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てらまち・ねっと



 行政の各種審議会の会議の内容、たとえば指定管理者の選定委員会の議事録など、その審議過程の透明性が求められる時代に入りました。
 行政側の都合のよい審議結果の公表でお墨付きを与えないためにも、行政機関の審議の記録を保存し、かつ、情報公開されなければなりません。 
 各種会議の議事録が作成された場合に、行政機関がその正当性を立証し、住民が真偽あるいは間違いの有無を確認するためにも、録音の記録はきわめて重要です。 その音声記録が公開される意義はきわめて高いものです。

 2006年春以来の福井県のジェンダー図書排除問題に続いて同年11月2日開催の福井県男女共同参画審議会の会議の録音のデータが情報公開条例の対象ではないとして、「職員がもっているのに情報公開条例上は、「対象の文書に該当しないので『不存在』という扱い」という非公開処分がされました。
 この福井県の非公開体質、隠蔽体質は何とかしないといけないと、同審議会の録音記録の公開を求める行政訴訟を、「原告団長・上野千鶴子」として2007年2月17日(土)に福井地裁に提訴していました。
 先日、10月10日の3回目の弁論で結審。
 判決言渡は来年1月30日(水)午後1時10分 福井地裁 2号法廷 
  と指定されました。

 区切りとして、訴訟のまとめをします。【各情報の転載転送・歓迎】

● 事件番号 平成19年(行ウ)第2号
 福井県男女共同参画審議会音声記録非公開処分取消請求事件
 原告 上野千鶴子 外12名   被告 福井県

● 提訴 
 2007年2月17日(土)  福井地方裁判所へ訴状提出。記者会見
 第1回弁論   4月25日(水)午後1時半から  同2号法廷
 第2回弁論   7月25日(水)午後1時半から  同2号法廷
 第3回弁論  10月10日(水)午後4時から   同6号法廷
 判決言渡 2008年1月30日(水)午後1時10分  同2号法廷

● 被告主張の要点 
 ⇒ <音声記録>は職員が職務として録音し保管しているが、(文章としての)「会議録」を作成するための単なる「備忘的なメモ」として個人的に保管しているに過ぎず、情報公開条例の規定する「公文書」にはあたらない、というもの。

● 原告主張の要点 
 ⇒ 課の職制上も担当である職員が課の職務として「会議録」を作成するために不可欠なものとして<音声記録>を所持・保管しているのだから、単なる「備忘的なメモ」ではなく、組織の業務として保管しているというべきで「公文書」である。

● この訴訟の意義
 ⇒ さらりと考えると、公文書であるのは当たり前のようにも思え、情報公開に前向きな自治体では何の問題もなく公開されています。

 ところが、非公開体質の自治体では、今回の福井県のようなことになります。
 
 実際、福井県は、この訴訟の途中で北海道が「指定管理者の選定会議の音声記録を非公開(今回の福井と同じ「不存在」あつかい)とし、審査会が今年5月に『不存在処分は妥当』とした答申書を証拠として提出してきました。

 いま、全国の自治体の一部に同様の状況があるようです。(数が多いか少ないかは、まだ調査データはありませんが、)北海道のようになっては大変です。
 これからのIT時代において、役所の各種情報が電磁的記録となる見込みの中、電磁情報の情報公開をどうするかという観点で全国のリーディングケースになる裁判だととらえています。

● 勝算 
  当然、勝訴するつもりでやっていますし、感触も十分です。
 が、裁判だけは、判決言い渡しの瞬間まで、まったく分かりません。
 予想通りの場合も、予想に反して負けることも、予想外に勝つこともあります。

● おまけ 
 10年ほど前、岐阜県の裏金作りで問題になった「実行委員会の会計書類」について、県職員が机の上に持っているけど、情報公開条例の第2条第2項の公文書に該当しないとして文書不存在=非公開にした事件。
 今回の「会議の音声記録は職員が持っているけど文書不存在=非公開」とまったく同様にも思えます。

 2000年5月の提訴、岐阜地裁は非公開を適法としましたが、2003年12月、名古屋高裁は『岐阜県の文書である』として非公開処分を違法とする逆転判決。
 岐阜県知事の上告は2005年9月に最高裁で退けられて高裁判決が確定、という経過。
      岐阜県の実行委員会の文書の非公開(不存在)処分の訴訟
 今回、福井地裁での第一回目の法廷でビックリ・・・なんと偶然にも、名古屋高裁で4年前にこの実行委員会・公文書の判決を書いてれた裁判官が、本件福井訴訟の裁判長 ! !

●(1)  録音テープや音声記録の公開の必要性
 ◎ 会議のそのままの音声記録の公開によって、行政や特定の人物、機関などに都合のいいように、恣意的に記録が作成されていないことを担保する。
 (今回の福井県の場合、要約版であり、実際に傍聴者の記録からは、一部に相違があるようにうかがわれる。)

●(2) 「異議申し立てより訴訟」
 ◎ 異議申し立てのメリットは早い・お金が要らない。
 デメリットは、いい結論が出にくい、出たとしても行政に無視される可能性もある。

 ◎ 福井県の公文書公開審査会は、「早く答申しようとする意識がない」。
 実際、データをみても1年から2年の期間を要して答申している実態がある。
 ということで、いったん提出しておいた異議申し立ては、提訴のあと、取り下げました。

●(3) 費用と時間
 行政訴訟は収入印紙1万3000円分と切手代を納めれば提訴できる。
 本人訴訟でやるなら、その他は不要。今回、原告の一人の私が選定当事者として訴訟を進める方法で弁護士を頼まず。

 いま、通常の情報公開訴訟は1年で終わろう、というのが目標です。
 2006年5月に提訴した三重県知事の非公開処分取り消し訴訟は、今年2007年1月18日に津地裁で勝訴しました。
    三重県の訴訟
 その弁論も3回で結審。三重県は控訴せず、判決は確定しています。

●(4) 法律や条令の「公文書」の定義
    福井県の条例  

 本件福井県の条例の争点部分は第2条第2項
「この条例において『公文書』とは、実施機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該実施機関が管理しているものをいう」

 職員が職務中に音声記録を作成したことは、被告福井県は認めています。
 つまり、本件訴訟の争点は、究極的には、音声記録は福井県知事が「管理しているもの」といえるか否かに尽きる。

●(5) 行政機関の中での情報公開の対象とする文書の法令上の位置づけの歴史

◎ 初期の情報公開条例 =Aタイプ
   「決裁・供覧等の手続的を了したもので、実施機関が管理しているもの」
◎ しばらく前に多かった情報公開条例 =Bタイプ
   「実施機関が管理しているも」
◎ 最近主流の情報公開条例 =Cタイプ
   「職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有・管理しているもの」
 
 「紙の文書」だけだったところに、7年から8年ほど前、「図画、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)」が加えられました(A、Bタイプの条例)。

 情報公開は地方公共団体が進んでいましたが、その後の国機関に対する情報公開法の施行をきっかけに、法をならうように全国の条例改正が進められました。(Cタイプの条例)
 
●(6) 「公文書」と認定する対象の違い
◎ Aタイプの条例では、役所にある文書のうち、決済の印が押してある文書とその一連の文書が対象となります。

◎ Bタイプの条例では、基本的に役所にある文書のすべてが対象になります。

◎ Cタイプの条例では、Bタイプの条例に「組織的に用いるもの」という限定がつけられ、つまり、一見、狭められました。もっとも、現実的には、ほとんど「役所にあるもの全部」として運用しているらしい(少なくとも岐阜県では)。

●(7) 情報公開の現状
 会議録等作成のための録音記録を公開することには自治体でバラツキがあります。
 録音記録に関しては、原告側が敗訴した判例が、地裁(岡山)、高裁(三重)、最高裁(香川) (いずれも「町議会の会議の音声記録」) でそれぞれ存在します。
 公開意識の高い自治体は平気で公開し、非公開ベースの自治体はこれら判例に寄りかかって非公開とするようです。

 全国の人が利用できる判例にするには、「組織的に用いる」というCタイプの条例でも勝てる理屈にしたい。
 そのためには、被告福井県の「音声記録は『組織共用文書』ではない」という主張を崩しておく必要があります。

●(8) 判例
 ◎ 訴状で、原告が負けた判決を引用することは、専門の弁護士の皆さんは通常はやらない手法かもしれません。今回、上野さんの「手持ちは全部出して早期決着を」という意見を尊重して、かつ、私の、全国の自治体で使える「汎用型」の訴状もしくは訴訟にしたいということで、手持ちは全部、最初から使うことにしました。本人訴訟ならではの訴状。

 過去の判例は次のようです。

 ◎ 平成14年(行ウ)第17号「議事録テープ非公開決定処分取消請求事件 平成15年9月16日 岡山地裁判決  (確定) 
   H14年の岡山地裁の判例」(判例自治253号25頁から28頁)

 Cタイプの条例についての判断であるが、判示は「職員が組織的に用いるものとして」の解釈を「決済、供覧等の手続きが終了し、組織としての供用文書として利用・保存されている状態になっているもの」という決定的な過ちをおかしています。原告が控訴しなかったから確定しただけというしかありません。
 判示の要点は以下。
「議事録が、議会会議規則等による記載要件を備えていなかったり、記載内容の判読のために、補充的機能を果たすものあるいは説明資料として、議事経過を録音したテープを利用するしかないような場合には、議事録と一体化すべき行政文書として、当該録音テープを位置づける余地があるが、上記のような特段の事情のない限り、議事経過を録音したテープ等は、議事録作成に向けて、その、正確性等を担保するための補助的手段に過ぎないものというほかなく、それ自体では、『実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が保有する行政文書』とはいえない。」


◎ 平成14(行コ)41情報公開・同請求控訴事件(原審・津地方裁判所平成13年(行ウ)第13号・同平成14年(行ウ)第7号) 名古屋高等裁判所 平成14年12月26日
      判例集
 これは、Aタイプの条例に関しての訴訟で、初期の条例にテープを加えた条例において以下の判断をしたもの。原告は、上告せずに確定。
「公開の対象となるのは行政情報そのものではなく公「文書」である。テープは決裁文書である会議録の起案の準備のためのいわばメモの代わりにすぎないという性格のものである」


◎ 最高裁  平成16年11月18日判決(第一小法廷) 事件番号 平成14年(行ヒ)第108号
情報公開請求却下決定処分取消請求事件(香川県土庄町)

      判例集
 Aタイプの条例の場合で、議事録作成前に情報公開請求して非公開とされた場合、議事録が作成されるまでの間は、その処分が容認されることになります。
 逆に、議事録を作成して決済の時点で公開の対象となることを示した、ともいえます。
「本件テープ等に基づいて作成される会議録については決裁等の手続が予定されているが、本件処分当時、同会議録はいまだ作成されていなかった。
本件テープは、被上告人の事務局の職員が会議録を作成するために議事内容を録音したものであって、会議録作成のための基礎となる資料としての性格を有しており、会議録については決裁等の手続が予定されていることからすると、会議録と同様に決裁等の対象となるものとみるべきであり、決裁等の手続を予定していない情報ではないというべきである。したがって、会議録が作成され決裁等の手続が終了した後は、本件テープは、実施機関たる被上告人において管理しているものである限り、公開の対象となり得る。」


●(9) まとめ ◎ 福井県の条例は、「『公文書』とは、実施機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該実施機関が管理しているものをいう」とされています。つまり、Bタイプの条例です。

 Bタイプの条例の規定であれば、テープから議事録として成文されて後にテープを破棄する予定であっても(だからこそ私たちは、破棄される前に速やかに情報公開請求した)、職員が持っていれば条例対象の公文書になります。なぜなら、情報非公開処分取消訴訟は、情報公開請求時点の「公文書」に関する処分が対象(最高裁判決)であるから。

 Cタイプの条例の場合の論点としては、分かりやすい一つの着眼点は、職員の位置づけです。
 今回でいえば、担当課の職制から、音声記録を管理している職員は「主査」です。他に担当している職員名も、他の公文書から読み取れます。すると、録音の記録は、「組織共用文書」であるともいえます。
                          以上

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 訴訟の次のデータへのリンクをつけたページ
    2007年2月17日に提訴した福井県の男女共同参画審議会の会議の音声記録の公開を求める訴訟のページ 

「訴状の全文、訴状目次のみ、証拠説明書(テキスト版には可能な限りのリンクをつけた)
原告代表上野千鶴子の意見書、原告菅井純子の陳述書、原告小川満美の陳述書
 原告準備書面(1)、(2)、(3)、原告証拠説明書(2)、(3) 
 被告答弁書の主要部の抜粋、被告準備書面(1) (被告準備書面(2)は省略)」
 
  提訴のことの報道記事は ⇒ ◆福井県男女共同参画審議会音声記録の情報非公開処分取消請求事件の提訴のこと

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 (最近の書面の抜粋) 
     2007年9月2日 原告準備書面(2)

第6  (略) 以上のとおり、保管実態からしても利用の実態からしても、公文書性に疑いはないのである。

第7 
 1. 本件審議会は極めて重要な意義を有する
 2. 実施機関が業務上の必要から組織として管理していること
 3. 本件音声記録は組織的に共用されていた
  (略) 会議における録音記録の組織共用性は一般的に否定されるというものではない。むしろ本件の場合、課長等は、審議時間や会議録の形式等からすると録音しなければ会議録の作成が極めて困難であったことを容易に推測できたはずで、録音されている事実やその状況について認知し、必要があればいつでも録音記録を聴取し得る状態にあった可能性があり、そうしたことからすると本件公開請求に係る録音記録そのものが組織的に共用されていたというべきである。

4. 本件音声記録の固有性について
  (略) 以上、本件音声記録は情報としての性質や周辺状況を考えれば公文書である。 (なお、本件条例はBタイプ、旧条例はAタイプである)

第8 
 1. 情報公開の条例の分類(訴状第10の2)
 各条例における「実施機関が(保有)管理しているもの」についての段階別の公文書性
        起案など    供覧中など     決裁等手続を終了
Aタイプ    △ (□)    △ (□)        ○
Bタイプ    ○       ○           ○
Cタイプ    ○       ○           ○
 
○は公文書に該当する。
△はいまだ流動的部分がある。(□)のとおり、最高裁判例(甲第23号証、資料4)等によって、「決済予定文書の基礎文書も決済手続きの終了で公文書となる」とされ、少なくともある種類の文書に関しては、いわば遡って対象となるような状況にある。「そもそも決裁等の手続を経ることが予定されていない情報」についてどう判断するかは今後の課題であるが、そもそも、Aタイプ条例は今では少数になっている。  (略)
                              以上

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
        2007年10月10日    原告準備書面(3)
第2 同書面第2の組織管理要件について
1. 1について
 ・・また、被告は後段において「本件音声記録を含めた組織的に管理されていない個人的な多種多様な文書をすべて『公文書』として扱うことは、事務処理上も、保管スペース等の物理的な見地からも不可能あるいは著しく困難」と主張するが、いったん情報公開制度を定めた以上自治体の当然の責務であることをそのように矮小化し、情報公開を加重労働、過剰管理であるかのごとくに主張することは、本件条例の趣旨目的(第1条、3条)に反する。

第3 まとめ
 被告の条例の規定や構造を前提にしない、たとえば当該条例がBタイプかCタイプかもあまり頓着しない主張は、情報公開制度についての最高裁判示における原則、つまり条例規定・構造を明確に理解してから当該事案を判断するという原則から大きく逸脱していて、主張は噛み合いにくい。
 ともかく、これまで述べてきたとおり、本件音声記録は本件条例第2条で規定する公文書に該当するから本件非公開処分は速やかに取り消されるべきである。      以上

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