合わせ鏡の迷宮 | ||
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読 了 日 | 2012/05/14 | |
著 者 | 愛川晶/美唄清斗 | |
出 版 社 | 東京創元社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 285 | |
発 行 日 | 1996/07/25 | |
ISBN | 4-488-01278-7 |
分前に買っておいた本だが、いつだったかは思い出せない。多分、愛川晶氏の「化身」を読んで、感動してほかの作品も読んでみようと思っていた時、たまたま古書店で本書を見かけたのではないかと思う。
そんな風にして手に入れた本が、とんでもなく後回しになることは、僕の場合珍しくない。要するに移り気なのだ。とにかく、過去に読もうと思って買って、そのままになっている本が200冊はくだらないだろう。少しずつでも読んで、消化して処分しないと、カミさんの言いぐさじゃないが「本の重さでうちが傾く!」なんてことにもなりかねない。
まさか、200や300冊の本でうちが傾くこともないだろうが、少しは新たに買うことも控えないと。時々そうは思うのだが、話題の新刊にも気を取られて、わが身をコントロールするのも難しい。
すでに職を退いてからかなりの月日が経つと思うが、東京創元社にはかつて古今東西のミステリーに造詣の深い編集者・戸川安宣氏(後に編集長を経て東京創元社の社長も務めた)がいて、海外ミステリー専門の東京創元社から、国内ミステリーの発掘にも力を注いで、鮎川哲也賞の創設など各方面で活躍していた。
僕はミステリーを通してしか知らないが、作家の中にも戸川氏のファンは少なくないのではないか。本書もその戸川氏が「はじめに」ということでこの本の成り立ちなどを紹介している。著者の名前が二人になっているように、愛川晶氏と美唄清斗氏の合作による「合わせ鏡」を中心に、二人の短編とエッセイとを収録した作品集である。
美唄清斗氏は愛川氏が「化身」で鮎川哲也賞を受賞した時、「由仁葉は或る日」という作品を応募して最終候補に残った作家だそうだ。残念ながら受賞は逃したものの鮎川氏の賞賛を得て、東京創元社から創元クライムクラブの1冊として刊行されている。
注目すべきは、美唄氏は全盲の作家であること、パソコンと音声認識ソフトを使っての執筆ということだ。また、盲人という健常者から見ればハンディと思われることを逆手に取ったトリックを使ったストーリーを考えるなど、ミステリーへの取り組みが評価されているようだ。
書の中では、愛川氏の短編「詐欺師の白い杖」が、盲人の主人公を扱っており、その着想を美唄市がほめている。中心となっている合作の中編「合わせ鏡」の中でも、兄弟の一人が全盲という設定でのストーリー展開が、そこらじゅうに伏線を張り巡らせながら進展する。
ストーリーの進行上、嫌な人物描写もあり、あゝ、そうだこれを書くとネタバレになる。注意深く読めば、僕には無理でもミステリーファンなら、トリックに気付くかもしれない。最近読んだ作品の中には、叙述トリックと呼ばれるものが何点かあって、その本の記事ではこれは叙述トリックだ、などとは書けないから、説明に難しいが、この「合わせ鏡」も一種の叙述トリックと言っていいかもしれない。
これだけではネタバレにならないところも、この作品の面白いところだ。
後半の謎解きが始まって、それまでの伏線が明らかになっていく過程が、「やられた」と思わせて、ミステリーの面白さを感じさせるのだ。僕の好みからは少し外れるが、ミステリーとしては斬新な試みがあって、意欲作ではないかと感じられる。
# | タイトル | 著者 |
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小説 | 奇跡を信じてみませんか | 美唄清斗 |
エッセイ | ワンポイントリリーフの栄光 | 愛川晶 |
小説 | 合わせ鏡 | 美唄清斗、相川晶合作 |
エッセイ | 謙虚にして爽やか | 美唄清斗 |
小説 | 詐欺師の白い杖 | 愛川晶 |
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