隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0416.銀行総務特命

2003年08月16日 | 金融
銀行総務特命
読了日 2003/8/16
著 者 池井戸潤
出版社 講談社
形 態 単行本
ページ数 348
発行日 2002/08/10
ISBN 4-06-211269-8

 

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著者の江戸川乱歩賞を受賞作「果つる底なき」(113.参照)を読んだときは、銀行の内部事情や、サスペンスあふれるストーリー展開に胸躍らせたが、本作ではそうした様子が短編連作で、凝縮されたがごとくに衝撃的だった。
木更津市立図書館に通ううちにこの本が目に付いて借り出した。
昔、外房の港町に住んでいた頃、勤めていた会社の業務で銀行通いをしていて、銀行の同年代の人たちとも個人的に付き合うようになり、閉店後の銀行の宿直室に遊びに行くことも度々あった。そういうこともあり、著者の銀行ミステリーにはことさら興味深いものがある。

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本作は、大手都市銀行・帝都銀行本部総務部の特命担当と言う指宿修平を主人公とする連作で、銀行内部に発生する様々なトラブル、不祥事を調査する物語だ。こんなにも沢山の事件が発生するのでは安心して銀行に金も預けられないと言う感じだが、フィクションとは言え、経歴にものを言わせた著者の作にはリアリティがある。
まあ、近頃は現実の社会でも大手都市銀行といえど大量に抱えた不良債権の処理で、フィクションを凌ぐトラブル続きのようだが・・・。
この作品では、そうした不祥事やトラブルを究明し、解決へと導く指宿修平と、途中から彼のパートナーとなる唐木玲、二人の活躍が描かれる。彼ら主人公二人のキャラクターが非常に魅力的で、それもストーリーを面白くしている大きな要因だ。

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収録作は、ある名簿を扱う業者から、銀行の顧客リストを売りたいと言う男の存在を知らせる電話が銀行に入る・・・「漏洩」
経営破綻した融資先の企業で発覚した使途不明金。だが、一部が何と裏金としてぎんこうにわたっていたらしい・・・「煉瓦のよう」
アダルトビデオに銀行員の女性が出演しているらしい。本人を特定するため人事部から特命の女性が参加することになった・・・・「官能銀行」
銀行支店長の妻と娘が誘拐された。当の支店長は犯人に心当たりがないと言うのだが・・・・「灰の数だけ」
一般職の女子行員がストーカーの被害者に。犯人は同じ銀行の男子行員だと思われた・・・・「ストーカー」
不正取引を行ったトレーダーが調べに対し「特命」から狙われたので被害が大きくなったと言う・・・・「特命対特命」
相次いで謎の男に襲われた銀行の支社長二人。双方共に以前同じ支店に勤務していたことがあった・・・・「遅延稟議」
身寄りのない老女に、熱心に預金の預け替えを勧める若い銀行マン・・・・「ペイオフの罠」
以上8話。




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