隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0574.四万人の目撃者

2005年05月31日 | サスペンス
四万人の目撃者
読 了 日 2005/03/31
著  者 有馬頼義
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 302
発 行 :日 1988/03/20
ISBN 4-334-70706-8

 

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の本も若かりし頃一度読んだ本だ。映画化もされており、そちらも見ている筈なのだが、佐田啓二氏(俳優・中井貴一氏の父)の顔は思い浮かぶのに内容はさっぱりだ。45年も前のことだから仕方がない。

プロ野球チーム・セネターズのスタープレーヤー・新海清が走塁中に突然倒れ、絶命する。
試合を見ていた東京地検の高山検事は、翌日の新聞記事を見て新海の死に不審を感じる、という発端から、世田谷署の笛木刑事と共に事件ともいえない事件に地味な捜査活動を続けていく。
ストーリーの展開として、多分、新海選手の死は殺人事件なのだろうと思うのだが、本当のところ、これが事件なのかどうかということさえ、作中の人物たちには判ってこないのだ。そうした展開にもかかわらず読むものをとらえて話さないのは作者の筆力であろう。

昭和33年に週刊読売に連載されたとのことだが、僕が高校を卒業する年だった。
この時期には、かの松本清張氏の「眼の壁」も同じ週刊読売に連載された。本作は日本探偵作家クラブ賞(現在の日本推理作家協会賞)を受賞している。また、松本清張氏の推理文壇への登場により探偵小説から、社会派推理小説へと変貌を遂げるスタートの時となる。
有馬氏のこの作品は、一検事の不審に思う事柄から、事件解明までの気の遠くなるような隠れた捜査が、正に推理小説と呼ぶに相応しいストーリだったのではないかと、今読んでも思うのだ。

 

 

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