隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1446.硝煙の向こう側に彼女

2014年03月12日 | 警察小説
硝煙の向こう側に彼女
読 了 日 2014/02/22
著  者 深見真
出 版 社 エンターブレイン
形  態 単行本
ページ数 301
発 行 日 2009/02/12
I S B N 978-4-7577-4677-0

 

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覚してもいるのだが、僕には変なところと言うか、無意識の内のこだわりのようなものがあって、あまり人が気にしないような本を読みたくなることがある。いや、人が気にするか、しないかは僕の良く知るところではないが、例えば図書館の蔵書を検索しても、見つからないなどといったとき、余計に読みたくなるのだ。
無いものねだりの一つかもしれない。
そう言えば、少し前に読んだ高林さわ氏の「バイリンガル」という作品も同様のことだったな。
何処かで目にしたこのタイトル「硝煙の向こう側に彼女」は、木更津市立図書館も、君津市にも袖ヶ浦市にも無く、僕は最近の新刊だろうとばかり思っていたから、そのうち図書館にも入るのだろう、とのんびり構えていた。
ところが日が経っても検索には一向引っかからないで、たまたまヤフオクで114円で出品されているのを見つけて、ゆうメールの送料を合わせても、404円だからと入札したら、運よく競争相手も無く落札できのだ。
しばらくぶりに買うことになった本は、5年も前に出た本とは思えないほどきれいで、出品者が大切に扱っていたことが判る。同時に馴染みの無い出版者名を見て、図書館に無かった理由の一つだろうと、変なところに納得。
それにしても5年も前の本がどうして最近何処かで紹介されていたのだろう?
もっともテレビの書評番組などでは、必ずしも最近の本だけ紹介されるわけではないから、コメンテーターの誰かが過去に読んだ面白い本ということで紹介したのを、僕が気になってメモしたのだろう。

 

 

僕がタイトルから想像したのは、女性警官の活躍を描いたアクションドラマといったところだ。近年はおとなしい男性に比べて、女性の台頭が目立つ社会の風潮だ。そうした社会情勢を写し取るような、男性顔負けの女性を主人公とした警察小説が、いくつも登場して映画やドラマとなって多くの観客、視聴者を獲得してきた。

本書は僕の期待したとおりの拳銃の射撃に精通した、女性警官・塚田志士子の活躍を描いた内容だった。警視庁対テロ捜査専従班に所属する塚田志士子警部は、東京工大の法学部を卒業、大学院で物理学を専攻した科学捜査のプロだが、銃器犯罪のプロでもあり、ついたあだ名は「鉄砲塚」。

僕はここまで書いてきて、最近はこうしたアクションを伴う内容の本が多くなったかな、といささか忸怩たる思いが湧いてきた。と言うのも僕がミステリーを好むようになったのは、フーダニット(Who Done It)、ハウダニット(How Done It)などの本格推理に面白さを感じたからで、これこそ探偵小説の真髄だと思ったからだ。
ところが近頃本格推理を読むことが少なくなって、どちらかと言えばハードボイルドや、警察小説が多いような気がして、否、気のせいではなく実際多くなっている。
別にいつも言っているように、この読書は純粋に娯楽のためなのだから、何を読んだっていいようなものだが、若い頃本格探偵小説の通を自認していたこともあって、自分に対してほんの少し恥ずかしいような気になったのだ。

 

 

道に逸れた。
本書では女性警部に対する軽視や軋轢などと言った描写は少なく、胸のすくような活躍場面もあって、カタルシスも味わえるのだが、事件は思わぬ方向へと進む。
彼女しか扱ってないはずの拳銃の弾丸が、殺人に使用された弾丸の線状痕と一致したのだ。
現場で捜査にあたっていた彼女に、何と殺人の容疑がかけられたのだ。誰が何のために仕掛けた罠か?
「銃と寝る女」と評される塚田志士子警部の窮地からの脱出と、彼女の忌まわしい過去が錯綜して、アクション場面が続く。

著者のページを作るため、ネットを検索したら著者は漫画原作者でもあり、そっちの方面やゲームなどの関連で多くの賞を受賞していることがわかった。本編のスピーディーでビジュアルなシーンがそこここに出てくる内容に、なるほどと思わせるものだと納得する。

 

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