隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1546.逃げる幻

2015年10月03日 | 本格
逃げる幻
The One That Got Away
読了日 2015/05/05
著 者 ヘレン・マクロイ
Helen McCloy
訳 者 駒月雅子
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 326
発行日 2014/08/22
ISBN 978-4-488-16809-4

 

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名な米国のミステリー作家のようだが、僕は知らなかった。東京創元社のメールマガジンの紹介を見て、なぜか心惹かれるものがあって、いつか読もうと思っていた。詳しい解説は読まなかったが、「少年が消える」というような言葉が目に入り、内容とは少し違う想像をしていた。
巻末の著作リストによれば、本書は1945年の作品だそうだ。ということは昭和20年だから終戦の年だ。このストーリーの探偵役である精神科医・ベイジル・ウィリングのシリーズだけでも7作目であることがわかる。さらに、マクロイ女史は1994年に生涯の幕を閉じるまでに、31もの著作を発表していることを知り、改めて僕の情報量の少なさに驚く。
そうしたことはこれから後まだまだ出てくるだろうと、楽しみにするしかない。しかし最近は、たびたび書いているように、記憶力や集中力の減退に伴い、海外作品を読むのが多少苦手になってきている。若いころは翻訳物は他人の名前が覚えられなくて好きではない、などという人がいて僕は不思議に感じていたのだが、今自分が似たような状態になって、なるほどなどと思うことがおかしい。

 

 

そんなことを言っても、まだまだ読み残している海外作品の数は多く、ミステリーファンとしては是非読んでおく必要があるのだ、といった義務感のようなものを感じている。
今ではあまり見ないが、昔は何かというと海外ミステリーベスト10あるいはベスト30といった企画のもとに、出版社が作品を刊行するということがあった。貧乏で小遣いもままならなかったから、自分で稼ぐようになったら、そうしたミステリーを片っ端から読もう、などと常々思っていたころが懐かしい。
今のように比較的安い価格で、欲しい本のほとんどが手に入るような時代が来るとは思いもしなかったことだ。 僕にとってはそのころと貧乏さはあまり変わらないのが残念至極だが・・・・。

 

 

書は僕が期待していたストーリーとは違っていたが、謎を追う本格ミステリーであることの面白さは、存分に発揮しており、少し毛色の変わった名探偵・ベイジル・ウィリング博士の推理も素晴らしい。
アメリカの軍人、ピーター・ダンバー大尉が訪れたハイランド地方で、地元の貴族ネス卿の娘・マーガレットから不思議な話を聞く。何度も家出を繰り返す少年が、荒野の真ん中から姿を消したということだ。少年はジョニーと言って、小説家エリック・ストックトンの息子だった。
そのジョニーを発見したダンバーは、少年の目に恐怖が宿っていることに気づく。なぜ、少年は家出を繰り返すのか、ネス卿から意見を求められたダンバーは、「環境に問題があるのでは」と答えるが、ネス卿は家庭環境には全く問題はない、という。そして、思わぬ事件が勃発する。時代はまだ戦時中のことで、荒野の中に位置する田舎を舞台に、起きた密室殺人と人間消失の謎に、ベイジル・ウィリング博士が挑む。

 

 

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