隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0502.スペース

2004年07月11日 | 日常の謎
スペース
読了日 2004/7/11
著 者 加納朋子
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 241
発行日 2004/05/28
ISBN 4-488-01298-1

東京創元社からの案内メールで、著者のサイン本のネット販売が行われるというので申し込んだ。
ずっと以前に、書店の店頭に平積みされていた文庫「ななつのこ」(177.参照)が気になったので、買って読んで以来、すっかり著者のファンになってしまった僕は、新しい本が出るたびに、古書店に並ぶのを待ったり、図書館を覗いたりしていたのだが、こうした単行本の新刊を買うのは、そのくらい著者の書くものが好きだということに他ならない。
特に、この「ななつのこ」、「魔法飛行」(191.参照)に続く、駒子シリーズには愛着がある。
著者の(まえがき)によれば、「ななつのこ」でデビューしたのが1992年だそうで、シリーズ第3作の本書は、それから10年以上たったことになる。
だが、僕が「ななつのこ」を読んだのはまだ2年前のことだから、遅れてファンになった利点はそれほど待たずにいろいろ作品が読めるということだ。

さて、今回のお話は暮れも押し詰まった大晦日に忙しく立ち働く母と姉から、お使いを頼まれた駒子がデパートに行く、ところから始まる。お節の飾り用についでに公園で松の葉も取ってきて、と頼まれたのだがデパートの大きな松飾の葉を2~3枚失敬しようとして、「もしもし、お客さん、何をしているのですか?」と警備員から声をかけられる。
ビックリ仰天したが、警備員はなんとアルバイトをしている瀬尾さんだった。駒子は、瀬尾さんに読んでもらいたい手紙があると言う。そこから、瀬尾さんに渡されたその手紙の文面が延々と続く。
この手紙を読んでいると、女学生同士の遠慮のない、会話のようなほのぼのとしたものが伝わってくる。実に自然で、時々噴出したくなるような文面もあったりして、楽しい手紙なのだが・・・・。(スペース)

もう1篇の「バック・スペース」の方は、双子の駒井姉妹の姉まどかの語りで始まる。本書は実に上手くできていて。初出一覧でわかるように2編の中篇で構成されているのだが、発表された時期も場所(雑誌)も違い、だから、一つづつ読んでもそれぞれ完結した話になっているので、話はわかるようになっているのだが、続けて読むと、二つの中篇は一つの長編となっているのだ。この形式は、最初の「ななつのこ」から一貫して踏襲されているが、一つにまとめられる方法がそれぞれ違うという工夫もされているのである。
今回の話では、後の「バック・スペース」で語り手となっている双子の姉駒井まどかが中心人物だ。が、勿論入江駒子も瀬尾さんも重要な役割を果たしている。別の時期に、別の場所に書かれた物語がどのように合体するのかは、これもミステリーの一つであるので書けないが、最後まで読んだとき、ジグソー・パズルの最後の一片がピタリとはまったような快感をさえ覚える。

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月号  
1 スペース e-NOVELS
週刊アスキー
 
2000年7月25日号~
10月17日号
2 バック・スペース ミステリーズ vol.3(2003年12月)~
vol.4(2004年3月)




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