スケッチブック 〜写真で綴るスローライフな日々2

写真を撮りながら、日々の暮らしや旅先で感じたことを書いています。
2016年からは撮った写真をイラスト化しています。

スローミュージック SELECTION Vo.38

2007年07月02日 | スローミュージック
Waltz for Debby/Bill Evans Trio

ジャズの関心が高まり出した若かりし頃、ビル・エバンスを初めて聴いた時の衝撃は探し物を見つけたような感激が走ったものです。タイトル曲「Waltz for Debby」は一変に好きになってしまいました。もともとコンボジャズから入信した経緯もあって、ピアノトリオを僕はつるんと飲み込んだようです。ビル・エバンスは短期間にいろいろ揃えて聴きましたけど、このアルバムは特別扱いです。何しろ美しい。1曲目「My Foolish Heart」のイントロを聴くだけで身体が溶けていくようです。2曲目の「Waltz for Debby」はあまりにも有名なジャズの名曲で今更解説を入れるのもおこがましい限りですが、弾けるピアノの旋律が軽やかで思わず心が揺れます。1961年に録音された時は全6曲構成のアナログ盤でしたが、CD盤では3曲分テイク2が追加され、最後に「Porgy(I Loves you,Porgy)」がボーナストラックとして挿入されています。プレーンなハンバーガーがダブルチーズバーガーになったくらいお得になっています。マイルス・デイビス・クインテッドでピアノを担当し、一躍注目を浴びたビル・エバンスがスコット・ラファロのベースとポール・モチアンのドラムというシンプルなジャズを世に送り出し、その後のピアノトリオの方向性を示したことはジャズの歴史でもあるのですが、余りにも優雅で泥臭いところを感じさせないところがインテリ層に受けたことは想像に難くありません。かといってお高く人を寄せ付けないわけでもなく、どこか切なく淋しい気持ちにさせてくれる魅力の深い音楽です。随分前に浅草の雷門の前で店を構えてるジャズ喫茶「伽藍(がらん)」に行ったことがあります。夜中ぶらぶらしていたら、地下の階段からジャズの音が流れてきたので吸い込まれるように飛び込みました。今では有名なジャズ喫茶ですけど僕が訪れた時は、開店して間もない頃でした。憧れのマッキントッシュのアンプにJBLのスピーカー(エヴェレスト)、サスペンションのようなインシュレーターで支えられたターンテーブルのオーディオに目を奪われました。大音響でたっぷりとジャズを聴かせてくれるお店でマスターとも気が合いいろいろ話をしました。その時偶然ですが僕はビル・エバンスの「Waltz for Debby」を流してもらいました。客は僕の他に誰もいませんでした。このアルバムはニューヨークのライブ盤ですが、狭いホールだったらしく、よく聴くと客の話し声や咳払い、食器とナイフ・フォークが重なる音などが混在しています。そのお店で聴いた時、オーディオが良過ぎてピアノとベースとドラムの位置が実感できました。目を閉じて聴き入ると、すぐそこにライブを楽しむお客の亡霊までもが現れたのです!あの時ばかりは臨場感というものはこういうことなんだと鳥肌が立ちました。後になって知りましたが、ビル・エバンスのマニアはこのアルバムを聴く時、テーブルと椅子と食器をこの通りにレイアウトするなんて伝説があるくらいです。ちょっと愛し過ぎ?

Waltz for Debby
コメント (2)
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