スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

天皇賞(秋)&内川の感情

2021-10-31 19:26:27 | 中央競馬
 第164回天皇賞(秋)
 先手を奪ったのはカイザーミノル。2番手にトーセンスーリヤとグランアレグリア。4番手にポタジェとカレンブーケドール。6番手にエフフォーリアとヒシイグアス。8番手にコントレイルとラストドラフト。10番手にサンレイポケット。11番手にムイトオブリガード。12番手にモズベッロでここまでは一団。2馬身差でワールドプレミアとユーキャンスマイル。後方2番手にペルシアンナイト。4馬身差の最後尾にカデナという隊列。前半の1000mは60秒5の超スローペース。
 直線の入口ではカイザーミノルとグランアレグリアが併走。カイザーミノルが少し外に出たので内に突っ込んだのがトーセンスーリヤでまずはこの3頭の競り合い。ここからグランアレグリアが抜け出すと,外からエフフォーリアとコントレイルが伸びてきました。位置取りの関係で先にグランアレグリアを追う形になったエフフォーリアが,グランアレグリアを差し,コントレイルの追い上げも封じて優勝。一番よい脚を使ったコントレイルが1馬身差で2着。力尽きたグランアレグリアがクビ差で3着。
 優勝したエフフォーリア皐月賞以来の勝利で大レース2勝目。ダービーは2着でしたが正攻法のレースをしてのもので,3歳馬の中では力量上位というところをみせていました。ここはそれ以来のレースで,菊花賞ではなくこちらを目標にした陣営の判断が的確であったということでしょう。グランアレグリアが前にいったことで,持ち味の末脚を発揮することができなかったという面はありますが,2着馬も3着馬も実績馬ですから,斤量の差があったとはいえ,この距離ではこちらの方が上であったという判断も可能かと思います。父はエピファネイア。母の父はハーツクライ。祖母がケイティーズファーストで従兄にアドマイヤムーン。Efforiaはギリシア語で強い幸福感。
 騎乗した横山武史騎手は先週の菊花賞に続く大レース3勝目。天皇賞は初勝利。管理している鹿戸雄一調教師は皐月賞以来の大レース3勝目。天皇賞は初勝利。

 サクラナイツは順位の上昇を目指すことを断念したら,4位を受け入れてゲームを終了させるか,次のチャンスを待つかのどちらかでした。しかし4位を受け入れてゲームを終了させることについては最初からそれをよしとしていなかったのですから,この場合は次のチャンスを待つことになります。そのためには,パイレーツかフェニックスが得点を獲得するとゲームが終了してしまうので,それは阻止しなければなりません。一方,アベマズがテンパイを果たせない場合もゲームが終了するのですから,アベマズがテンパイを果たすためには協力する必要があります。4筒を捨てずに4索を捨てたのは,それを目指すためだったと解するべきだと思われます。
                                        
 それを目指したからといって必ずそうなるわけではないというのが麻雀というゲームの性質です。なのでこの判断は,サクラナイツの,あるいはサクラナイツのプレイヤーである内川のある判断,いい換えれば認識cognitioというより,内川の感情affectusとして理解する方が,スピノザの哲学に照らし合わせた場合は適切です。要するに,内川はこのとき,次のチャンスを待つことを希望したといっておくのが,スピノザの哲学の説明としては適切でしょう。この希望spesという感情については何度もいっているように,不安metusという感情と表裏一体です。つまり第三部諸感情の定義一三説明でいわれているように,ある人間が何らかの希望を感じているときは,同時に不安も感じていることになります。これはこのときの内川についても例外ではありません。このとき内川は,アベマズがテンパイするなり得点を獲得するなりして南4局1本場へと進むことを希望していたのですが,同時にパイレーツなりフェニックスなりが得点を獲得してゲームが終了してしまうということに不安を感じていたということになるからです。
 内川のこの判断の要因となっているのは,パイレーツがリスクを冒してでも順位の上昇を目指しているという認識が,内川の知性intellectusのうちにもあったということと関連していると僕は考えます。麻雀の性質から,それを目指してもそうならないということは,サクラナイツの場合だけでなく,パイレーツも同様だからです。
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ホッコータルマエ&断念

2021-10-30 19:11:19 | 名馬
 9月20日のゴールドジュニアを1分11秒5という2歳馬としては破格のタイムで圧勝したママママカロニの父はホッコータルマエです。父はキングカメハメハ
                                   
 デビューは3歳の1月。このレースは11着と大敗しましたが,小倉に遠征した2戦目で初勝利。500万を4着,6着となった後,幸英明騎手と初のタッグ組んだレースを6馬身差で圧勝。オープンで3着になった後,古馬初対戦の1000万で3勝目。ジャパンダートダービーで5着になった後,レパードステークスで重賞初勝利。みやこステークス,ジャパンカップダートと連続して3着に入り,暮れのオープン特別は2着になりました。
 4歳初戦の東海ステークスは3着。佐賀記念で重賞2勝目をあげると名古屋大賞典,アンタレスステークスも連勝。かしわ記念で大レース初制覇を達成すると続く帝王賞も制しました。南部杯エスポワールシチーの2着で連勝は5で止まったもののJBCクラシックをレコードで勝って大レース3勝目。ジャパンカップダートは3着に敗れましたが東京大賞典を勝って大レース4勝目。NARグランプリのダートグレード競走特別賞馬に選出されました。
 5歳初戦の川崎記念で大レース5勝目。フェブラリーステークスは2着。遠征したドバイワールドカップは16着。この後,ストレス性の腸炎を発症。現地で治療をして帰国。帰国初戦のJBCクラシックは4着でしたがチャンピオンズカップ,東京大賞典と連勝。JRA賞の最優秀ダートホースとNARグランプリのダートグレード競走特別賞馬に選出されました。
 6歳初戦の川崎記念で大レース8勝目。この年もドバイに遠征してドバイワールドカップは5着。帰国初戦の帝王賞で大レース9勝目。JBCクラシックは3着,チャンピオンズカップは5着,東京大賞典は2着。この年もNARグランプリのダートグレード競走特別賞馬に選出されました。
 7歳初戦の川崎記念で大レース10勝目。ドバイワールドカップは9着。帝王賞が4着,南部杯が3着,JBCクラシックが2着で現役生活を終了しました。
 同時期に走ったダート馬の中では最強だったと僕は思っています。ただ,スピードを要求されるレースは不得手だった印象なので,ママママカロニのような快速馬が輩出したのはやや意外でした。

 7筒を捨てたふたつの理由を総合すると,まずサクラナイツは大量得点をすることについては諦めていないということ,いい換えれば順位を上げることについては諦めていないということと,フェニックスに失点をすることによってゲームが終了してしまうこと,つまり自身が4位を受け入れて試合が終了するということは望んでいないということが分かります。その上でその後も打っていったわけです。
 この次の巡目にアベマズのポンが入りました。サクラナイツが引いてきたのは字牌の北。これはフェニックスが1巡目に捨てている牌ですから,7筒と同じ理由で安全です。なのでそのまま捨てました。そしてその次の巡目にパイレーツが4索を捨てました。ここでまたサクラナイツは考慮しなければならないことが増えました。すでに説明したように,パイレーツがこの牌を捨てたことにより,パイレーツはアベマズに対して失点するリスクを背負ってでも,順位を上げる得点の獲得を目指しているということが,サクラナイツのプレイヤーである内川にも分かった筈だからです。フェニックスの近藤はこのことを第三種の認識cognitio tertii generisで認識したのですが,僕が説明した事柄からこのことは第二種の認識cognitio secundi generisによっても認識するcognoscereことができる事柄なので,内川もまたそれを認識したのです。パイレーツに対して失点してもゲームは終了してしまいますから,現状の順位のままでのゲームの終了を望んでいない内川にとっては,フェニックスに対して失点することだけでなく,パイレーツに対して失点しないことも考慮しなければならなくなったことになります。考慮するべきことが増えたというのは,具体的にはこのことを意味します。
 その巡目にフェニックスが8索を捨てた後,サクラナイツが引いてきたのは4筒でした。ここでサクラナイツは4索を捨てています。
 サクラナイツの手は,4筒を残して4索を捨てると,得点を獲得するのがかなり難しい形になります。したがってこの4索を捨てた時点で内川は,自身の得点の獲得,順位の上昇についてはほぼ断念したとみていいといえます。その場合はサクラナイツにはふたつの手段があるということは事前に説明しておきました。
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リコー杯女流王座戦&フリテン

2021-10-29 19:09:22 | 将棋
 目白台で指された昨日の第11期女流王座戦五番勝負第一局。対戦成績は西山朋佳女流王座が15勝,里見香奈女流四冠が11勝。これはNHK杯の予選を含んでいます。
 リコーの代表取締役による振駒で里見四冠の先手と決まり中飛車。後手の西山王座が三間飛車にしての相振飛車。この将棋は錯覚で決着がつきました。
                                        
 第1図から☖6五銀☗同歩と進めました。その局面は後手玉の受けが難しくなっているので,先手玉を詰ますほか後手に勝ちはありません。ですが先手玉には詰みがなかったので,先手の勝ちになりました。後手は6六の歩が動いて後手の角筋が通れば詰むと判断して☖6五銀と取っているわけで,相手の玉が詰みだと思って進めていたら詰まなくて負けにしたという将棋です。プロの将棋ではこの錯覚はほとんどみられるものではなく,珍しい一局が見られたということになるでしょう。
 里見四冠が先勝。第二局は来月15日に指される予定です。

 7筒を持っていた方が4筒を持っているより得点の獲得を目指しやすいのに,4筒の方を残して7筒の方を残したのには,ふたつの理由があると考えられます。
 4位のサクラナイツは3位のパイレーツとの差が11000点でした。ですから単に得点を獲得するだけでは,順位が上がらない場合が生じます。順位の上昇を目指すのであれば,なるべく多くの得点を獲得することができるテンパイを果たさなければなりません。そのためには,7筒よりも4筒の方がサクラナイツの手にとっては有用です。したがってサクラナイツのプレイヤーである内川は,大量の得点を獲得して,順位の上昇を目指すということについては,この時点では諦めていないと考えられます。同時に,単に得点を獲得して4位のままでゲームが終了するということについては,受け入れ難いと考えていると想定されます。
 もう一点は,フェニックスが7索をチーしたときにテンパイしていると仮定すれば,4筒を捨てた場合は失点する可能性があるけれど,7筒を捨てることによって失点する可能性はないという点です。これはフェニックスがすでに7筒を捨てていることから分かります。フェニックスは不要であるから7筒を捨てたのですから,その7筒で失点することはないのです。
 麻雀は情報非共有型のゲームのため,他のプレイヤーの手の中は分かりませんし,山にどんな牌が詰まれているかということ,他面からいえば自分がどんな牌を引いてくるかということも分かりません。こうしたゲームの性質のために,前に捨てた牌が後になってまた必要になるということも生じ得ます。これはどんなに強いプレイヤーであっても完全に回避するということはできません。そしてそのまま手が進み,前に捨てた牌が必要な形でテンパイするという場合も生じ得ることになります。これはフリテンといわれる形のテンパイです。フリテンの場合は,自分で引いてきた場合は得点を獲得することができるのですが,だれかがその牌を捨てることによって得点を獲得することはできないというのが麻雀のルールです。なので7筒を捨てているフェニックスに対して,7筒で失点することは絶対にないのです。
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農林水産大臣賞典平和賞&内川の思考

2021-10-28 18:54:39 | 地方競馬
 北海道から1頭が遠征してきた全日本2歳優駿トライアルの昨晩の第67回平和賞。ランディスシティは右の後ろ脚の蹄の底の内出血で出走取消となり13頭。左海騎手が26日の3レースで落馬し,胸部,頚部,背部,左腕を打撲したためレティクルは山口達弥騎手に変更。
 総じて外の方の馬が先手を奪いに行ったので,隊列が決まったのは向正面に入ってから。逃げたのはノーズトゥテール。2番手にグッドボーイ。3番手にマイブレイブとレティクル。5番手にライアンとミネソタでこの6頭は一団。2馬身差でリヴィフェイスとミゲル。3馬身差でベアカキーン。10番手にミスターブラスト。11番手にキャッスルブレイヴ。12番手にフレッシュグリーンでこの4頭も一団。5馬身差の最後尾にメイククラウドロア。前半の800mは49秒6のハイペース。
 3コーナーで逃げたノーズトゥテールとグッドボーイが並ぶとその外からレティクルが追い上げ3頭が雁行。コーナーの途中でノーズトゥテールが一杯に。さらにレティクルが外から先頭に立つとグッドボーイも苦しくなって,ライアンが2番手に上がって直線に。直線に入るとレティクルを差したライアンが先頭。追ってきたのはレティクルとライアンの間を突いたマイブレイブと,ライアンの外から並んで追ってきたミゲルとミスターブラスト。ライアンがやや外に寄ったため,ミゲルは不利を被り失速し,3頭の争いに。前に出ていたライアンがそのままフィニッシュまで粘って優勝。内のマイブレイブが半馬身差で2着。外のミスターブラストがクビ差で3着。
 優勝したライアンは7月のデビュー戦を勝つと2戦目は3着でしたがその後は連勝。このメンバーでは唯一の3勝馬でしたので,優勝候補の1頭とみていました。3勝目をあげたのが先週で,強行軍での出走となった疲れが,最後に外によれてしまった要因になったかもしれません。消耗戦を制したので底力はあるとみるべきでしょうが,レースのレベル自体はさほど高くなかった可能性も残ります。父はディープインパクト
 騎乗した川崎の今野忠成騎手は昨年の報知オールスターカップ以来となる南関東重賞39勝目。第54回以来となる13年ぶりの平和賞2勝目。管理している浦和の小久保智調教師は南関東重賞51勝目。第61回以来6年ぶりの平和賞2勝目。

 パイレーツが4索を捨てた時点で直観scientia intuitivaが働いたということ,そしてその理由は,瑞原は他のプレイヤーの副露を丹念にケアするプレイヤーであるとされていることは,どちらも矛盾があるわけではないと分かりました。なのでこの局をさらに進めていきます。
                                        
 瑞原が4索を捨てたのは12巡目です。その直後にフェニックスは8索を引いてきました。この牌は絶対に安全と断定できるわけではありませんが,パイレーツが7索を捨ててフェニックスはそれをチーしていることから,危険度はさほど高くありません。フェニックスの得点の獲得にとって有効な牌でもありませんから,そのまま捨てました。次のサクラナイツのところには4筒という牌が引かれました。ここでサクラナイツはその牌を手の中にとどめ,4索を捨てています。ここにはプレイヤーである内川幸太郎の思考が働いています。フェニックスが7索をチーした後,サクラナイツが7筒を捨てたことと合わせて,思考の意図を考察します。
 フェニックスがチーした後にサクラナイツの手許にきたのは南という字牌でした。これはすでにフェニックスが捨てている牌であり,かつサクラナイツにとっても不要なので捨てる一手です。次の巡目に引いてきたのは3萬です。この牌はサクラナイツの手からすれば使いにくい牌です。フェニックスのチーが入る直前にサクラナイツは3萬を捨てていることからそれは明らかです。ですが内川はそれを手の内にしまい込み,7筒を捨てました。まずこの選択から,思考の一端が分かります。
 内川が3萬を手の内に納めたのは,それを捨てるとフェニックスに対して失点する可能性があるとみたからです。フェニックスに対して3萬で失点すると,どんなに高くても3900点であり,2000点の可能性も高いように思えます。ですがその失点によってゲームは終了します。つまり内川は,その形でのゲームの終了は望んでいなかったことになります。いい換えれば,僅かに失点して4位を受け入れるという選択肢は内川の中にはありませんでした。
 3萬を残すとして,得点を獲得するということを目指すなら,7筒を捨てるよりは4筒を捨てた方がいい形が残ります。
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大成建設杯清麗戦&近藤の記述

2021-10-27 19:23:49 | 将棋
 仙台で指された昨日の第3期清麗戦五番勝負第三局。
 里見香奈清麗の先手で5筋位取り中飛車。後手の加藤桃子女流三段が玉を完全に囲い終える前に銀を進出させて攻めていく将棋になりました。
                                        
 後手が銀をぶつけてきたので,先手が浮いている歩を突いた局面。後手はここから☖8六歩☗同歩の突き捨てを入れておいて☖7六銀と進出しました。
 角を逃げては☖6七銀成ですから☗7四歩☖7七銀不成☗同桂までは必然。事前に8筋を突き捨てたのですから☖8六飛も当然でしょう。後手は一旦は☗2五歩☖1三角で後手の角の位置を変えてから☗7三歩成と桂馬を取りました。
                                        
 第2図は角と銀桂の二枚換えで駒得をしている先手がと金を作っています。一方の後手の主張は飛車が成り込めるという点。と金と龍は同じ強度で攻められるならと金の価値の方が高いのは当然。なので後手は飛車を成り込んだ後,先手のと金が働く前に攻めきらなければならないのですが,それは無理でした。よって第2図は先手が優勢のようです。第1図で☖8六歩と突けば,第2図までは想定できるところなので,後手の大局観が悪かった一局という結論になりそうです。
 里見清麗が勝って1勝2敗。第四局は来月9日に指される予定です。

 著書で近藤がいってることが正しいということは,ほかのプレイヤーが,パイレーツの手が,大量の得点を見込める形になっていることを理解する場合にも成立します。すなわち,パイレーツが7索や8萬を捨てたときにはそのことには気が付かないのであって,アベマズが8萬をポンした後に,4索をパイレーツが捨てた時点で理解することになるのです。したがって,これ以降とこれ以前では,パイレーツ以外の3人のプレイヤーの打ち方に相違が出てきます。なぜならパイレーツに対して失点しないようにするということも考慮した上で,打つ必要が生じてくるからです。
 たとえこのような状況であっても,パイレーツの立場に立ったときに,あくまでも順位の上昇を目指して打つということも,あり得ないわけではありません。ですから,近藤が自身の第三種の認識cognitio tertii generisが働いた要因として,瑞原というプレイヤーのタイプが示されていることも,理由がないわけではありません。瑞原は,他のプレイヤーの副露に対して丹念にケアをするタイプの選手である。それなのにこの状況でアベマズに対して失点のおそれがある牌を捨てた。それは瑞原の手が,順位の上昇を見込める形になっているからだ,という論理構成は十分に成立するからです。他面からいえば,こういう場合でも副露をケアするより得点の獲得を目指すタイプのプレイヤーが4索を捨てたのであれば,このような第三種の認識は働かなかったかもしれませんし,あるいは働いたとしても,このときほど強く働くagereということはなかったかもしれないからです。ですからこの点についても,近藤が何か矛盾したことをいっているわけではないのです。
 一方,瑞原が他のプレイヤーの副露に対して丹念にケアをするタイプであるという認識そのものの十全性についても,近藤が指摘していることを疑う必要はありません。8萬を捨てたときはもちろん,7索を捨てた時点ですでにパイレーツの手は大量得点を見込むことができる形になっていたので,瑞原はその時点で順位の上昇の方を目指していたのだからです。したがって瑞原は実際にはフェニックスに協力することを意図してこれらの牌を捨てたのではありません。
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竜王戦&決定的な差

2021-10-26 19:04:48 | 将棋
 22日と23日に仁和寺で指された第34期竜王戦七番勝負第二局。
 豊島将之竜王の先手で相掛かり。先手が角の動きで手損をしている間に,後手の藤井聡太三冠が銀を繰り出していく将棋。先手がその銀を目標にしたのですが,後手が強気に対応しました。先手は龍を作ることができる局面になったのですが,それを断念。代替案として9筋を攻めましたが,それも後手に逆襲され,封じ手の時点では先手が非勢に陥っていたようです。
                                        
 後手が7三の桂馬を跳ねた局面。この手では☖7七歩成が最善とAIは指摘していましたが,後手はそれでは清算を持つことができなかったとのことです。
 先手は☗2五飛と引きました。これはいろいろと狙いを秘めている手。後手としても怖いところがあるように思うのですが,☖9七桂不成と踏み込んだのが勝因となりました。この局面はこの手以外では後手が優位を保つのは難しかったようで,後手にとって一局を通して最難関の局面であったと思うのですが,あっさりと突破しました。
 先手は銀を取るのではなく☗2四歩と打ちました。これも飛車を引いた狙いのひとつ。後手は☖8九桂成と桂馬を取って☗2三歩成に一旦は☖同金☗同飛成。ここで手番を生かして☖4五桂と打ちました。先手は☗4八王と早逃げしましたが☖9九成桂で悠々と駒を補充。
                                        
 第2図となっては先手からは有効な攻めがなく,後手の勝勢となっています。
 藤井三冠が連勝。第三局は30日と31日に指される予定です。

 差し込みは極端な例といえますが,そうした戦術まで含めて,パイレーツはフェニックスに対して協力的に打つ余地があるのです。ですから,8萬はそのようには他のプレイヤーから見えないという一面がありますが,7索のように,明らかにフェニックスの副露に対して一切のケアをしていない牌をパイレーツが捨てたとしても,他のプレイヤーからそれが不自然であるというようには認識されません。だからこのときには第三種の認識cognitio tertii generisは働きませんし,第二種の認識cognitio secundi generisによってもそれが不自然であるとは認識されないのです。実際はパイレーツの手は,この時点ですでに大量の得点を見込めそうな手になっていたのですが,そのことを他のプレイヤーが気が付く材料にはならないのです。7索を捨てたことと4索を捨てたこと,すなわちフェニックスの副露にケアをしなかったことと,アベマズの副露に対してケアをしなかったということとの間には,それほど決定的な差があるといえるのです。
 ですから,パイレーツがもしも4索を引いてこないで,アベマズに対して危険ではないような牌ばかりを引いてきていたとしたら,それを捨ててもほかのプレイヤーは不自然であると認識しないのですから,パイレーツの手が大量得点を見込めるような形になっているということは,おそらくほかのプレイヤーには気付かれることがなかったろうと推測されます。これは麻雀が不確定な要素を含んでいるということの一例であり,他のプレイヤーの手のことに気付くことができるかできないのかということも,引いてくる牌がどんな牌であるのかということと関係してくるのです。どんなに強いプレイヤーであっても,相手のチャンスや自身の危険に気が付くことができないような場合も生じ得るのが麻雀というゲームなのです。
 ここまでの説明から,パイレーツが7索や8萬を捨てたときに,近藤に第三種の認識が働かなかったとしても,それはおかしなことではないということ,いい換えれば,パイレーツが4索を捨てたときに初めて第三種の認識が働いたのが当然であるということは分かりました。すなわち,それに関して近藤が著書で述べている事柄には,何の矛盾もありません。
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寛仁親王牌・世界選手権記念&差し込み

2021-10-25 19:44:32 | 競輪
 弥彦競輪場で行われた昨日の第30回寛仁親王牌の決勝。並びは新山‐新田‐菅田‐大槻の北日本,吉田‐平原‐諸橋の関東で野原と山田は単騎。
 諸橋,新田,菅田の3人がスタートを取りにいきました。新田が誘導の後ろを確保して新山の前受けに。5番手に山田,6番手に吉田,最後尾に野原という周回に。残り3周のバックを出ると新山が誘導との間隔を開けて後ろを牽制。ホームから吉田が叩きにいきました。新山は突っ張っていきましたが,菅田が離れてしまい,バックで新田の後ろに吉田が入ると諸橋まで続き,6番手に菅田,7番手に大槻,8番手に山田で最後尾が野原という一列棒状になって打鐘。野原はホームから動いていきましたが前には届かず。バックの入口の手前から吉田が発進。新田が番手捲りを敢行すると吉田は外に浮き,平原が新田にスイッチ。新田‐平原‐諸橋の隊列で直線に。諸橋が新田と平原の間を突くと,新田と接触して落車。これで新田のスピードが落ち,抜け出した平原が優勝。新田が2着に入線しましたが,諸橋の落車の要因になったため失格。平原の外から伸びた大槻が2車身差の2着に繰り上がり,大外から伸びた菅田が1車身の3着で確定し,大波乱。
                                        
 優勝した埼玉の平原康多選手は3月の大垣記念以来の優勝。ビッグは2018年9月の共同通信社杯以来の10勝目。GⅠは2017年2月の全日本選抜以来となる8勝目。寛仁親王牌は初優勝。弥彦では昨年7月に記念競輪を勝っています。このレースの注目点は,吉田と新山の先行争い。前受けとなった新山が突っ張ることに成功したのですが,菅田が離れてしまったために吉田が絶好ともいえる3番手に入ることに。このために新山マークの新田よりも吉田マークの平原が有利になりました。菅田が離れさえしなければ,また違った結果になったことでしょう。

 サクラナイツがリーチを宣言するということは,順位を上げるだけの条件が揃っているという可能性が高いと他のプレイヤーからは見えます。もしも4位を受け入れてこのゲームを終了させることを目指すのであれば,わざわざリーチを宣言したりはしないだろうという推測が成り立つからです。
 このとき,パイレーツが取り得る方策として,フェニックスに得点を獲得してもらうというものがあります。サクラナイツが得点を獲得してしまうと4位になって試合が終了してしまうのに対し,フェニックスが得点を獲得したら,3位のまま試合が終了することになるからです。とくにフェニックスは単独のトップになるためには2000点を獲得すればいいのですから,パイレーツがフェニックスに対して失点したとしても,それによってパイレーツが4位になってしまうような手をフェニックスが作ってくるとは考えにくいからです。このことはフェニックスからみてもいえるのであって,の開始前の状況では,パイレーツはフェニックスに対して協力し得るのですから,パイレーツが4位になってしまうような手が自然にできてしまうのは仕方がありませんが,意図的にそれを作りにいくのはかえって損になってしまうからです。
 ですから,サクラナイツからリーチの宣言が出された場合は,サクラナイツには失点せず,フェニックスに対しては危なそうな牌を選択して捨てるという手段があり得るのです。麻雀は順位を競う頭脳ゲームですから,これは有力な作戦であって,俗には差し込みといわれます。なお,これはわざわざ他のプレイヤーに対して失点することを一般的に差し込みというのであって,この場合は自身の順位を守るためのものですが,状況によっては異なった差し込みも生じ得ます。最も生じやすい協力関係は,トーナメント戦で上位の2名が勝ち抜けるというルールの南4局で,1位のプレイヤーと2位のプレイヤーが協力し合ってゲームを終了させるというものだと思われます。こうした差し込みは,あまり好まないプレイヤーも存在しますが,作戦のひとつであることは間違いありません。なので瑞原がそれをする可能性はもちろんあります。
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菊花賞&リーチ

2021-10-24 18:53:10 | 中央競馬
 第82回菊花賞
 ワールドリバイバルも逃げたかったようですが,それを制したタイトルホルダーがハナへ。ワールドリバイバルが控えて2番手。3馬身差でエアサージュとモンテディオ。3馬身差でディヴァインラヴとグラティアス。4馬身差でディープモンスター。8番手にアリーヴォ。9番手はロードトゥフェイムとヴィクティファルスとヴェローチェオロで併走。12番手にオーソクレース。13番手はノースザワールドとステラヴェローチェ。15番手にヴァイスメテオール。16番手がアサマノイタズラとレッドジェネシス。最後尾にセファーラジエルで1周目の向正面を通過して正面へ。最初の1000mは60秒0のスローペース。
 正面から最後尾のセファーラジエルが上昇していったことで隊列が変化。2周目の向正面に入るとセファーラジエルが2番手となり,3番手にモンテディオ。4番手以下はグラティアス,エアサージュ,ディヴァインラヴ,ワールドリバイバル,ヴィクティファルスとなり,9番手にディープモンスターとアリーヴォ。11番手にオーソクレースで12番手がヴェローチェオロ。その後ろをロードトゥフェイムとヴァイスメテオールが併走。その後ろもノースザワールドとステラヴェローチェの併走となり,2馬身差でレッドジェネシス。3馬身差の最後尾にアサマノイタズラ。
 直線の入口あたりで2番手のセファーラジエルが苦しくなり,逃げたタイトルホルダーが差を広げつつ直線に。タイトルホルダーはそのまま後続との差を広げていく一方となり,楽に逃げ切って優勝。追ってきたのはディヴァインラヴで,さらに外からオーソクレースとステラヴェローチェ。この3頭の2着争いは接戦となりましたが,フィニッシュ直前で前に出た真中のオーソクレースが5馬身差で2着。先んじて単独の2番手に上がっていた内のディヴァインラヴがアタマ差で3着。外のステラヴェローチェはハナ差で4着。
 優勝したタイトルホルダーは弥生賞以来の勝利。重賞2勝目で大レース初制覇。この馬は先行タイプでベストは逃げなので,成績は安定しない面があります。とはいえここでは実績上位の1頭。今日はいいペースで逃げることができたことにより,圧勝という結果になりました。どうしても展開に左右されるところがあるでしょうから,今日のように鮮やかに勝てることもあれば,大敗を喫してしまうこともあるというタイプに育っていくのではないでしょうか。父はJRA賞で2015年の最優秀3歳牡馬に選出されたドゥラメンテ。その父がキングカメハメハで母がアドマイヤグルーヴ
 騎乗した横山武史騎手は皐月賞以来の大レース2勝目。管理している栗田徹調教師は南部杯に続いての大レース3勝目。菊花賞は初勝利。

 麻雀では,副露をしないでテンパイをすると,テンパイをしたことを宣言することができます。宣言してもしなくてもいいのですが,宣言することによって獲得することができる点数が増加しますので,多くの得点を獲得したいという場合には宣言をします。この宣言がリーチといわれるものです。この局が始まる段階で,パイレーツとサクラナイツとの点差は11000点でした。この点差を埋めるだけのテンパイを果たすことができれば,サクラナイツはリーチはしません。テンパイを宣言してしまうと,ほかのプレイヤーがもしかしたら捨てるかもしれない牌が,捨てられなくなってしまう可能性があるからです。しかし,リーチをすることによってその点差を埋められるという形でテンパイをすれば,リーチをするのが当然です。リーチをしなければ逆転することができず,リーリをしたなら逆転することができるという条件であれば,得点を獲得する可能性は減少するでしょうが,リーチをした方が得だからです。要するに4位のままで終わるよりも3位になって終わる方がよいのですから,3位になれる可能性がリーチによって生じるのなら,リーチをする方が合理的なのです。
                                        
 そこでもしもサクラナイツがリーチをしたとしましょう。そのときには,少なくともサクラナイツは得点の獲得に成功すれば,順位がひとつは上がるということが容易に推測されます。サクラナイツが3位に上がるということは,パイレーツが4位に落ちることを意味します。3位のパイレーツと2位のフェニックスとの点差は,パイレーツとサクラナイツの差よりも大きいのですから,アベマズなりフェニックスなりが失点することになっても,それでパイレーツよりも下の得点になるということはない筈だからです。なお,これは一例としていっているのであり,この場合はサクラナイツが自力で得点を獲得すれば,支払いは親であるアベマズの方がフェニックスより大きいので,フェニックスはそれに期待して,サクラナイツのリーチに対しては失点しないように打つかもしれません。サクラナイツが自力で得点を獲得すれば,自動的にフェニックスがトップになって試合が終了するからです。
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霧島酒造杯女流王将戦&7索の場合

2021-10-23 19:05:09 | 将棋
 19日に指された第43期女流王将戦三番勝負第二局。
 里見香奈女流名人の先手で中飛車。後手の西山朋佳女流王将が三間飛車に振っての相振飛車。後に相向飛車になりました。後手が交換した角を打って局面を動かしにいく将棋に。厳密にいうと無理な動きで,押さえ込んで先手が完封を狙える将棋だったようです。
                                        
 後手が2一の飛車を浮いた局面。ここは☗4七玉が最善だったようです。ですがそれはなかなか難しそう。実戦は☗2六歩と突きました。
 後手が飛車を浮いた狙いは☖3四歩と合わせるため。これに対しては☗2五歩もありますが,☗同歩と取りました。ただこちらの展開になると,先手が優位を維持するのは簡単ではありませんでした。
 ☖同飛☗3五角☖同角☗3七銀☖5三角。角は4四に引く手もあるのですが☗3五歩☖同角となるのならどちらに引いても同じです。
                                        
 第2図になったら☗2三角☖2四飛☗3五金☖2三飛の角交換に進めるのが先手としては最善でした。ただこれは元の方針と異なるので,指しにくい順ではあるでしょう。
 実戦は☗2二角と打ちましたが,これで逆転しました。☖2四角☗1一角成で駒得にはなりますが☖3六飛が強手。☗同銀☖4六角は明らかな不利なので☗5七銀と辛抱。しかしこれにも☖3五飛☗3六香に☖4五桂がありました。
                                        
 ☗同歩☖同飛は歩がなくて先手が困ります。よって☗3五香ですが☖3七桂成☗同玉☖3五角で,次の☖3二香が厳しく先手玉が寄り筋に入りました。
 西山王将が勝って1勝1敗。第三局は来月4日に指される予定です。

 8萬の前に捨てた7索については,こうしたことが該当しません。
 5が捨てられているプレイヤーに対して8が捨てやすくなるということを説明したのと同じ理屈によって,4が捨てられている場合は7が捨てやすくなります。また,このときのフェニックスは,失点の回避より得点の獲得を目指しているのですから,たとえば5と5と6とか,5と6と6というような形で持っている場合は,ポンにもチーにも対応することができるように,しばらくその形のまま持ち続けるのが合理的です。したがってフェニックスが早い段階で5や6を捨てている場合も,7は捨てやすい牌であることになります。しかしフェニックスは4索も5索も6索も捨てているわけではありません。ですから7索はチーされる可能性がそれなりにある牌で,もし副露しているフェニックスの手を進めないことを重視するなら,捨てるべき牌ではないということになるでしょう。
 このことは瑞原以外のプレイヤーにも理解できる筈です。つまり,瑞原がフェニックスの副露に対してそんなにケアをしていないということは理解できた筈なのです。ですが近藤はそのことをおかしいとは感じなかったのです。つまり,近藤の第三種の認識cognitio tertii generisが働くagereために必要とされた第二種の認識cognitio secundi generisの蓄積は,単に瑞原というプレイヤーが,他のプレイヤーの副露を丹念にケアするプレイヤーであるということだけではなかったことになります。そして実際に蓄積されていたのは,この局の状況がどのようなものであるのかということだったのです。それによれば,フェニックスが得点を獲得して試合が終了するということは,3位のパイレーツにとって,最良ではありませんが,局の終了の仕方としてはよい部類に入るものでした。このために,もしもパイレーツがフェニックスの副露に対して一切のケアをしなかったとしても,あるいはもっと極端にいうと,フェニックスの手を進捗させるような打ち方をしたとしても,他のプレイヤーはそれを不自然とは感じないのです。だから近藤の第三種の認識も,パイレーツが7索を捨てた時点では働かなくて当然だといえるのです。
 この点はもう少し分かりやすく説明しましょう。
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ヒューリック杯白玲戦&使いにくい牌

2021-10-22 19:01:08 | 将棋
 16日に奈良で指された第1期白玲戦七番勝負第四局。
 渡部愛女流三段の先手で後手の西山朋佳女流三冠のノーマル三間飛車。先手は銀冠に組み,中盤まではいい勝負が続きました。
                                        
 後手が4五にいた銀を引いた局面。これは☗5五馬と引かれるのを防いだ手です。
 ここで☗4九香と打ちましたが,この手はここでは悠長すぎました。
 ☖8五歩☗同歩と桂馬を取られて☖5三角。玉頭を狙われたので☗7五歩と突いたものの☖同歩と取られて☗8四歩に☖7四桂と打たれました。
                                        
 第2図となっては玉頭を制圧している後手が必勝に近い形になっています。第1図はもっと直接的な狙いを秘めた手を指さなければならなかった局面。緩手が出たために一遍に差が開いてしまったという一局でした。
 西山三冠が4連勝で初代の白玲に就位。8つのタイトルを4つずつふたりで分け合う状況になりました。

 瑞原の目から見ると,7萬はあと1枚しかありません。その1枚がフェニックスの手の中にあり,かつフェニックスが9萬を合わせて持っている場合にのみ,8萬はチーされることになるのです。この場合は実際にそうなっていましたが,可能性としていえばこれは小さいので,この点からいっても,瑞原からしてみれば,8萬はチーされにくいと思える牌だったことになります。
 ただし,厳密には次のことはいえます。
 あるプレイヤーが,7を3枚持っているなら,8と9はほかのプレイヤーにとって使いにくい牌になります。使えない牌は捨てられることになりますから,8と9は捨てられやすい牌であるといえます。このとき,9萬はアベマズによって1枚捨てられていましたが,8萬はだれも捨てていませんでした。こういう場合は,ほかのプレイヤーが8萬を2枚持っている可能性が少し高くなります。したがってその可能性が高くなる分だけ,8萬をポンされるリスクというのは高まります。ですから,単に副露したプレイヤーの手を進捗させることを防ぐということだけを目的として打つのであれば,この場合はまだ8萬は捨てない方がよく,もし自分がもう1枚引いてくるとか,だれかが1枚捨てるとかした後に捨てる方が万全です。この局ではアベマズの手の中に2枚あり,アベマズがそれをポンしたわけですが,フェニックスが捨てている牌の情報からは,フェニックスの手の中に2枚の8萬があるということを否定するようなものはありません。いい換えれば,フェニックスの手の中に2枚の8萬があって,それをポンすることでフェニックスがテンパイするあるいはテンパイに近付くという可能性が,僅かながらでも高まっているのですから,この時点では手の中に残しておいた方がよいのです。ただしこのときの瑞原は,単にフェニックスの手が進むのを防ぐということを目的として打っているわけではありませんから,8萬を捨てたことが間違っているというわけではありません。
 いずれにしてもこれは瑞原以外の3人のプレイヤーからは分からないことです。フェニックスが5萬を捨てているので,8萬を捨てたことはおかしいとは思わないのです。
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大成建設杯清麗戦&類似形

2021-10-21 18:56:57 | 将棋
 13日に四谷で指された第3期清麗戦五番勝負第二局。
 加藤桃子女流三段の先手で里見香奈清麗のごきげん中飛車。先手の手順が変則的で,①に対して後手が☖3二金と上がる形に進みました、この将棋は先手がうまく戦機を掴んで有利に。しかしその後に後手の反撃の筋に見落としがあったため,互角に戻りました。これはよくある攻め筋の見落としでしたから,致命傷にならなかったのは幸いだったと思います。
                                        
 後手が王手を掛けた局面。ここで☖7二桂と合駒をすれば互角の攻防がまだ続いていました。
 実戦は☖6二歩。これに対しては☗6四歩と打つことになります。☖同金は☗6二飛成で論外。☖7四金も☗6二飛成や☗6三歩成があり,歩を打った意味があまりありません。なので攻め合いにいくのは必然です。☖5六歩に☗6七金。そこで☖5五角と打ちましたがこれは☗同飛成☖同金で手番を握って☗6三歩成。☖同歩に☗6四歩の軽手がありました。
                                        
 第2図となっては先手の攻めの方が速いのは明白。後手に攻めの速度計算に関する重大な誤認があった一局ということになりそうです。
 加藤三段が連勝。第三局は26日に指される予定です。

 これには類似した形もあります。2と3と4と5を持っていて5を捨てるパターンと,5と6と7と8を持っていて5を捨てるパターンです。なぜそれが類似しているといえるのかといえば,どちらの場合でも,その部分はすでに形が完成していて,余剰となった5が捨てられるケースだからです。
 これらのことから分かるのは,あるプレイヤー,とくに得点を獲得することを目指しているプレイヤーが5を捨てた場合は,そのプレイヤーの手の中には,3と4の組合せおよび6と7の組合せは存在していないか,そうでなければその組み合わせに関してはすでに形として完成しているかのどちらかの場合であるということです。ですから5を捨てているプレイヤーに対しては,2と8は副露されたりそれで失点したりする可能性が,ほかの牌と比べれば低いのです。いい換えれば安全性が高いのです。ですから5萬を捨てているフェニックスに対して,パイレーツが8萬を捨てたとしても,それはフェニックスの副露に対してケアをしていないというようにはいいにくいのです。したがって,この点を抽出して,瑞原は副露に対して丁寧にケアをしないプレイヤーであるということはできませんし,8萬を捨てたことに対してほかのプレイヤーがおかしいと感じなかったとしても,それは自然なことです。
 さらに,これはこの局のプレイヤーとしては瑞原だけが知り得る情報ですが,僕たちはすべてのプレイヤーの手の中を見た上で考察しているのですから,次の点も考えておかなければなりません、
 パイレーツが8萬を捨てたとき,その手の中には7萬という牌が3枚ありました。麻雀の牌は同じ牌が4枚あるということはすでに説明しておいた通りです。したがって,7萬という牌は,パイレーツの手の中にあるほかには1枚だけどこかにあるのです。この場合はまだ捨てられていませんから,ほかのプレイヤーの手の中にあるか,まだ引かれていない山の中にあるかのどちらかです。瑞原にはそのことは分かるのです。近藤の手の中には6萬と7萬のセットはないことがすでに分かっているので,もしも8萬をチーをされるなら,7萬と9萬を持っている場合に限られます。
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埼玉新聞杯埼玉新聞栄冠賞&8萬の事情

2021-10-20 19:22:18 | 地方競馬
 第31回埼玉新聞栄冠賞。ストライクイーグルが右の後ろ脚を捻挫したため出走取消となり11頭。
 前にいく構えをみせたのはトランセンデンス,フィアットルクス,エメリミットの3頭。トランセンデンスの逃げとなり,エメリミットが外から続きました。キングガンズラングとリッカルドが3番手を併走し,フィアットルクスは控えて5番手。6番手にタービランスとマンガンでこの7頭は一団。3馬身差でハイランドピークとチェスナットコート。2馬身差でトーセンブルとノーブルサターンという隊列。前半の1000mは63秒8のミドルペース。
 2周目の向正面からトランセンデンス,エメリミット,リッカルドの3頭は雁行に。その後ろもキングガンズラングとタービランスとフィアットルクスで併走。最後尾にいたノーブルサターンがその後ろまで追い上げてきました。3コーナーの入口ではエメリミットがトランセンデンスの前に。トランセンデンスは最終コーナーを前に騎手が手綱を引く場面もあって後退。リッカルドが2番手で3番手にはタービランス。この3頭からタービランスが直線に入ると抜け出し,後ろを突き放して快勝。競り合うエメリミットとリッカルドの外からキングガンズラングとハイランドピークが並んで伸びてきて,4頭の2着争い。制した大外のハイランドピークが3馬身差で2着。内から2頭目のリッカルドが半馬身差で3着。外から2頭目のキングガンズラングがクビ差の4着で最内のエメリミットが1馬身半差で5着。
 優勝したタービランス報知オールスターカップ以来の勝利で南関東重賞6勝目。第30回に続いて埼玉新聞栄冠賞は連覇となる2勝目。ここは近況が好調の馬が揃い,激戦が予想されました。タービランスは勝つにしても僅差になることが多い馬なので,これだけの差がついたのは意外でした。大きく崩れるということがほとんどない馬で,もう8歳の秋ですが,まだ活躍することができそうです。Turbulenceは乱流。
 騎乗した大井の笹川翼騎手は先週の鎌倉記念に続いての南関東重賞13勝目。第30回からの連覇で埼玉新聞栄冠賞2勝目。管理している浦和の水野貴史調教師は南関東重賞7勝目。埼玉新聞栄冠賞は連覇で2勝目。

 パイレーツの瑞原が,4索を捨てたときにおかしいという直観scientia intuitivaが働いたという主旨の近藤の記述は,このような事情を考慮した上での認識cognitioだったと理解しなければなりません。そうではなく,単に瑞原が副露をしたプレイヤーにケアをするタイプであるという点だけに注目してはいけません。
                                        
 この局で最初に副露をしたのはフェニックスでした。瑞原はその後に7索を捨てて,フェニックスはそれをチーしています。さらに8萬を捨てて,この牌はアベマズがポンしましたが,このポンがなければ,おそらくフェニックスがチーをしたであろう牌です。ですからこれだけでみれば,本当に近藤がいっているように,瑞原が副露に対して丁寧にケアするプレイヤーであるのかということが,疑問に思われてしまうでしょう。さらに瑞原がそのような捨て方をしているのに対しては何の直観も働かず,4索を捨てたときにその直観が働いたというのは,矛盾したことをいっているというように解釈されるおそれがあります。ですが実際には近藤がいっていることは,間違っていないし矛盾してもいないのです。
 このうち,8萬については,ある特殊な事情があります。それはフェニックスが7索をチーしたときに,5萬を捨てていることです。麻雀では,プレイヤーが何を捨てるのかということは,他のプレイヤーにとっての情報になります。なぜなら,ある牌を捨てるということは,その牌は不要であるということを意味するからです。とくにこのときのフェニックスのように,失点の回避をあまり意識せず,自身の得点の獲得を目指す場合には,大きな情報になるのです。
 これは数字だけで説明します。5を捨てるということは,5が不要ということです。もし3と4を持っているとか,6と7を持っている場合は,5は不要ではありません。ですから,5を捨てたプレイヤーの手に,3と4がセットで含まれているとか,6と7がセットで含まれているというケースはありません。正確にいうと,もしそれがあるとすれば,2と3と4と5と5を持っている場合や,5と5と6と7を持っている場合に5を1枚だけ捨てるパターンです。この場合は2枚は不要なので捨てられるのです。
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新人王戦&パイレーツの手

2021-10-19 18:58:37 | 将棋
 11日に指された第52回新人王戦決勝三番勝負第二局。
 古賀悠聖四段の先手で矢倉。後手の伊藤匠四段は急戦を匂わせましたが持久戦にすることを選択。このために玉と飛車と角が集合するような陣形になり,どうするのかと思ったのですが,うまくほぐすことに成功しました。
                                        
 第1図の後手陣はぱっと見るとかなりの悪形に感じられます。ここで☖1四歩と突きました。先手は☗7九玉と囲いに向い,☖1三角に☗8八玉で囲いは完成。ただ後手は☖8六歩☗同銀の突き捨てを入れてから☖3五角と飛車取りに飛び出しました。
 ここで☗3六飛はあり,これは銀を1筋に追い返されますが,実戦よりはよかったのかもしれません。先手はそちらを嫌って☗2八飛と引きました。これには☖4六角。
                                        
 これで角が交換することが確定し,後手の飛車も働くこととなりました。これで後手が優位に立っているようです。第1図から先手が玉を囲わなければならないのであれば,実際は見た目ほど後手が悪かったというわけでもないようです。
 連勝で伊藤四段が優勝。棋士デビューから1年で棋戦初優勝を達成しました。

 おかしいと感じたというのは漠然としたものであって,実際にこのときに近藤が第三種の認識cognitio tertii generisで認識した事柄は,もっと具体的なものです。そしてそれは,僕がこの局の具体的な内容の検証の前にいっておいた,各々のチームが基本的にどのように打つかということと関係しています。
 パイレーツにとって最悪なのは,順位を落としてしまうことでした。一方,最高なのは順位を上げることです。しかし2位との点差よりも4位との点差の方が小さいのですから,最高の結果が出る可能性よりは,最悪の結果になる可能性の方が高いのです。このためにパイレーツは,3位という順位を受け入れて,このままゲームを終了させることが,最も現実的な選択肢です。そのためには,サクラナイツとアベマズには厳しく打ち,フェニックスに対してはある程度まで協力的に打つのが基本的なラインです。そして,それで4着には落ちないとしても,アベマズに対して失点してしまうことは,2位との点差が開き4位との点差が縮まって南4局1本場に移行するので,最悪に近いくらいよくない結果なのです。
 そういう状況であるにも関わらず,パイレーツはアベマズに対して失点する可能性がある4索という牌を捨てたのです。いい換えれば,アベマズに対して失点するリスクを負って4索を捨てたのです。ということは,パイレーツにはそのリスクを負うだけの価値があるということになります。それが何を意味するのかといえば,パイレーツの手が,順位を上げることが見込めるものになっているということです。近藤が具体的に認識したのはこのことです。つまりパイレーツが4索を捨てた時点で,近藤は,パイレーツの手が,順位を上げる可能性のある手牌になっているということを認識したのです。そして近藤はこのことを第三種の認識によって認識したのですが,僕がここで説明したことから分かるように,このことは第二種の認識cognitio secundi generisによって,論理的に認識するcognoscereことが可能な事柄です。ですからパイレーツの手牌が順位の上昇の可能性を秘めているということについては,アベマズの日向もサクラナイツの内川も,認識の種別に相違はあったかもしれませんが,認識した筈です。
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ドームスーパーナイトレース&躊躇

2021-10-18 19:08:07 | 競輪
 前橋競輪場で行われた昨晩のドームスーパーナイトレースの決勝。並びは宿口‐阿部‐武藤の埼玉,山田‐久米‐友定の西日本で斉藤と伊藤と田中は単騎。
 武藤と友定がスタートを取りにいき,枠が内だった武藤が誘導の後ろを確保。宿口の前受けとなり,4番手に斉藤。5番手に田中。6番手に山田。最後尾に伊藤で周回。残り3周のバックの入口から山田が上昇。バックの出口で友定までの3人が宿口を叩きました、4番手に宿口,7番手に斉藤,8番手に田中,最後尾に伊藤の一列棒状になって残り2周のホームを通過。バックに入ると伊藤が発進。山田を叩いて打鐘からかまし先行に。山田は車間が開き,第二先行のような形に。宿口はホームから発進。山田はバックで伊藤との差を詰めにいき,その勢いで伊藤を捲って先頭に。襲い掛かった宿口はホームの入口手前で久米の牽制を受けましたが,それを乗り越え,直線で山田を差して優勝。第二先行から粘った山田が半車身差で2着。宿口マークの阿部が4分の3車輪差で3着。
 優勝した埼玉の宿口陽一選手は6月の高松宮記念杯以来の優勝。そのときがグレードレースでは初優勝でしたから,GⅢはこれが初優勝。この開催は寛仁親王牌には出走しないメンバーでの実施。それであれば今年のGⅠを勝っている宿口が近況と実績から断然の存在で,開催自体のエース格でした。ここはその力をみせつけての勝利。単騎の3人のうち,伊藤は捨て身のレースとはいえ見せ場を作りはしましたが,斉藤と田中は宿口ラインを追うような競走になり,その点も宿口には味方したように思います。

 フェニックスと同様に,アベマズもまだテンパイに至っていたわけではありません。ですがそのことはほかのチームのプレイヤーが確実に認識するcognoscereことができるわけではありません。このひとつ前の巡目になる11巡目で,フェニックスは2筒を捨てるときにやや躊躇している様子が見受けられますが,これは近藤の精神mensの内で,それを捨てることでアベマズに対して失点する可能性があるという認識cognitioがあったからです。それでもフェニックスは最初にいっておいたように,4チームの中では最も得点の獲得を目指しやすい立場にあって,この牌自体は自身の得点の獲得のためには不要ですから,躊躇はしても捨てています。これは当然の選択であって,それはほかのチームのプレイヤーからみてもそうみえるでしょう。つまり,仮に近藤というプレイヤーが,副露に対してケアをするプレイヤーであると認識されていたとしても,この局面ではアベマズに対して失点があり得る牌を捨てたとしても,それはおかしいとは認識されないのです。
                                      
 これに対してパイレーツは,4チームの中では最も失点の防止に重きを置いて打つ筈のチームです。また,アベマズに対する失点は,仮にそれが順位を落とすものではないとしても,かなり悪い部類の結果です。それなのに4索という,アベマズに対する失点があり得る牌を捨てたことは,おかしいと感じられるのです。つまり近藤は著書の中では,瑞原明奈というプレイヤーについての第二種の認識cognitio secundi generisの蓄積が,おかしいという第三種の認識cognitio tertii generisの契機になったというように説明していますが,実際にはこうした状況を含めての認識であった筈です。いい換えれば,瑞原がどのような打ち回しをするプレイヤーであるのかということについては確実な認識がなかったとしても,これはおかしいと認識することができるプレイだったのです。したがってこのおかしいという認識は,それが第二種の認識であったか第三種の認識であったかということは別として,ほかのふたりのプレイヤー,すなわちアベマズの日向藍子にもサクラナイツの内川幸太郎にも共有されていたと考えなければなりません。
 ここからはこのおかしさの内容を具体的に考えます。
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秋華賞&ケア

2021-10-17 19:12:48 | 中央競馬
 第26回秋華賞
 ホウオウイクセルはゲートの中で立ち遅れてしまい2馬身の不利。先手を奪ったのはエイシンヒテン。向正面に掛けて3馬身くらいのリードに。2番手にソダシ。2馬身差でアールドヴィーヴル。4番手にスルーセブンシーズ。5番手にアンドヴァラナウト。6番手にアカイトリノムスメ。7番手にクールキャット。8番手にサルファーコスモスとアナザーリリック。10番手にスライリー。11番手にファインルージュ。12番手にステラリア。13番手にミスフィガロ。14番手にエンスージアズム。15番手にユーバーレーベンで最後尾がホウオウイクセルという隊列。前半の1000mは61秒2のスローペース。
 直線に入るところでエイシンヒテンにソダシが並び掛けました。その外から追ってきたのがアールドヴィーヴルとアカイトリノムスメ。ソダシは伸びあぐね,ここから抜けたのはアカイトリノムスメ。迫ったのはエイシンヒテンとソダシの間から伸びたアンドヴァラナウトと大外から追い込んだファインルージュ。最後は3頭の争いになりましたが,先んじていたアカイトリノムスメが凌いで優勝。外のファインルージュが半馬身差の2着で内のアンドヴァラナウトが半馬身差の3着。
 優勝したアカイトリノムスメはクイーンカップ以来の勝利。重賞2勝目で大レース初制覇。桜花賞が4着でオークスは2着でしたから,3歳の牝馬の中では実力上位の1頭。大レースを勝っていたソダシとユーバーレーベンは凡走となりましたが,2着馬と3着馬は実力馬ですので,概ね力通りの決着になったとみていいと思います。牝馬戦線では長く一線級で戦っていくことができる馬でしょう。父はディープインパクト。母はJRA賞で2009年に最優秀2歳牝馬,2010年に最優秀3歳牝馬に選出されたアパパネでその父はキングカメハメハ。アパパネは第15回を制しているので母仔制覇になります。
                                        
 騎乗した戸崎圭太騎手はチャンピオンズカップ以来となる大レース17勝目。秋華賞は初勝利。管理している国枝栄調教師はジャパンカップ以来の大レース21勝目。第15回,23回に続き3年ぶりの秋華賞3勝目。

 だれかがポンをすると,手番はポンをした次の順のプレイヤーになります。ここではパイレーツが捨てた8萬を,親であるアベマズがポンをしました。なので手番はまたパイレーツに移り,11巡目に入ります。つまりフェニックスとサクラナイツは,10巡目は手番が回ってこなかったということになります。
 次の12巡目に4索を引いてきたパイレーツが,その牌をそのまま捨てました。近藤は著書の中で,このときに直感的におかしいと思ったといっています。パイレーツのプレイヤーは瑞原明奈で,瑞原は普段は慎重に仕掛けをケアするけれども,このときはアベマズに対してケアをしている様子がみられなかったからだとその理由を述べています。この点は僕から分かりやすく説明しておきます。
 仕掛けをケアするということがいっているのは,副露したプレイヤーがいれば,そのプレイヤーに対して失点したり,そのプレイヤーの手がさらに進むことを防ぐような打ち方をするという意味です。つまり近藤は,瑞原はそのような打ち方をするプレイヤーであると認識していたことになります。これは近藤が瑞原と対戦したり,あるいは瑞原の麻雀を見たりしたことによって獲得した認識cognitioであり,第二種の認識cognitio secundi generisに属するといえます。Mリーグはチーム戦なので,個人の対戦成績について語ってもあまり意味がありませんが,瑞原と近藤が同じゲームに出場すると,近藤の方が上の順位でゲームが終了するというケースが多く,おそらく近藤は瑞原について,的確な認識を持っているものと思われます。副露したプレイヤーに対して大きな注意を払うということは,そうした認識の一部であって,かつそれはこのときの打ち方についておかしいと感じたことの原因causaの,少なくとも一部を構成しています。実際にアベマズの手には5索と6索がありましたから,4索は,アベマズにとっては必要な牌です。アベマズはまだテンパイはしていませんが,もしも8萬をポンした時点でテンパイしていたとすれば,パイレーツが4索を打つことによって失点していたかもしれません。ですから,近藤がおかしいと感じたことも正しい認識なのであって,これは第三種の認識cognitio tertii generisだといえます。
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