昔、島田紳助という芸人が「紳竜の研究」というDVDのなかで、「知識のドーナッツ化」という話をしていた。
「テレビタレントは賢い必要はないねん。賢いんちゃうかなっと思われたらそれでええ」と言っており、「賢いんちゃうかな」と思われるためのメソッドとして、誰でも知っているような中心にある知識を覚えるのではなく、1分野1箇所、自分が心から好きになれるものを探して、それを熱く語ったら、テレビに映るチャンスが上がる、ということを言っていたのだ。
確かに、情報量というのは、レアであればあるほど価値がある。だから、ある分野の中の誰でも知っているようなことを話すよりも、少しレアな情報を話す方が「めっちゃ詳しいんじゃねーか?」というブラフになりやすい。この手法は、正直、自分自身が(多かれ少なかれ)やってきているから、よくわかる。
例えば俺は世界史なんてよく知らないが、オリエントとローマだけはそこそこ知っている。単純に古代の国々の話は価値観が極端に違くて面白いし、ローマにも旅行に行ったから勉強しただけだ。ギリシアとオリエントの中継貿易ゆえに金属貨幣を世界で初めて鋳造したのがリディア王国。BC600年くらいのときに、商人としての本質を掴んでいたなんてスゴいよなぁ。などと、適切なシーンで文系さんに使えれば、確かに、世界史を全く知らないヤツという評価にはならない。あわよくば、こいつ理系のくせに世界史まで網羅してんのかよ、っと思わせることすらできる。けど別に、他の時代の他の地域のことは中学の社会科レベルしか知らない。
1分野1箇所だけでも、それなりに知っていれば、それは、まったく知らない人にはならないわけだ。
しかし、物理屋さんのなかで、電磁気学でマックスウェル方程式が、などと言えば、それは当たり前にみんな知っていることだから、全くもってすごいとはならない。まぁ実際、文系が「マックスウェル方程式がー」なんて言い出したら、それだけで俺は拍手してやるけど。あくまでもドーナッツ化が重要で、みんなが知っている中心的な知識には、みんな興味を示さない。
(文系の中で話すのであれば、マックスウェル方程式くらいが良いかもしれない。彼らにとっては「物理学」が一分野であり、物理学といえばニュートンの運動方程式が中心知識だからね)
確かにこれで、大して勉強していないのに「おお、こいつはめっちゃ詳しいんじゃないかな」って思わせることができる。けれど、この方法には、致命的な欠陥がある。それは、何時間も話すような場では、簡単にバレるってことだ。
あくまでも1人が連続で喋る時間が30秒以内であることが多いテレビ番組、あくまでも1回につき140文字しか書くことができないTwitterなどでは、非常に有効であるが、専門家同士の長時間の議論では「なんだ、こいつは。基礎基本がなっていない、ただのバカだな」となるだけである。
きちんと言っておこう。ちゃんと専門家・研究者でありたいのであれば、きちんと基礎基本を抑えること。
この方法は、他者に対してのブラフなわけだから、特に理系が自然科学の中でやってはいけませんよ?しかしながら、理系の世界ですら、ブラフが前提になってしまっているのが、本当に腐ってきているところなんだけどね。
(そして、何かを知っているということが、何かを知らないことであるレッテル貼りにすらなってしまうところは、すでに本当に腐っていると思う。物理がそれだけできるのだから、生物学のこれは知らないだろう?みたいなね)
(ここで物理会参加者に無意味に緊張感を与えてみよう笑)たとえば、俺が週2回やっている物理会では、最後には必ず一人ずつコメントを言ってもらうことにしているが、「ドーナッツ」に関する内容ばかりであると、高校生・浪人生くらいのときの俺と同じなのではないかなっと思っていたりはする。
要するに、本論の無理解を棚に上げて、俺が喋った内容の中でアドバンストな内容や要約的な部分にだけフォーカスを当てて、そこを定性的に質問することで「本論はわかっているに決まっているじゃないか」という無言の主張をしているんじゃないだろうか、ということだ。本論のなかで真っ直ぐには理解しにくいところは沢山ある。そして、個々人にとって疑問に思うべきである箇所、即ち「正しい疑問」というのが、必ずある。これをどれくらい俺に開示できているかというのは、俺は、(少なくとも)お伝えしている範囲の物理学はある程度掌握している、かつ、知識のドーナッツ化に関する知識もあるので、申し訳ないけれど見抜けてしまう時がある。
別に、背伸びの質問をすることが悪いことではない。そうやってモチベーションを高めなくちゃいけない時期もあるだろう。ただ、それがあまりに長いと、結局は「物理学というトリビアを多少知っているだけの、賢さを演出したいだけの人」から抜け出せない。そういうことが嫌だから、物理学をガチろうと思ったんじゃないのかな?
前の記事でも書いたが、現代の日本はルンペンブルジョアジーが支配している、崩れかかっている社会である。
彼ら彼女らは頭良いフリに関してはプロ級であり(といっても、東大駒場やミネソタ大にいる教職員・大学院生のそれから比べると、かなり劣るが)、当然のように「知識のドーナッツ化」の手法を使ってくる。悲しいことに、この程度のやり口でSTEM人材をコントロールできると思ってしまっている部分があるが、そのメッキが剥がされるとわかるや否や、数の暴力を使って、言論弾圧をしてきたり、組織を強制的に崩壊させたりする。まぁだからこそ崩れそうなのだけどね。
「賢いんちゃうかな?」と思わせることなんて、誰だってできるし、容易。
問題は、テレビタレントならいざ知らず、そんなことをしている連中に大きな決定権を渡していること。
そう、これは勝利宣言。君らはいずれ、俺らが徹底的に鍛え直してやるよ、っていうね。
「テレビタレントは賢い必要はないねん。賢いんちゃうかなっと思われたらそれでええ」と言っており、「賢いんちゃうかな」と思われるためのメソッドとして、誰でも知っているような中心にある知識を覚えるのではなく、1分野1箇所、自分が心から好きになれるものを探して、それを熱く語ったら、テレビに映るチャンスが上がる、ということを言っていたのだ。
確かに、情報量というのは、レアであればあるほど価値がある。だから、ある分野の中の誰でも知っているようなことを話すよりも、少しレアな情報を話す方が「めっちゃ詳しいんじゃねーか?」というブラフになりやすい。この手法は、正直、自分自身が(多かれ少なかれ)やってきているから、よくわかる。
例えば俺は世界史なんてよく知らないが、オリエントとローマだけはそこそこ知っている。単純に古代の国々の話は価値観が極端に違くて面白いし、ローマにも旅行に行ったから勉強しただけだ。ギリシアとオリエントの中継貿易ゆえに金属貨幣を世界で初めて鋳造したのがリディア王国。BC600年くらいのときに、商人としての本質を掴んでいたなんてスゴいよなぁ。などと、適切なシーンで文系さんに使えれば、確かに、世界史を全く知らないヤツという評価にはならない。あわよくば、こいつ理系のくせに世界史まで網羅してんのかよ、っと思わせることすらできる。けど別に、他の時代の他の地域のことは中学の社会科レベルしか知らない。
1分野1箇所だけでも、それなりに知っていれば、それは、まったく知らない人にはならないわけだ。
しかし、物理屋さんのなかで、電磁気学でマックスウェル方程式が、などと言えば、それは当たり前にみんな知っていることだから、全くもってすごいとはならない。まぁ実際、文系が「マックスウェル方程式がー」なんて言い出したら、それだけで俺は拍手してやるけど。あくまでもドーナッツ化が重要で、みんなが知っている中心的な知識には、みんな興味を示さない。
(文系の中で話すのであれば、マックスウェル方程式くらいが良いかもしれない。彼らにとっては「物理学」が一分野であり、物理学といえばニュートンの運動方程式が中心知識だからね)
確かにこれで、大して勉強していないのに「おお、こいつはめっちゃ詳しいんじゃないかな」って思わせることができる。けれど、この方法には、致命的な欠陥がある。それは、何時間も話すような場では、簡単にバレるってことだ。
あくまでも1人が連続で喋る時間が30秒以内であることが多いテレビ番組、あくまでも1回につき140文字しか書くことができないTwitterなどでは、非常に有効であるが、専門家同士の長時間の議論では「なんだ、こいつは。基礎基本がなっていない、ただのバカだな」となるだけである。
きちんと言っておこう。ちゃんと専門家・研究者でありたいのであれば、きちんと基礎基本を抑えること。
この方法は、他者に対してのブラフなわけだから、特に理系が自然科学の中でやってはいけませんよ?しかしながら、理系の世界ですら、ブラフが前提になってしまっているのが、本当に腐ってきているところなんだけどね。
(そして、何かを知っているということが、何かを知らないことであるレッテル貼りにすらなってしまうところは、すでに本当に腐っていると思う。物理がそれだけできるのだから、生物学のこれは知らないだろう?みたいなね)
(ここで物理会参加者に無意味に緊張感を与えてみよう笑)たとえば、俺が週2回やっている物理会では、最後には必ず一人ずつコメントを言ってもらうことにしているが、「ドーナッツ」に関する内容ばかりであると、高校生・浪人生くらいのときの俺と同じなのではないかなっと思っていたりはする。
要するに、本論の無理解を棚に上げて、俺が喋った内容の中でアドバンストな内容や要約的な部分にだけフォーカスを当てて、そこを定性的に質問することで「本論はわかっているに決まっているじゃないか」という無言の主張をしているんじゃないだろうか、ということだ。本論のなかで真っ直ぐには理解しにくいところは沢山ある。そして、個々人にとって疑問に思うべきである箇所、即ち「正しい疑問」というのが、必ずある。これをどれくらい俺に開示できているかというのは、俺は、(少なくとも)お伝えしている範囲の物理学はある程度掌握している、かつ、知識のドーナッツ化に関する知識もあるので、申し訳ないけれど見抜けてしまう時がある。
別に、背伸びの質問をすることが悪いことではない。そうやってモチベーションを高めなくちゃいけない時期もあるだろう。ただ、それがあまりに長いと、結局は「物理学というトリビアを多少知っているだけの、賢さを演出したいだけの人」から抜け出せない。そういうことが嫌だから、物理学をガチろうと思ったんじゃないのかな?
前の記事でも書いたが、現代の日本はルンペンブルジョアジーが支配している、崩れかかっている社会である。
彼ら彼女らは頭良いフリに関してはプロ級であり(といっても、東大駒場やミネソタ大にいる教職員・大学院生のそれから比べると、かなり劣るが)、当然のように「知識のドーナッツ化」の手法を使ってくる。悲しいことに、この程度のやり口でSTEM人材をコントロールできると思ってしまっている部分があるが、そのメッキが剥がされるとわかるや否や、数の暴力を使って、言論弾圧をしてきたり、組織を強制的に崩壊させたりする。まぁだからこそ崩れそうなのだけどね。
「賢いんちゃうかな?」と思わせることなんて、誰だってできるし、容易。
問題は、テレビタレントならいざ知らず、そんなことをしている連中に大きな決定権を渡していること。
そう、これは勝利宣言。君らはいずれ、俺らが徹底的に鍛え直してやるよ、っていうね。