隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1778.アイリッシュ短編集4 青髭の七人目の妻

2017年09月20日 | サスペンス
アイリッシュ短編集 青髭の七人目の妻・他
Bluebeard’s Seventh Wife & Other Stories
読了日 2017/09/20
著 者 ウィリアム・アイリッシュ
William Irish
訳 者 村上博基
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 385
発行日 1974/03/01
ISBN 4-488-12006-7

 

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書店で安く買い求めたものでISBNの表記がなく、Amazonで新装版の番号を調べて書いた。
表紙には原題として上記のようにBluebeard’s Seventh Wife & Other Storiesとなっているが、新装版ではSilhoette & Other Storiesとなっている。もちろん表紙のカバーも変わっており、黒を主体としたしゃれたカバーになっているが、僕はこの古い版もなかなか味があって良いのではないかと思っている。
因みに当時の価格は後ろに320円と印刷してあり、時代の流れを感じる。若い頃の一時期、僕はこのウィリアム・アイリッシュという作家の作品にほれ込んで、ずいぶん読んだものだがその大半は忘れており、当時の記録もどこかに散逸してしまい、残っていないのが残念だ。
今回のようにふと思い出しては、読むようにしているのだが、若い頃のような驚きや感動は望むべくもなく、ただ懐かしさだけが蘇る。いや、そうでもないか、やはり傑作ぞろいの著者の作品は、いつになっても読むたびに新鮮な驚きと感動が胸をとどろかす。

 

もちろん作品にもよるのだが、この作者の別名、コーネル・ウールリッチ名義の作品も同様に、僕は好きでこちらもだいぶ読んだ記憶があるのだが、同じくその大半を忘れた。
アイリッシュ名義の方は、本書もそうだが東京創元社から短編集が6冊刊行されており、このブログではこれが4冊目となる。すべて読んでいるはずなのだが、本書の内容もところどころで思い出すこともあるが、初めて読むような気もして、僕の記憶のあやふやなところに何となくもどかしさを感じることも。
下の表で分かるように、本書には9編の短編が収められている。サスペンスの詩人と言われるだけあって、いずれの作品も胸が痛くなるような緊迫した状況の中から、抜け出そうとする人物の恐怖と不安が、読む者の胸にも押し寄せる。
松本清張氏の作品では、ごく普通の市民が思わぬことから事故や事件に、巻き込まれて人生を一変させるといったストーリーが、リアルさを表して従来の探偵小説とは異なる世界を次々と生み出した。
僕は、このウィリアム・アイリッシュ氏の作品にも、同様のどうということの無い一般市民が、一つの過ちからどんどん自分を窮地に追い込むような、行動をとってしまう危うさが、サスペンス・ストーリーの神髄を表しているような気がする。

 

者の代表作としては「幻の女」があげられるが、僕は本書に収められているような短編にも、後の作家に大きな影響を与えている作品が多くあるような気がする。
例えば本書ではサブタイトルにもなっている3番目の「青髭の七人目の妻」などは、一つのパターンがいろいろと形を変えて、応用されている。その一つがアガサ・クリスティ女史の「カリブ海の秘密」がそうだ。 1964年に刊行された同作がアイリッシュ氏の作品を意識したかどうかは分からないが、テーマとしては全く同様であることが面白い。
アイリッシュ氏の作品は、短編の中にも多くの要素を含ませており、単にサスペンスを感じさせるだけでなく、若しかしたら自分にもこうした事態が訪れるかもしれない、そんな恐怖をも感じさせたり、人を思いやる心を人間ドラマとして描くなど、短い作品から考えさせる要素も盛り込んで、秀逸。

 

収録作と原題
# タイトル 原題 発表年
1 毒食わば皿 Murder Always Momentum 1940
2 窓の明り The Light in the Window 1949
3 青髭の七人目の妻 Bluebeard’s Seventh Wife 1936
4 死の治療椅子 Death Sits in the Dentist’s Chair 1934
5 殺しのにおいがする He Looked Like Murder 1941
6 秘密 Silent as the Grave 1945
7 パリの一夜 Underworld Trail 1936
8 シルエット Silhoette 1939
9 生ける者の墓 Graves for the Living 1937

 

 

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