葛藤の末に

　上っ面な優しさに心を委ねて、本当の優しさを今夜だけは遠ざけたい。そんな気持ちを"怠惰"なんて簡単な言葉で収束させたくないから、無理やりに難儀な言葉で状況と気持ちを表現する。

　報われているんじゃなくて、報われていることにしたいだけなんじゃない？
　純粋なんじゃなくて、純粋さを強要されてきたんじゃない？

　自分に問えば問うほど、答えが見えなくなって誰も見えなくなって、忘れかけていた大事な問題に直面せざるを得なくなった。生涯に渡って避けてきた問題は、いつだって、どうしようもない真実とともに共存している。
　『解決できるわけがない』と気が付いたのはいつだろう？解決できない問いを、解決しようとする愚直な友に絶望しながら、それでも分かち合ってもらえる微かな希望に想いを馳せて繰り返す、『仲間こそが強み』だと。

　永遠に戻らない時間を逆に辿って、その声を聴いてあげよう。

　「ねえ、きっと、変わってくれるよね」
　『いいや、カワラナイよ』
　「でも、ずっとずっと、自信に満ち溢れている」
　『それはね、カワラナイからだよ。何も変わらなかったけど、強くなったからだよ』

　…………………………………

　本当の優しさに心を委ねて、上っ面の優しさを今夜は遠ざけたい。そんな気持ちを"真面目"だなんて簡単な言葉で纏めたくないから、無理やりに陳腐な言葉で条件と気持ちを表現する。

　報われないんじゃなくて、報われたくないんじゃない？
　不純なんじゃなくて、不純さで純粋さを隠していたいんじゃない？

　あなたに問えば問うほど、答えが具現化して見たくないモノまで増えて、忘れられない大事な問題を忘れなくちゃいけない義務感に襲われる。生涯に渡って胸に抱いてきた問題は、いつだって、どうしようもない事実とともに調和している。
　「解決したくない」と気が付いたのはいつだろう？解決させない問いを、解決しようと目論む野卑な主張に呆然としながら、それでも分かち合えるかもしれない微かな期待に想いを馳せて繰り返す、「これでいいの？」と。

　永遠にやってこないかもしれない時間を順に辿って、その声を訊いてあげて。

　『ねえ、ずっと、カワレナイのよね』
　「いいえ、変わってしまうのよ」
　『でも、きっときっと、優しさに支えられてる』
　「それはね、変わってしまったからよ。すべてが変わったから、強くなったからだよ」