隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0879.キングの身代金

2008年04月27日 | 警察小説
キングの身代金
KING’S RANSOM
読了日 2008/04/027
著 者 エド・マクベイン
Ed McBain
訳 者 井上一夫
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 302
発行日 1995/04/15
ISBN 4-15-070761-8

 

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和38年、僕は結婚したこの年に、黒澤明監督の「天国と地獄」を見て、原作といわれる本作を知り、いつかは読んでみようと思いつつ45年が過ぎた。
映画は後にビデオや、DVDとなってレンタル店に並び、いつでも見られる環境となって、僕も数回見直している。
昨年(平成19年)には、この名作映画がテレビドラマとしてリメークされ、いよいよ原作となったこの作品を読まなければという気になった。

 

 

この作品は、著者の代表作である警察小説”87分署”シリーズの中の1冊であることはファンなら誰でも知るところだが、テレビドラマでお馴染みのシリーズ作品とは少し趣向の違う作品だ。
87分署の個性的な刑事の面々が活躍するアメリカ版「七人の刑事」とも言えるテレビドラマ”87分署シリーズ”での、ロバート・ランシング扮するところの、スティーブ・キャレラ刑事や、ノーマン・フェルのマイヤー・マイヤー刑事は登場するものの、本作の主役は、身代金を要求される製靴会社の重役・ダグラス・キングや、誘拐犯グループの方だ。映画となった「天国と地獄」と、原作の本作の一番の違いは誘拐犯側が長く細かに描写されているところだろう。

 

 

っとも、黒澤監督がこの作品から引用したのは、誘拐犯が重役の息子と思って拉致した子どもが、運転手の息子とわかっても、身代金を重役に要求するところだった。つまり誘拐するのは誰でも誘拐劇は成立する、ということなのだ。
映画では身代金の受け渡しに関する誘拐犯の緻密な計画と実行が、緊張感溢れる場面となっていたが、本作でも、それに関して序盤からいくつかの伏線ともいえるエピソードが添えられて、誘拐犯側のよく練られた計画が終盤で描かれる。
序盤の方は映画の場面を思い起こさせるが、中盤以降は映画とは別作品の面白さが充満。
黒澤監督の、特に娯楽作品については、別の機会にまた書くことに。

 

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