たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

"ちゃんと愛して"の真意

2019-04-24 23:28:52 | Weblog
 はじめは演技のはずだったのに、いつの間にか本気で涙を流している自分に気が付くと、自分自身を見失っていることを自覚する。
 どっちが、、いや、どれが本当の俺なんだろう。きっと、本当の自分なんて、いない。でも、中核に存在しているリズムだけは絶対に存在するはず。そのリズムが乱れすぎて、乖離が耐えられなくなって、張り詰めていた糸が突然プツンと切れてしまった時のように、何かが崩れ去る。

 頑張ったり演じたりしないと愛されないことに慣れてしまうと、プレイそのものが中毒性を持ち始める。
 相手の期待に応えれば、喜んでもらえるし、愛してもらえる。そして、いざ承認を得られると、そんな相手を幻滅し始めてしまうのだ。「本当の俺をわかっていない。俺は、そんなんじゃない。俺の装備したものを愛してるだけで、俺を見てくれていない」ってね。でも、もはや本当の自分自身を曝け出すことが怖くて仕方ない。だから、また期待に応えようとして、プレイする。
 それを繰り返せば繰り返すほど、中核にいるはずの、弱くて幼くて子供のままの自分を守るために、造りだした幻影である自分たちが、全力で中核を隠す。そして、またプレイする。

 ただの「たかはしけい」なのに、ほぼ誰も、俺自身を観てくれない。
 強い理系である俺や、オフェンシブな俺や、得てしまった洗礼されたロジックを、みんなが称賛すればするほど、虚しくなるのだ。虚しさで傷ついてしまったfragileな気持ちを、他者を素早く正確にジャッジすることで、癒す。ABCグループにしても、クズにしても、理系の定義にしても、そんなことは至極どうでも良い。でも、「…ほら、みんな、どーせ、こういう論理展開が好きなだけでしょ」って攻撃性に変換させて、一時の承認を得ることで潤す。自分の論理目当てで寄ってくる誰かに嫌悪感を抱いて心の奥底で見下しながら、その誰かに最適化することで、せめてもの潤いを得る。そんな自分自身に気持ち悪さを感じて、吐きそうになる。
 Aグループ的な今の若者っぽい俺が好みならば最大限そのようにジャンプ少年を演じるし、Cグループ的ないかにも真面目な俺が好みならば最大限そのようにカリカリ勉強している姿を演じる。だから、本当の実力は身についても、魂レベルで成長しない。ただただ、装備品が強化されていくだけ。

 ただの弱い子供のままの本当の自分に、何の自信もない。そんなところまで見抜いてくれる個人を本当に好きになって、より良くしてあげたいと思ったとしても、本当は自分に自信がないから、だんだんと不信感に変わり始めてしまう。それこそが幻影であることにも気が付けない。
 どうして、俺が必死で隠していることとまったく同じことをそんなに顕わにしながら、そんなに自信満々でいられるの?ってどこかで尊敬しながらも、自分自身は弱いままで、どうしたら良いのかわからなくなる。

 ねぇ、、本当の意味で強くなるためには、どうしたら良いんだろうね。
 この中毒性の高い行為(プレイ)、なかなか、やめられないよ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

理系アカデミックの論文システムとマルチ商法の類似性

2019-04-21 22:28:20 | 自然科学の研究
 「手を動かすだけで、確実に論文になる」
 こんな言葉を囁かれ、多くの大学院生や卒研生、そして最近ではもっと幼い子たちが騙されて、研究室で搾取されている現状があることを、世間ではあまり問題視しない。

 大学の研究室は、私立国立国内外を問わず、人手不足であり資金不足である。それはそもそもの予算の絶対量が少ないからである。
 そもそもカネがないのに、大学院重点化等の問題も手伝って、ポスドクや名ばかり役職の公募に大量の若手研究者が応募し、少ない賃金で搾取されている。そう、人はたくさん余っているのに、各研究室は人手不足なのである。安い労働力として使われている彼ら彼女らは博士号を取得した、世間で言うところのエリートだ。これら非正規雇用を確保するだけでも大変なのに、毎年のように、得てしまった少額の科研費に対しての成果報告をしなければならない。その時に重要なのは、論文が出たかどうか、である。

 「いかに論文を書くことに最適化させるか?」
 これが研究者に課せられた唯一の使命であると信じている若手研究者・大学院生は大勢いるだろう。学者としての本来的な実力など無くても良く、本質的には非常にくだらないテーマでも構わない。とにかく論文を出すことが重要であり、そのためであれば「生命とは何か?」「生命起源」等の大きな題材と無理矢理に繋げることも、大した関連性がなくとも「ガン治療薬になりうる」と言うことも厭わない。生きていくためには、嘘と真実のファジーな部分を見極めるのが重要であり、「あえて言わないことは嘘ではない」と自分に言い聞かせて、とにかく論文だけを量産し生きていく。

 残念ながら、この程度で済んでいるならば、アカデミックのなかでは、まだマシである。

 中堅世代の研究者は、もはや後戻りができない。いまさら企業で働くことも難しく、引けない自分にさえも気がつけていない。
 だから、安い労働力を確保し、安い労働力も難しいとなれば、彼らよりももっと若くて純粋な大学院生や学部生、そしてヘタすれば中高生からも搾取しようとしている。そして、冒頭の言葉に繋がる。
 「手を動かすだけで、論文が書けるよ。早いうちに書いて、博士号を取得しないか?」
 「え、でも、D進するお金ないですし」
 「大丈夫だよ、早く論文を書いていれば、だいたい学振は通るからね。君は、見込みがあると思うよ!」

 いつのまにか、理系アカデミックは、論文を神とした宗教になってしまった。
 再現性と再現性を軸にした論理構造を神とした宗教である「科学」を信仰する者よりも、理系として大学に残る者の多くが、論文を神として信仰するようになってしまったのだ。だから、バイオ系なのにピペットマンの使い方すらも儘ならない者がSNS上で大学教員を自称していたり、誤差論や統計処理も覚束ない状態で平気で研究活動を行い、グラグラの足場の上で「論文を出した!!」と意気込んでしまうのである。そして、論文教信者が最も崇めるジャーナル”Cell, Science, Nature”の再現率は3割にも満たないとのデータすら存在する。

 彼らは、常に「手」を探している。いかにして、マンネリは崩さずに、少し手を加えるだけで、論文という財産を手にできるか?
 そして、いざ論文を書こうとする段階になると、搾取される側の若い子は、著者には入っているが、第一著者ではなかったりする。
 「この研究は、もともとアイディアは彼が出したものだし、論文早く書いちゃった方がいいでしょ。うちのルールでは第一著者は論文を実際に書いた人にしているんだ」
 ずらっと並んだ共著者たち。そのなかに、自分の名前があることに、小ささを感じる。本当に全員が納得した文章なのかどうかもわからないのに。

 ・・・そう、アカデミックのシステムは、もはや、論文を中心にしたマルチ商法詐欺に近い。

 「この分野は努力しただけ結果が出るのは間違いないよ」→どこのMLM(マルチ・レベル・マーケティング)のセリフですか?
 「論文を書いて、世界発信力を身につけよう」→大して役にも立たないキラキラ内容でSNSで目立って、こんだけ儲けられますよー、ってやつですか?”意味がなく””誰の役にも立たない”ところまで、ネットワークビジネス等とそっくりですね。
 「とにかく論文を書こう。それが業績になって、有能かどうかの証明にもなって、ポストも得れる」→単一化された評価基準でヒエラルキー作るところとか、完全に洗脳のそれじゃないっすか。
 「この研究は、あのノーベル賞受賞者のー」→すごい人も参加していることを示して、ネットワーク全体を安全なものに見せようとする手法ですか?

 “身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”とはよく言ったものである。今は辛くても、後参入してくる人たちもいるし、すでにうちの研究室には技術もある。
 君が手を動かしさえすれば、論文が書けて、君もみんなもこれから入ってくる人も、みんなハッピーになるよ。

 世の中では、ブラック企業や長時間労働が問題視されている。幼い頃から周囲よりも頭が良かった人にとって、”大学に残る”という選択は夢のひとつでもあるだろう。
 とりあえず今は本質的な研究ができなくても、まずは論文生産のノウハウを学ぶために、手を動かすだけの研究をすることも、一つの勉強かな。こう思ってしまうのは、無理もない。どんな人でも、"ラクして生きていきたい"という悪魔の囁きを、完全に無視することは難しい。

 もちろん、今日書いたことが理系アカデミックのすべてだとは、俺は思っていない。分野によって、実験理論によって、研究室によって、大学によって異なるだろう。そして、これを読んで、認知的不協和を起こし、「こいつもやっぱり、企業に行ったから、アカデミックを批判し始めたか。俺の想定通りだなぁ」などと、バカなコメントがつくことも当然想定している。俺は、そういう「無能な状態のままに後戻りできなくなってしまっている」人たちを、少し哀れんでいるだけだ。
 論文を神だと思っている人の洗脳を解くのは簡単ではない。通常の詐欺や洗脳は、平均的な賢さの人を相手にすれば良いが、アカデミックではそうもいかない。このような書き方をすれば、表面的にはロジカルな、もしくは一見するとロジカルに見えるようなリアクションが返ってくるだろう。ただでさえ、洗脳されて搾取されている相手に、真実を突きつける行為は、反発を食らうだけだしね。「わかってない!」「話しても時間の無駄だ!」「価値観が違う!」ってね。

 当たり前のことだが、だからといって、大勢の人に一般就職することを勧めているわけではない。日系企業など、たいていは洗脳そのものである。当然、起業やフリーランスを勧めているわけでもない。厄介なことに最近は、"脱社畜だ!"なんて掲げる洗脳も、手を替え品を替え、あらゆる分野で流行っているしね。
 洗脳するか洗脳されるかの社会であるし、そもそも洗脳されようが怪しい宗教にハマろうが、その分のご利益があるならば何も問題はないのである。だからね、、何事も、本当にその先にご利益があるかどうか、「待てよ」と一度冷静になって、考えてみて欲しい。ご利益があると期待できるならそのままでいい。でも、研究者として、独立した個人であるならば、何かを信仰するよりも先に、疑う気持ちも忘れないで欲しい。

 これを書くことで、(少なくとも一時的に)傷つけてしまうアカデミックの人もいるだろう。・・・まぁ、、アカデミックの人だけならまだ。。
 ごめんね、でも書かざるを得ない。思考が止まらなかった。
 
 “自分は、今現在もずっと、搾取され続けているのかもしれない”
 どんなに良い状況の人も、どんなに自分は大丈夫って人も、今一度こう考えてみて欲しい。それこそが、あなたの未来をより善くすることに繋がっていると思うから。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

独立した個人であるということ

2019-04-09 22:03:38 | Weblog
 夢から醒めたように本来の自分に戻りつつある俺は、平衡に達してしまったはずの系について冷静に考えることができる。解放された直観と論理は、容赦なく真実を抉り出す。
 リスクをとって解析と改善に努めた結果、俺自身の問題は、強制的に与えられた圧倒的な優しさによって、ほとんど改善しつつある。ちゃんと観てくれている人はいる。変化に気が付いてくれる人は、確かにいたのだ。

 一貫性のない発言と既成事実を、ゆっくりとself-consistentに解いてみる。
 …圧倒的な慧眼さの最低ラインはね、単純に高い記憶力が担保するもの。音色まで再現可能な天賦の才能が、カワレナイたった一つのプログラムに、アクセスし続ける。

 そうだね。確かに、その状況なら、この結論を提出するしかない。
 出力された結果に頭を抱えながら、俺は俺自身を責める。それは、圧倒的に上からの懺悔なのかもしれない。"なぜ、俺ほどの慧眼の持ち主が関わっていて、今の今まで、この構造に気が付けなかったのか"という一点に限る悔いだから。これを見抜いた上であれば、もっと早くもっと確実に、助け出せたかもしれない。
 瞬発力にもかなりの自信があるけど、それも俺自身の問題で曇ってしまっていた。そもそも人間は観たいものしかみないし、何よりも、貴女の言うように、規格化されたストーリーを無理矢理に当てはめてしまっていたところがあるから。

 今の状態では、どうにもできない。ちょうど10年前に決めたから。
 "助けを顕わに求められない限りは、絶対に助けない"って。このルールは、俺個人の安全保障システムってだけでなく、患者自身の安全保障システムでもある。絶対に破るわけにはいかない。
 まぁ、本当の問題は、本人が問題に気が付いているか、なのだが。

 じゃあ、もし、万が一、助けを求められたら?…もちろん、全力を尽くす。
 俺の推論が完全に正しければ、、正直、一筋縄ではいかないし、これまで扱ったどの問題よりも厄介だから、見当違いだとすれば、こんなに有り難いことはない。でも、俺の直観が外れることは殆どないし、加えて論理もカバーしてしまったから、、おそらく…。

 いま最適化しているシステムよりは、絶対にマシなはず。
 でも、それでも、それを俺が露わにすることは、想定外の認知的不協和のもとに晒され、痛みとストレスを同時に感じることになる。口うるさく思われたくないし、精神的に不安定にさせたくない。そう、それがどんなにヤバいシステムへの最適化であったとしても、安定だからこそ、人は最適化してしまう。そして、だからこそ、平衡状態は続く。

 "善き人間関係は、常に、独立した個人同士であることが前提となる"
 だよね?だから、好きに決めたら良いさ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シンデレラの教訓

2019-04-02 23:11:35 | Weblog
 このまま歩けば、あと5分くらいで着くかしら。時刻は19時7分。飲み会の開始は19時だからちょうどいい、と私は思った。
 今日の飲み会には、なんと、豊川モーターズの社長の息子の豊川くんが来るらしい。さすが三大学連合のインカレサークルの飲み会。私は三大学連合の大学の学生じゃないけど、そんなに興味のなかった他大のジャズ研サークルに入っていて良かった、と心から思った。しかも、三大学連合はそもそも女子が少ないことで有名だし、男の子はみんな世慣れてない子ばかり。こんなチャンスは滅多にない。

 そんな飲み会に遅れて良いのか?って。これだから、シンデレラの教訓をきちんと学んでいない人は困るわ。
 シンデレラの勝因は、まず、舞踏会に遅れていったこと。飲み会で目立つコツは、あえて遅れて行って、自分だけのためにもう一回乾杯してもらうこと。男子やぱっとしない女子ばかりの飲み会なら尚更で、遅れていくことで王子様に印象付けることができるのです。
 そして、もう一つ重要な教訓がある。決して、女子で群れないこと。なぜ、意地悪なお姉様たちが王子様に選ばれなかったのか?それは、お母様とお姉様同士で、ずっと群れてしまったから。なぜシンデレラが王子様に選ばれたか?それは一人でいたから。男の人って、女子が群れているのを見ると、話しかける気が失せるみたい。つまり、女子会を避けることが、王子様に選んでもらうためのポイントなのです。

 わざと飲み会に遅れて行った私は、想定通り、私のための乾杯が行われたし、上手く豊川くんの傍に座ることができた。豊川くんをまじまじと見る。この人が!待って、信じられないくらい、カッコいい!
 少し離れた席に、女子同士で群れている一角がある。到着した時に、彼女たちに挨拶をしたが、私は目もくれず、リーダー格の安岡くんに話しかけ、その近くの豊川くんと話せる位置を取ることができた。私は、最大限頑張って、ニコニコしながら笑顔を造って、お淑やかに振舞っていた。でも、豊川くんは安岡くんとばかり話して、しかも最近話題の少年漫画の話ばかりして、会話に入る隙を私に与えてくれない。
 最悪なことに、正面に座ってるムードメーカーの佐藤くんに、ウザ絡みされ始めている。「豊川を誑かしたいんでしょ?」「豊川狙いだよなーそりゃ」私は愛想良く受け流しているのだが、本当にしつこい。デリカシーのない男は、いっそ絶滅してほしい。

 結局、せっかく豊川くんの近くに座れたのに、デリカシーのないウザい佐藤くんのせいで、豊川くんとまともな話もできずに、終わってしまった。
 どうして、こういう飲み会に限って、上手くいかないのかしら。



 飲み会の帰り、俺は、豊川と安岡とで、カフェに入った。豊川とは同じ大学でずっと知ってるし、安岡はこのインカレサークルの企画者だ。いつも、このノリの良い男友達3人で、飲み会の後にカフェに行くのが心地良い。安岡が豊川に話題を降り始めた。
 「なーなー、豊川。今日の飲み会で近くに座った山岸恵ちゃん、気にならなかったの?彼女、かなり美人だったろ。お前に好意あったみたいだし」
 「まぁね、美人だと思うし、最初に近くに座った時は、けっこう気になっていたよ」
 と、豊川は残念そうに応える。
 「じゃあ、なんでだよ?」
 と安岡が言うと、俺に同意を求めるように、豊川は喋り出した。
 「いや、なんていうか、俺に興味があるんじゃなくて、俺のバックの豊川モーターズに惚れてるだけなんだろうな、ってモロバレだったから」
 この状況にあまり慣れていない安岡は「そうか?」と小さく言ったが、それを無視するように豊川は続けた。
 「あの子、口を開かずに口角を無理に上げて笑っていたみたいだし、佐藤の冗談に対しても愛想良く笑うだけで、佐藤に失礼だったしな」
 俺が、合わせるように言葉をかけた。
 「まー、シンデレラの教訓だよ。安岡、なぜ意地悪なお姉さん達は選ばれず、なぜシンデレラは王子に選ばれたのか、わかるか?」
 豊川が「お前、その喩えやめろよ」と笑いながら言ってきたが、無視して安岡に問い詰めた。
 「いや、わかんねーけど」
 と、安岡は両手を大きく開いた。
 「シンデレラは、ハナっから王子狙いじゃない。生活苦を抜け出すために、とにかく舞踏会を楽しもうとしただけ。だから、王子から興味を持たれるわけだ。一方のお姉さんたちは、王子しか狙っていない。相手の人間性を見ようともせずに、最初からジャッジしている女なんか、男からしたらただの敵だろ」
 俺がそう言うと、誰からでもなく、3人で大笑いした。そして、豊川が小声で俺に「いつも、わざとウザ絡みしてくれて、ありがとな」と言ってきた。嬉しく思いながら、「まぁ、それで俺もワンチャン狙ってるんだけどな」と照れ隠しをした。

・・・and they lived smiled happily ever after.
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢見ロック

2019-04-01 22:14:44 | Weblog
 「自分よりも有能な人でも、コミュ力と政治力学を上手に使えば、コントロールできるはずだ」と短絡的なアイディアを心の奥底に掲げている人は案外多い。

 確かに、「勉強だけができる」の延長で「何かの技術だけがある」という人は一定数いる。
 でも、「勉強ができる」ならば、確実にそれを日常生活に応用している人のほうが多いわけで、「自分には細かいことはわからないけれど、細かいことは、そういうオタク君に任せて、自分は大きい枠組みでコントロールすれば、成り立つはずだ」と考えているならば、それは賢い人を馬鹿にしすぎである。

 なぜなら、「賢い」という状態は、「細かいことに耐えられる」のではなく、「細かいことにも耐えられ、高い視点を持つ」ことだからである。

 ここで、賢明な読者は、「有能」から「勉強ができる」へ、そして「技術がある」から「賢い」に、どんどん言葉が変わったことが気になって仕方ないはずだ。
 そんな簡単なことにすら気が付かなかったなら、その程度の読解力と注意力で、もし、誰かをコントロールしようとしているのであれば、無謀以外の何物でもないと思う。

 元の言葉に戻そう。
 ここまでのところ、主張は「自分より有能な人をコントロールすることは原理的に不可能である」ということだけ。

 「無能な状態のまま、自分よりも有能な人をコントロールしたがる人」のとる行動は、共通だ。
 ルールで縛り、壁を作る。透過性のある膜の性質をもった関係性や組織を構築すべきなのに、壁を作ってしまうのだ。この場合、近い将来、確実に崩壊する。その時に、生き残るのは、コントロールしたがる人ではない。有能な人である。有能だから生き残れる。
 つまり、壁を作り、自滅に向かってしまうのである。「この壁を嫌がるのなら、出ていけ」という態度を最後の最期まで取り続けて、ね。

 だから、誰かをコントロールしたがるよりも、とにかく他人を助けられる人間になりなさい。

 と思うのである。「無能な状態のまま、自分よりも有能な人をコントロールしたがる人」は、いつだって「問題点を指摘して、改善策を与える」ことを好む。
 コントロールしたいからって改善策を偉そうに与えるのではなく、単純に手伝えば良いのですよ。

 そう、、助けられようとするから、助からない。
 本気で助けてほしい時は、誰かを助けること。そうすれば、自然と助けられる。


 『でもさ、それじゃあ、自分だけが助かることにしかならなくない?』
 「だから、他人を助けてる余裕なんてないから。変わる気もしないし、変えるつもりもないから」
 『…そう』

 と残念がる表情を創った俺の顔を確認している様子を、目線を向けずに確認しながら、店員が近づいてくることに俺は気が付いた。
 …飲み物もラストオーダーです。何かご注文は?
 「じゃあ、夢見ロックを」

 こっそり笑った俺の顔は、、確認できなかったみたいだね。
 この顔はとっておこう、と決めてから、色々なことがあった。本当に色々なことが。あれから、大人になって、俺は少しは世間の役に立っていると思うけど、、もしかしたら、今またあの頃と同じ問題に直面しているのかもね。

 飼い続けても、解決できていなかった。
 でも、きっと。何を評価して、何を見出しているか、そんなこときっと、わからないだろうからね。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする