隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1245.アンダルシア

2012年04月28日 | サスペンス
アンダルシア
読 了 日 2012/04/24
著  者 真保裕一
出 版 社 講談社
形  態 単行本
ページ数 330
発 行 日 2011/06/09
I S B N 978-4-06-217027-7

 

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交官・黒田康作シリーズの第3弾。このシリーズは映画化、ドラマ化どちらもされており、面白いのは映画やドラマと小説とが、部分的に異なっているところだ。
人気俳優の織田裕二氏のはまり役で、スマートなアクションと、間合いのいいセリフ回しがドラマを引き立てていた。 本作の映画はまだ見ていないので、近いうちにTSUTAYAでDVDかブルーレイ・ディスクでも借りてこようかと思っている。
市内の精文館書店と併設されているTSUTAYAでは、旧作のDVDがすべて100円というレンタル料になったので、見たい作品がいくつかあるのだが、億劫でなかなか足が伸ばせない状態だ。歳は取りたくない。
このシリーズが僕の興味をひく要因の一つに、海外を舞台にしているということがある。 海外を舞台とした小説は今までにもたくさん読んできたが、中でも平岩弓枝氏の北欧を舞台とした作品などに、異国情緒を感じて、まだ見ぬ国への郷愁に似た思いを抱いたものだった。
このシリーズにも映像を見たことで、平岩作品とはまた違う海外への憧れを感じて、(と言ってもそこに住みたいとか、行ってみたいということではないのだが)読み続けてきた。

 

 

もしかしたら、主人公の黒田康作のように国際舞台を股にかけた、活動的な仕事への憧れかもしれない。いやいや今の僕にとっては、ただ単に仕事を持つということに対する欲求かもしれない。まあ、どんなことであれ読むことによって、多少なりともカタルシスを感じられれば、しばしの満足感を得ることができるというものだ。
何と言ったって、僕の読書は純粋に娯楽のためなのだから。最初の「アマルフィ」の映画の予告編が当時何度となくテレビで流されていたのをたまたま見て、否そうではなかった、メーキングだったか!
好きな女優さんの一人、天海祐希氏の主演であるということも手伝って、興味深く見た。映画撮影の常だが、何度も階段を駆け昇るシーンのリハーサルが繰り返される模様を見て、「俳優さんも体力勝負だな」という感想を持った。
DVDを借りて見ようと思っていた時、テレビで放送があって何か得したような気分で、じっくりと見た。

本書も「アマルフィ…」と同様に欧州を舞台としたサスペンスドラマだ。今回の舞台はスペインはアンダルシア。タイトルはアンダルシアとなっているが、世界地図を眺めるとスペイン南部の地中海に面した地方をアンダルシーアと呼ぶようだ。
余計なことだが、僕は該博な知識の持ち合わせはないから、読書の際は国語辞典を始め、英和辞典、外来語(カタカナ語)辞典、時に和英辞典などをわきに置いている。翻訳小説や海外を舞台とした作品を読むときは、世界地図なども用意する。

 

特に最近はなんとなくニュアンスとしては判っているような外来語が、小説の中に多く登場するようになって、この際正確な意味を知っておこうと辞書を引く。すると意外にも思っていたことと違う意味の言葉もあって、辞書は欠かせなくなっている。地図もしかり。特にヨーロッパは隣国と地続きの国が多いから、その配置を知るだけでも、物語の面白さが変わってくることも多いのだ。

 

 

れはさておき、そういう設定だから仕方がないが、本編でも外交官・黒田康作は自ら窮地に立ち入ってしまうストーリー展開だ。
導入部分では、麻薬取引に利用されスペイン警察に捕獲されたた若い日本人男性に、司法取引を承諾させることによって国際間の政治的決着を見せる、 という鮮やかな黒田康作のお手並みを披露するシーが描かれる。
だが、アルゴン(スペインの北に面しピレネー山脈のふもとにある国)という国からかかってきた若い女性の電話が元で、 またしても黒田は危ない橋を渡ることになるのだ。かすかな疑問を持ちながらも、女性の言葉を信じて、アルゴンから車でスペインへと女性を連れ出す。 ところが、アルゴンの貸別荘で中年男性の他殺死体が発見されて、彼の携帯電話の通話記録には、女性の番号が残っており、 死体がフランス警察への情報提供者だったことから、女性はフランス・アルゴン両国の警察から容疑者として追われることになる。

毎回思うことだが、公務員いや官僚といったほうがいいか?にも拘らず、自ら火中の栗を拾うかのごとき行動に奔る黒田康作の存在感に圧倒される半面、 優秀な頭脳と行動力を持つ人間が、軽率に過ぎるのではないかという思いもよぎる。女性を伴ってスペインに乗り込んだ黒田の活躍は、今風(というか、 ハリウッド映画的といったほうがいいか)な映像的な見せ場を展開するが、女性の秘めた謎は奥が深い。

そこがこのシリーズの面白さなのだが、実際にこんな人間が外務省にいたら、周囲の人たちは迷惑するだろうなと考えると、可笑しい。 まさにノンストップアクション&サスペンスは今回も顕在だ。
映画の方はどうなっているのだろう? まだテレビでは放送されないのかな?

 

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