隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1433.酔いどれ小籐次留書 御槍拝借

2014年02月01日 | 時代ミステリー
酔いどれ小藤次留書 御鑓拝借
読 了 日 2014/01/24
著  者 佐伯泰英
出 版 社 幻冬舎
形  態 文庫
ページ数 330
発 行 日 2004/02/10
ISBN 4-344-40484-X

 

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いもので、この間年が明けたと思ったら、もう2月だ。物忘れの多い僕は、去年のことなど憶えていないが、このところの気温の変化は例年のことなのだろうか。三寒四温と言うのはもう少し先のことだと思っていたが。
それにしてもこうした気象状況が少しは係っているのだろうか? インフルエンザの流行や、ノロウィルスの蔓延が伝えられる昨今、外に出ることがはばかられて終日部屋にいることが多くなった。
まあ、家にいる分には金もかからないし、貧乏暮らしの僕には丁度いいのだが・・・・。

多くの著作を発表している著者・佐伯泰英氏については、以前NHKテレビの「週刊ブックレビュー」と言う番組にゲスト出演しているのを見て知った。まだ存命中だった児玉清氏がMC(Master of Ceremony 簡単に言えば司会の事だが、近年この言い方が定着している)を勤めていたころだった。
それほど前のことではないが、ミステリー以外の時代物は興味がなかったから、インタビューの内容も記憶 に残っていない。

だが、児玉氏が著者のファンだと言うことで、話がだいぶ盛り上がっていたことは憶えている。時代物と言え ば、子供の頃―多分小学生高学年から中学生にかけての頃だったと思う―一時期講談物に熱中したことが有って、後藤又兵衛とか荒木又右衛門、柳生十兵衛はたまた堀部安兵衛などなど、片っ端から読み漁った。
その頃だったと思うが(若しかしたら時期がずれているかもしれない)、東映が中村錦之助(後の萬屋錦之助)、東千代之介、大友柳太朗など各氏の出演で、「笛吹童子」とか「紅孔雀」といったどちらかと言えば若年層向けの娯楽時代劇を制作して、人気を誇っていた時代だ。そういえばあの頃は東映時代劇が隆盛だったな。

 

 

この「御鑓拝借」がNHKでドラマ化され放送したのが、昨2013年1月1日だった。NHKのコマーシャルメッセージとも言うべき、ドラマの予告編があまりにも面白そうだったから、普段時代物はミステリー以外あまり見ないのだが、ついつい誘いに乗って見た。まあ、一つには主演の竹中直人氏に惹かれたということもあったのだ。
大ファンと言うわけではないが、彼の演技には何か人を惹きつけるものがある。以前NHKの大河ドラマ「秀吉」も毎週見るつもりはなかったのに、彼の演技に釣られて、とうとう1年間全編見通してしまった経緯がある。
そして今回も、やはりこの主人公は竹中氏でなければ、という思いを深くした。そんな印象深いドラマだった ので、僕はつい先だって見たと言う感覚だったのだが、データを見たらもう1年も前だったことを改めて確認した。いつものことながら時の流れの速さに驚く。そしていつか原作を読もうという思いも持ち続けていた。それこそつい先だってBOOKOFFでたまたま105円の文庫棚で本書を見つけて買ってきたのだ。

このシリーズはNHKでその後連続ドラマとして昨年6月から1クール放送されたから、一層人気が高まって、BOOKOFFでもなかなか安くならなかったのだろう。現在はこの文庫も新装版が出ており、僕の買ったのは古い版なので安かったのだろう。

ドラマだろうと映画だろうと、あるいは本であっても、僕が内容を覚えているのはそれほど多くない。メモリー容量がそれほど多くないと言うことか。そのうちコンピュータのように、人間の脳にもメモリーを増設できるようになって、必要な情報をいつでも取り出せるようになるといいか? いや、やはり忘れることができるのが人の記憶の長所でもあるのだから、今のままで良いか。

 

 

書は、豊後森藩下屋敷の厩番である主人公の赤目小藤次が、普通なら目通りかなうはずのない藩主・久留島通嘉とが邂逅する。
そこで、小藤次は藩主が江戸城中で他藩の大名たちから辱めを受けたことを知ったのだ。
その辺のところはドラマでも原作の雰囲気を損なわず、描かれていた。
そして軽輩の身ながら小藤次は主君の雪辱を心に誓い、大酒の催しに出て藩主の参勤交代のための国表への出立の見送りを欠席して、お役御免を言い渡され自らを浪々の身とするのだ。江戸から出た参勤交代のための大名行列を次々と襲って、その象徴とも言うべき槍の穂先を奪う小藤次の胸のすくような殺陣が続く。

だが、この物語の読みどころのもう一つは、やはり小藤次の主君への思いだろう。実は小藤次は現在の主君・久留島通嘉の父親である先代の藩主・久留島通同(みちとも)に、命を助けられたことがあるのだ。
二代に渡る藩主に仕えた小藤次は、先代のお子である主君への思いはまた格別で、そうした思いが命を懸けた「御鑓拝借」の報復に奔らせたたのである。藩主・久留島通嘉のやさしさは、終盤においても小藤次に向かって示され、感動的な結末を迎える。

 

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