隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1299.遠隔推理 氷室想介の事件簿

2012年12月01日 | サスペンス
遠隔推理
読 了 日 2012/11/27
著  者 吉村達也
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 327
発 行 日 2004/10/20
ISBN 4-334-73764-1

 

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の住んでいる 木更津市の周辺には、BOOKOFFの店舗が3か所ある。木更津、君津、袖ケ浦の三市に一か所ずつだ。
同じBOOKOFFながら、当然のごとく少しずつ品揃えは違う。だから時に応じて僕はそれぞれの店舗を訪れて、読みたい本を探す。一 番多くいくのは場所柄木更津市の店だが、売りに行くのは圧倒的に袖ケ浦市の店である。
何となくそこが一番高く買ってくれるという気がしているからだ。多分それは僕の思い込みなのだろうが、一度そういう思いを抱 くと、毎回処分するのはこの店だということで、利用している。この三店は距離的にも近いから、どの店に行くにしても時間も大 した違いはない。
というようなことで、先日しばらく行かなかった君津店で、本書を見かけてタイトルも気になり、初めての作家ということもあり 買ってきた。

 

 

衝動買いは時によってがっかりする内容のものもあるが、本書は全体に面白 く読んだ。
主人公の氷室想介は精神分析医(サイコセラピスト)で、巻末の著作紹介によればシリーズ作品が多く著されているようだ。ここ では下記の初出一覧のように8編の短編で構成されている。
氷室想介は、毎回事件に関わるわけではないが、各編の末尾では事件に関わった人物の心理分析などが彼の口から語られて、あた かも実在のセラピストが事件関係者の心理分析をしているかのごとく感じられて、ドキュメント風の雰囲気を漂わせる。
最初のエピソード「シザーズ‐鋏‐」は女子中学生が担任の教師によって殺害されるという事件だ。この事件では途中で教師の独 白があって、犯人であることがあっさりと明かされるところは倒叙ミステリーの様相を示すのだが、事件を追求する刑事との会話 が刑事コロンボを思わせる展開で興味深い。
八つのストーリーはそれぞれ異なる展開を示して、先述のごとく倒叙ミステリーもあれば、オカルト風や、中には蒲団のように謎 の提示編と解決篇に分けられて、読者への挑戦を試みたものまであって、ちょっとしたミステリー博覧会だ。

 

 

通して言えるのは、形は変わってもいずれも最終的には、論理的に謎を解明するという本格ミステリーをなしているところが好ましい。その代表といえるのが表題作ともなっている「遠隔推理」だ。タイトルから類推出来るように、遠く離れた場所の事件のデータを送ってもらうことで、氷室想介が推理するという1篇だ。形を変えた安楽椅子探偵である。
そうかと思えば、「鏡の中に悪魔が見える」や、「心霊写真」のように、一読オカルトめいたスタートはどんな結末になるのだろ うと、期待を持たせながらやはり明快な解決を見せる。しかし、個々の収められた8編(7編)の作品は、どれもが追い詰められた 人間を事件に奔らせるという設定で、加害者にも同情の余地があるというストーリーとなっている。
まあ、僕にとってはそんなことより、明快な論理で事件を解明するというほうに、興味を惹かれるのだが・・・・・。

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 シザーズ-鋏- 小説新潮 1998年6月号
2 鏡の中に悪魔が見える 小説宝石 1998年3月号
3 夏を抱きしめて 小説宝石 2001年10月号
4 蒲団-謎の提示編- 小説宝石 1998年12月号
5 蒲団-謎の解明編- 小説宝石 1999年1月号
6 深夜バスの女 小説宝石 2001年6月号
7 遠隔推理 小説宝石 2001年2月号
8 心霊写真 小説宝石 1997年8月号

 

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