八月の獲物 | ||
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読了日 | 2008/9/21 | |
著者 | 森純 | |
出版社 | 文藝春秋 | |
形態 | 文庫 | |
ページ数 | 358 | |
発行日 | 1999/8/10 | |
ISBN | 4-16-728102-7 |
成8年度、第13回サントリーミステリー大賞を受賞した本作は、当時ドラマ化されたほうをテレビでいち早く見てしまったので、手元にありながら、なかなか手を出せずにいた。 文庫カバーの折り返しにある、著者の略歴を見ると、気の毒なことに森純氏は1999年1月に肝不全でなくなったという。48歳の若さで。
さて、読み始めて間もなくドラマとはわずかに違う雰囲気だと気づく。もっとも僕は見たとは言いながらドラマの半分以上は忘れているから、その感じは気にせず読み進める。
「あなたに十億円差し上げます。」というチャリティの広告が東都新聞の下段に三段ぶち抜きの広告が掲載されて、世間を騒がせるところから物語は始まる。広告主はヘルス協会という、八王子市の資産家向けの有料老人ホーム、ビバリー・オーク八王子に事務所を置く団体だった。代表の桶狭間権兵衛(ごんのひょうえ)という老人は、かつて世田谷で農業を営んでいたが、バブルの絶頂期に自分名義の土地建物を売却して得た財産をそのチャリティに充てるようだ。
そのとてつもないチャリティに疑問を抱いて、その裏にある企みを暴こうとするのが、太陽テレビの報道番組・ニューススピリッツで人気キャスターの心理学者の降居東と、若き女性ディレクターの正木玲子のコンビ。
さらに、警視庁公安部に籍を置く定年間近の老刑事・薮田らが、胡散臭さの真相を探ろうとする。
そうした状況の中で、多数の応募者から抽選で選ばれた3人の寄贈者の一人が駅のホームから転落して、電車に撥ねられて死亡するという事件がおきた。
事故か?他殺か?
やはり、前半で感じたとおりテレビドラマとは別の物語であった。こうした長編ミステリーを正味1時間30分のドラマにするのは多分に無理があるのだろう。まあ、ドラマにはドラマのよさがあるのだが、僕はミステリーとしては、こちらの原作の方に軍配を上げたい。1996年はもう平成8年だが、戦争によって心にも傷を負った人々の物語が、まだまだ生まれて受け入れられる素地があることに感慨を催す。
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