隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1081.新本陣殺人事件

2010年08月01日 | 本格
新本陣殺人事件
読 了 日 2010/7/10
著  者 若桜木虔/矢島誠
出 版 社 河出書房新社
形  態 単行本
ページ数 385
発 行 日 2001/7/20
ISBN 4-309-01419-4

 

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しい共著の本である。珍しいのは共著ということではなく、二人の作家が連名で出しているということか。そうした例を僕はあまり知らないが、ほかに具体的に知っているのは1冊だけ、まだ読んではないが、東京創元社から出ている「合わせ鏡の迷宮」が、愛川晶氏と美唄清斗氏の共著という形だ。
本書は10年以上前に、スカパーに加入したばかりの時に、ミステリチャンネル(現在のAXNミステリー)のプレゼントに応募して当選したもので、横溝正史氏のファンである僕はぜひ読んでみたいという思いで応募したのだが、いざ運よく手に入ると棚に入ったままになってしまった。
例によって僕の天の邪鬼な性格のせいか、実物を手にしたら何となく、胡乱下な感じに思えてきてしまったのだ。馬鹿な話だが、今までにも何度かそういうことがあって、読みたい欲求から書店で購入した本でさえ、読まずに放っておいた本もいくつかある。
前にもどこかで書いたが、僕はそうして読まずに積ン読のままの本が他にも多数あって、気まぐれの読書態度を物語っている。少しずつ消化していこうという気はあるのだが、何時になることやら・・・・。

 

 

そんな経緯を経てきた本だが、読み始めて見ればごく普通の本格ミステリー、というより探偵小説といった方がいいか。別に古き時代の探偵小説に特別の思いがあるわけではないが、少年時代にそうした古い時代を経てきた者としては、その時代を思わせるような探偵小説に懐かしさを覚える、ということだけだ。
だが、本書はそうした懐旧の情を蘇らせるのではなく、不可能犯罪の出現が物語に引き込む。
雪に閉ざされた密室が同時に2か所に出現する、という幕あきだ。
他にも本書のような設定、あるいはシチュエーションといった方がいいか?があったかどうか、ちょっと思い浮かばないが、二か所で発生した雪の密室に、それぞれ一組ずつの男女がメインキャラクターとして関わっていくという筋書きだ。簡単に言ってしまえば二つのストーリーを合体させたようなものだ。

 

 

の辺が二人の作家の共同作業ということなのか?
それでも、展開としてはオーソドックスなミステリーを形成しており、二組の素人探偵も不自然ではない活躍を示していく。
さて、3月雪の静岡で最初の事件は発生する。雑誌「旅行」のカメラマン酒匂薫は、扶桑新聞の社会部記者である甘宮洋幹を伴っての古くからの大名の宿場であった静岡県由比町の由比本陣を取材のために訪れる。由比本陣の当主・神谷孝範は元文部科学省の事務次官を務めた人物だった。だが、広大な屋敷の施錠された離れで彼は死体で発見された。
現場の離れ屋敷は内側から施錠されていたばかりでなく、周囲に降り積もった雪には足跡もなかった。
一方、東京の杉並区久我山にある聖華女学院の体育館内でも首つり死体が発見された。発見者は西東南(さいとうみなみ)、週刊誌「女性の広場」の契約記者だった。そして死体は学院長の蒲原善吉郎、西東南がその日取材を約束していた相手だった。
珍しく昨夜から降った雪が、ここでも密室を形成していた。
こうした二つの事件が捜査段階で類似した状況と、被害者同士の関係などから同一犯の可能性を追求することになるのだが…。
静岡の事件を追う恋人同士コンビの甘宮洋幹と酒匂薫(甘党と辛党の名前か?)、東京の事件を追いかけるのは、西東南と未だ恋人未満の警視庁浜田山警察署の警部・小中大(こなかひろし)(こちらは方角と大小を現す二人の名前だ)。ふざけたような二つのコンビの名前だが、内容はふざけていない。本格ミステリーの常道を行く、ストーリー構成に読む方としても捜査陣とともに頭を悩ませることになる。

 

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