隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1307.人喰い

2012年12月25日 | サスペンス
人喰い
読 了 日 2012/12/17
著  者 笹沢佐保
出 版 社 徳間書店
形  態 文庫
ページ数 284
発 行 日 1991/03/15
I S B N 4-19-569279-2

 

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本推理作家協会賞の受賞作である本書は、以前から読みたいと思って買っておいた本だ。何時ごろ買ったのかは覚えていないが、BOOKOFFの定価ラベルが105円ではなく、100円となっているところを見れば、相当前だったことが分かる。
例によって、読むのが後回しになったのは、もっと他に読みたい本が出てきたからだろう。気まぐれの読書は、たくさんの本の間をさまよう。出版界が不況を伝える中でも、僕にとっては次々と出てくる新作ミステリーになかなか追いつけないでいる。まず第一に経済という大きな壁が立ちはだかっており、第二に加齢による?読む速度の衰えなどが原因だ。経済的な問題はいかんともしがたいが、読む速度は読書に専念すればある程度は補えるのだが…。
読書人の中には1日1冊以上という読書量を誇る人もいるが、僕にすれば驚きの一言だ。
いまのところ、買い貯めた2~300冊の本を残りの人生で消化できるのかが、当面の課題だ。新作を読まなければ2~3年でそのくらいは読めるのだろうが、新しい本も読みたくなるのは必至で、悩ましい問題だ。

 

 

さて、笹沢氏は多作家としても知られており、そうした作家の本をどちらかといえば敬遠している僕が、何冊も読むのはやはりサスペンス作家としての上手さからだろう。高々2冊や3冊で、作家を評価するなどおこがましいが、若いころこの著者の作品はいくつか読んでおり、本格探偵小説をサスペンス豊かに表現するストーリーに感銘したこともあるのだ。
この読書記録を始めてからは、NHKテレビドラマで見た「危険な協奏曲」(「危険な隣人」をもとに脚色したドラマ)で、笹沢氏の原作を知り読んで、改めてサスペンス小説の醍醐味を感じた次第だった。もちろん原作とドラマとでは印象の異なる部分もあるが、小説と違ってドラマや映画では、映像で見せることが主力となる表現だから当然のことだろう。
そうしたことを心得ていれば、原作のドラマ化では両方を楽しむことができるというものだ。
本書もテレビドラマになっている。1961年、1970年、1985年と3回もドラマ化されているということが、小説の面白さを表しているのではないか。残念ながら僕はそのどれも見てないのだが、そのうちCS放送ででも放送されるときがあったら、見たいと思っているが、多分儚い望みだろうナ。

 

 

城由記子、佐紀子の姉妹が辿った数奇な運命がこの物語の主軸である。「佐紀子ちゃん」という書き出しの、姉・由記子が妹にあてた手紙の文面からストーリーはスタートする。
花城由記子は勤務先の会社、本多銃砲火薬店の本多昭一と結婚を前提とした交際をしていた。昭一は会社のワンマン社長・本多裕介の息子だった。だが、お決まりも如く、昭一との結婚は周囲の反対により難しかった。そうした状況を記した手紙は、昭一の子供を身籠っていた由記子が、昭一とともに死への旅路を前にした遺書だったのである。
やがて、山梨県の昇仙峡で昭一の死体が発見される。しかし、ともにいたはずの花城由記子の死体はそこになかった。
心中したのではなかったのか?事件は意外な方向に展開を見せる。
今となってはかなり古さを感じさせる時代背景だが、本格ミステリーに恥じない結末を見せるストーリーは、先行きを予断させない成り行きを示す。独善的な社長の会社運営に対抗して、労働組合が立ち上がる姿が描かれるところなどに、この時代の社会情勢を感じさせて、そうしたこともミステリーの伏線となっているところが、このストーリーの面白さとなっている。

 

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