギーの『アルデンヌ』地方にも、送電されている。


そう言う私は、いまだに原発には非常に懐疑的である。

かっては、「とんでもない!絶対反対!」と思っていた。


しかし、現実問題として、原発が生んだ電力で日常暮らしている。


しかも、自分の意志に反して、フランス各地の、原発、原子力研究所、原子力庁を訪れた。

そこで、多くの技術者達の話を聞いたりもした。
そこで、技術に携わっている技術者、及び研究者たちは、実に純粋に原子力技術の改良に熱心であった。


ベルギー国境のショーズの、岩盤を掘削して造った<地下式>原発は、トンネルを掘っている時点から、その中に潜り込んだ。

フランス最古の<商業原発>であるアンジェの第一号機の、運転停止の後始末で、汚染部分を撤去し、クリーンな部分のみ残った(と言われている)原子炉の内部にも入った。
(この施設は、現在原子力博物館となっている)


『もんじゅ』で話題の、ウラン燃料から回収するプルトニウムを燃やしながら、自力再生する<夢の>原発の第一号実験炉『フェニックス』の現場マルクールも、実証炉『スーパー・フェニックス』のサイトも何度も訪れた。

トリカスタンの研究施設で、原子炉シュミレーター(小さいが本物)で、操作実習も体験した。


使用済み核燃料廃棄物の再処理工場である、シェルブール(フラマンヴィル)にも入った。

処理を待っている<使用済み核燃料棒>が活性化しない様に、再処理の順番を待って、沈められて保存してある<プール>の上の通路を歩いた。

足の下10メートルにたゆたう、あくまで蒼く澄み切った水の底に沈められていた、<廃棄物燃料棒>は、実に祖国日本から送られて来た物だった。


さあ、そこが問題だったのです。

60年代に入って、東海村実験炉で初めて原子力発電に成功し、70年代に積極的に原発建設が押し進められて行ったときから、つい近年まで<使用済み核廃棄物>の処理技術が無かった!


原発を稼働するには、ウラン燃料を使用し、使い終わった後、廃棄物が必ず残る。

ウラン燃料を納めていた、ジュラルミン製の筒容器。
周辺の様々な部品の類い。

それにも増して、燃え残ったウランの滓。


それらを、どうするか。

日本国内では処理出来なかったにもかかわらず、原発建設を突き進めて行ったのです。

いわば、トイレの無いマンションを、大量に売り出したみたいな物だった。



その処理技術を、いち早く確立したのがフランスだったのです。


ウランの滓から、プルトニウムを抽出する。
(これは原子爆弾を製造している国なら、いまや何処でもやっている)

さらにその滓、と上記汚染物質を、<ケイ素>の高純度の特殊ガラスで包み込んでしまう(ガラス固化)のです。

さらにそれを、鉛の隔壁容器に密閉する。


では、それはどうするかと言うと。

「そっと置いておく」しかないのですね。


アメリカ、フランス、ドイツ等の、かつての原発先進国は、様々な方法を考え出して来ました。


海中深く沈める。
地底深く埋める。
宇宙に捨てる。


海中投棄も、地底保存も、実際に行われている。


しかし、深深度深海の底に沈めるとはいっても、容器が万全である保証等あり得ない。放射能が漏れ出したらどうするんだ。

地底に埋めるやり方は、プレートのずれの起こる確立の最も低い(従って地震発生の可能性が限りなく少ないと思われる)安定岩盤を選んで、トンネルを掘って納めてしまえ。


現実としては、ドイツ/オーストリアの、ケルト族の文明の栄えた源であった<岩塩>を掘り出した『ハルシュタット』の、既に使われていないトンネル(地底800メートル以上)に納めている様です。

しかし、万一地震が起こって、容器が壊れたりしたらどうする。。。


それらに対する、万民が納得出来る回答は一切なされ無いまま、<ウヤムヤ>に放置されているのが現実です。


宇宙に捨てるなんざ、もってのほか。

スペース・シャトル『チャレンジャー』の爆発で分かる通り、ロケットの打ち上げなど、100%安全な物からは、ほど遠い。

もし、打ち上げ途中で<大気圏>で爆発でもしたら、ましてやロケットが失速して地上に墜落でもしたら、核戦争が起こった事と同じ自体になる訳だ。

とても<おっかなくて>ロケットで打ち上げる事を、世論に納得させる自信は何処の政府にも無い。

宇宙に打ち上げとなると、海底や地底と違って、<人知れず>こっそりと言う訳には行かないですからね。



長々と書いて来たが、日本はつい4年前、2006年フランスの技術援助で『六ヶ所村再処理工場』が完成するまで、総ての廃棄物を、フランスに送って<再処理>をしてもらっていたのです。


そのフランスですら、自国の分で手一杯であった所を、無理矢理頼み込むにあたって、工場の建設費用は日本原子力庁が負担し、運転費用の一部も負担して来た。
その施設で、フランスは、アメリカやドイツの廃棄物処理も行って来た!

(何やらの基地に話みたいですが、日本の官僚達とは、基本的な所では朝貢して解決するしか、能がないのですね)


しかも、事はそれだけでは無いのです。


<再処理>された日本からの(元)汚染物質は、その都度日本が引き取る契約で有ったにもかかわらず、「場所が無い」事を理由に、ノラリクラリと受け取りを引き延ばし続けていたのでした。

フランスが、とうとう<たまりかねて>回収を迫り続けた結果、やっと搬送したのが、自衛艦『赤城』の護衛になる第一回目の搬送で、ルート上の各国政府は大反対するは、グリーン・ピースは抗議行動はするは、世界を上げての大騒ぎを巻き起こしたものでした。



話は変わるが、10年以上前、ピレネーを越えてスペイン国境のバスクやアラゴン地方をドライブしていて、山々の稜線上に<風車>がずらりと並んで居るのを目にした時、実に不思議な気がした。

風力発電は、知識としては知っていた物の、オランダ等を除いて、特に地中海地域で目にする事等無かったのですから。


なんだか、感動してしまった事を、今でも覚えています。


ピレネー山脈は、太陽光発電の実験で既に名高く、70年代から<巨大な四角の>鏡ばりの建物が有って、フランスの名物になっていたものの、フランスにはまだ<風力発電>の意識は無かったようです。


ここ10年の、世界中でのエネルギー政策の変化、人々のエコ意識の進化は、素晴らしい速度で進んでおり、何度も経た<石油価格の高騰>も後押しとなって、今やフランスも全国津浦々で風車が回っている様になった。

一般家庭でも太陽発電パネルを取り付ける人々も増え始め、各家庭での発電量のうち使用分以上の発電分は、『フランス電力』が買い上げる事が義務化されてもいる。


翻って、日本の現状はどうなのだろうか。


確かに、エコ・ブームと言う言葉は、昨今よく見聞きする様になった。

一般家庭の太陽光発電も、電力会社への売電も、法制化されたらしい。

ハイブリッド車は当たり前になりつつ有り、完全電気自動車も、市場に出始めている。

しかし、語られる事は「蓄電池」の性能アップに関する事ばかりのようだ。

つい最近も、<リチウム蓄電池>の性能アップと、開発のために、電機メーカー各社が共同プロジェクトを立ち上げた様なニュースに接した。


エコカー減税も良いだろう。

下請け各社に又また酷い条件を否応無く飲ませての<黒字回復>を果たした『トヨタ』を始め、元々電気自動車開発に積極的で有った『日産』も、黒字に転化したそうだ。


しかし、自動車目メーカーを儲けさせるのも良いが、もっと根本の所から、総てを見直す必要が有るのでは無いか、と言う気がする。

そして、高性能電池の開発も良いけれど、電池は<電力>が必要なのである。

そして、発電には、エネルギーが必要なのだ。



フランス北部、ブルターニュ地方に、その地方特有の<潮位の差の大きさ>と、それに伴う<潮流の早さ>とを利用した<潮汐発電書>がある。


日本は、名だたる火山国で有る以上、<地熱利用>を、もっと積極的に進める必要は無いのだろうか。

「コストの面で、実用化が困難」などと言っているから、何もかも永久に不可能のままになってしまうのだ。


そのくせ、民間レベルではあっちでもこっちでも<温泉掘削>が大流行り。

もちろんそれはそれで良いのだろうが、これからの日本と世界のエネルギー需要と、供給環境を鑑みるに付け、可能性の有る事は、総てにおいて積極的試みる必要がある。


地熱発電。
潮力発電。
風力発電。

これらの、有る意味で<無尽蔵>な資源を放っておく手は無い。



原子力は、人間の生活寛容に、絶対にそぐわない。


そして、オーストラリアが、いつまでもウラニウムの供給を続けてくれる保証も無い。
日豪長期供給契約を結んだ、などと言っても、どうせ状況が変われば、何が起こるか解らない。


エネルギーは、食料と並んで<他国任せ>にするべきでは無いのだ。

日本は、石油の確保で、この事は身にしみていなければならないのでは無いか。



コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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Unknown (和久希世)
2010-05-13 11:13:50
dendrodumをご紹介くださり有難うございました。
探せば色々な方法があるはずなのに、どうして原発に、日本もフランスも、ここまで無理をして、造り続けるのでしょうね。
原発問題は、トイレの無いマンションを作って売り出したようなものとは、言い得て妙の面白い表現ですね。
高ウレベル核廃棄物の深海溝への貯蔵・保管 (古川典保)
2011-02-12 20:34:48
 電力の供給に大きな比重を持っている原子力発電は核廃棄物の問題解決なしには進めてゆくことが困難になってきております。また世界的な課題として保管しているガラス固化体の問題もあります。
 そこで、「高レベル核廃棄物をコンクリート等でカプセル化し海洋プレートが大きな角度で沈み込む8000m程度の深海溝に貯蔵・保管」すれば毎年2mm~6mm程度づづ沈みこみ、付加体に取り込まれ、ここで安全に放射性物質としての生涯を終えることになります・
 これが高レベル核廃棄物の最終処理方法として最適な方法と考えております。
古川典保様。 (時々パリ)
2011-02-14 02:45:25
始めまして。
コメントありがとう御座いました。
それにしても、古いブログに。。。(苦笑)デス。
関係者の方でいらっしゃる様ですね。
実際に原発が稼働している以上、「廃棄物」をいかに処理するかは、人類の明日への責任だと思います。
大陸斜面から、深海溝にとは言っても、簡単に出来る物なのでしょうか。
ハイドロメタンの影響はないのでしょうか。
コンクリートで固化すると言っても、八百気圧の圧力下に何十年も、何百年も安定した状態で耐えて行きうる物なのでしょうか。
コンクリートの凝固過程で本の微かなヒビが有ったり、気泡が含まれていたりして、数万年単位の長時間に耐えうる者なのでしょうか。
下ろす際に、毎回確実に安定的に着床させられる物でしょうか。
総ての不安がクリアー出来るとしても、大変なコストが掛かりますよね。
そのうち、国や企業に依っては、コストを優先し、取り敢えず自分達が生きて居る間位問題が起こらなければ、などという発想が、絶対起こって来そうですし。。。
疑問や不安や悩みは尽きません。
研究されている方々は、真剣に全力で取り組んでいらっしゃるで有ろう事は、理解して居りますが。

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