隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0326.不条理な殺人

2003年01月19日 | アンソロジー
不条理な殺人
読了日 2003/1/19
編 者 法月輪太郎
出版社 祥伝社
形 態 文庫
ページ数 406
発行日 1998/07/20
ISBN 4-396-32641-6

 

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加納朋子恩田陸近藤史恵の3氏の作品が読みたくて買ったのだが、考えて見ればアンソロジーはむしろ知らない作家の作品を読むということを目的にした方がいいのかもしれない。
恩田陸氏も前に読んだアンソロジーで知ったのだから。

加納朋子氏の「ダックスフントの憂鬱」を読んで、映画だったか、テレビだったか忘れたが、俳優かタレントだったか、が、「子どもと動物の出る話には出たくない」ということを言っていたのを思い出した。つまり、映画や、ドラマで動物や子供が重要な役割を果たす話だと、主役の俳優でも、子どもや動物に喰われてしまうということなのだ。
僕も映画やドラマが好きなので、たまにそうしたものを見ていると、作為の無い純粋な子どもや、動物の演技ともいえない場面を見ていると、感動することがある。映画や、ドラマだけではない。小説でも言えることだ。

この話は、中学生の大宮高志が動物の飼えない団地住まいなので、友達の三田村美弥のところで飼ってもらうことにした、拾った猫が何者かに後ろ足を刃物で切られたという発端だ。
その後も同じように飼い猫や野良猫が同様の怪我をする事件が相次ぐ。
このストーリーを読んでいて、感心するのは、宮部みゆき氏の作品でも感じることなのだが、子どもたちの会話が生き生きとしており、いかにも子どもらしいところだ。そうした上手さは少し前にWebで発表された短編「モノレールねこ」という作品でも感じたのだが、やはり男の子の会話がいかにもそれらしく好感の持てるものだった。
さてこの事件は賢い中学生、大宮高志君の奮闘で全面解決とは行かないまでも一応のけりがつくのだが・・・。これも一つの安楽椅子探偵ものと言っていいのではないかと思う。
恩田陸氏の「給水塔」には、六番目の小夜子(298参照)に出ていた脇役、主人公・関根秋の父親・関根多佳雄が登場する。
また、近藤史恵氏の「かぐわしい殺人」は、梨園の名探偵・今泉文吾の活躍である。タイトルに注目といった作品だ。

 

初出誌(月刊「小説NON」)
# タイトル 著者 発行月号  
1 モルグ氏の素晴らしき
クリスマス・イブ
山口雅也 1996年3月号  
2 暗号を撒く男 有栖川有栖 1997年2月号  
3 ダックスフントの憂鬱 加納朋子 1996年6月号  
4 見知らぬ督促状の問題 西澤保彦 1996年12月号  
5 給水塔 恩田陸 1996年1月号  
6 眠り猫、眠れ 倉知淳 1997年7月号  
7 泥棒稼業 若竹七海 1997年7月号  
8 かぐわしい殺人 近藤史恵 1998年3月号  
9 切り取られた笑顔 柴田よしき 1997年11月号  
10 トゥ・オブ・アス 法月輪太郎 1998年6月号




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