三軍散じ盡きて 旌旗倒れ
玉帳の佳人 座中に老ゆ
香魂夜 劍光を逐うて飛び...
青血化して 原上の艸と爲る
芳心寂寞として 寒枝に寄せ
舊曲聞き來りて 眉を斂むるに似たり
哀怨徘徊して 愁いて語らず
楚歌を聽きし時の如し
滔滔たる逝水 今古に流る
漢楚の興亡 兩つながら丘土
當年の遺事 久しく空と成る
慷慨尊前 誰が爲にか舞わん
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虞美人草 「曾鞏(そうきょう)」
項羽が垓下で、孤立無援に取り囲まれた時、決別の宴をはり、虞美人に歌を送り、彼女もそれに和し、
最後に項羽の宝剣で自決して果てた。
この血が土の上にしたたり、やがて巡って来た春に端麗な花が咲いた。
その花は、虞姫の在りし日の姿の様に悲しげに風に揺れていた。
人々はこの花を彼女の生まれ変わりと考え、その生涯を儚んで虞美人草と名づけた。
ひなげしの別名。
「虞美人」とは、漢の高祖劉邦と天下を争った項羽の寵姫の名。