金柑 2017年11月03日 22時20分57秒 | 俳句・短歌・詩等関連 帰り道、青さは残るが金柑のたわわに成る木を見つけた。季節は晩秋から冬へ、来週7日は立冬。 ★金柑の黄を深めおり六地蔵 菅原 涼 ★金柑や年寄り順に消ゆる島 川崎展宏 ★老いて割る巌や金柑鈴なりに 西東三鬼 ★乳児泣きつつ金柑握り匂はしむ 加藤楸邨
銀杏黄葉(いちょうもみじ) 2017年11月03日 20時50分21秒 | 俳句・短歌・詩等関連 20時半に帰宅。おもったよりは早く帰ってきた。風を感じることもなく暖かい一日であった。国会周辺の道路は銀杏が色づきはじめ、美しかった。銀杏も大量に落ちている木が何本かあった。 生々しい駆け引きとは逆に、国会の外側はせめて美しく囲いたいというのであろうか。 ★黄葉して思慮深々と銀杏の木 鷹羽狩行
十三夜・後の月 2017年11月03日 11時05分56秒 | 俳句・短歌・詩等関連 本日は十五夜、満月は明日。一昨日の1日が「のちの月」の十三夜であった。「のちの月」の別名は栗名月、豆名月、ということを知ったのはいつだったか。ずいぶん昔だった気もするが、実際に「のちの月」というのを実感したのは俳句を作ってみてからのこと。 中国から伝わったのではないようで、古くからの収穫祭のひとつが形を変えたという説明もある。要するに起源は不明らしい。栗や枝豆を供えたからということらしい。「名残の月」ともいう。「十五夜と後の月の両方を楽しまなければ無粋」などという脅迫まがいのことばは月を楽しむこととはまったく無縁と思える。 ★後の月かしこき人を訪(と)ふ夜哉 与謝蕪村 ここで「かしこき人」とは「普段近づきがたい人」の意らしい。賢い人というと嫌味もあるが、現代ならば「敷居の高い人」くらいか。私が想像したのは、例えば仲人、尊敬する学校の師・先輩、あるいは義父・義母。ひょっとしたら上司、これは生臭すぎるか。 月の光は透明、それに照らされると、ヘタな作為や繕いや仮面は見透かされる。60代を過ぎた私たちでは、親世代に当たる師や仲人などは少なくなっている。同世代でも少しずつ身近から消えるように亡くなっていく。世代の近い先輩や畏友という残った「かしこき人」がいることがうれしい。 ★十三夜書裡の恋愛ふるびたり 加藤楸邨 「山脈」所収、1950(S25)年の作らしい、作者45歳。66歳の私からすると45歳でこの句の心境というのが、うまく想定できない。私の歳のとり方が幼いのだろうか。 ★麻薬うてば十三夜の月遁走す 石田波郷 肺結核に冒された波郷が、ろっ骨を切除した手術後に痛み止めとして「麻薬」を打ったのであろう。痛みで精神的にも、物理的にも月を見ることもできない状況が切実である。月を見る気持ちにもなれない厳しい症状が「月遁走す」に込められていると思う。まさに月が「遁走」したのであろう。翻って生きるための強い意志をも私は感じる。