伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

スキミング 知らないうちに預金が抜き盗られる

2007-04-29 08:57:32 | ノンフィクション
 カード犯罪の手口と日本の業者のセキュリティの甘さについて解説した本。
 カード情報が、クレジット加盟店でのカードリーダーでの読み取り、住居等への侵入、さらにはATMのケーブルに無線式スキマーを仕掛ける(27頁)などの手口で盗まれていること、非接触式ICカード(Suicaとか)になれば財布の中にあっても海外の犯罪グループが使っている無線式スキマーなら2~3m離れたところから読み取れる(68~69頁)というような話があれこれ書かれています。
 カードのセキュリティの話も、使い捨てカイロ(鉄粉)とストッキング(ふるい)とセロテープで偽造カードが作れる(14~15頁)なんてことが書かれていて、あ然とします。
 さらには防犯性能の高い鍵に与えられるCPマークが本当に高性能の鍵は警察OBの天下り先の大手企業が取り扱っていないので認定されない(161~162頁)とか、アメリカなどではホームセキュリティでは警察に通報されて警察が来るのに日本では警備会社が泥棒がいなくなった15分とか20分後にやって来るだけで、その理由は警察が直行するようになると警備会社の経営が困難になって警察OBの天下り先が減るからとか(162~166頁)読んでビックリするような話が書かれています。


松村喜秀 扶桑社新書 2007年3月1日発行
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目の病気がわかる本

2007-04-29 08:16:23 | 自然科学・工学系
 視力を失う原因となる病気、加齢黄斑変性、白内障、緑内障糖尿病性網膜症等についての解説本。
 目のしくみとか症状、病気の原因とかについての説明が、普通より少し配慮してあってわかりやすく感じました。目の病気の症状でいつも出てくる飛蚊症も、たいていの本は虫が飛んでいるように見えるとか言葉で書いてあるだけなんで今ひとつイメージできてなかったんですが、「こんなふうに見える」って絵が書いてあって(32頁)納得しました。眼球の中での房水の流れとか、網膜剥離の機序とかも初めて知りました。特に詳しいということじゃなくてむしろお手軽な分量なんですが、説明で飛ばしがちなことが一言入っているためにわかりやすくなっているのだろうと思います。専門家から素人への説明の仕方としても参考になりました。


岩琢也監修 法研 2007年3月31日発行
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イッキ乗り いま人間は、どんな運転をしているのか?

2007-04-28 14:17:26 | ノンフィクション
 様々なものの運転についてのルポ。
 どちらかというと乗り物以外の話の方がおもしろく読めました。例えば介護用のパワー・アシスト・スーツ。アルミ板とエアバッグの駆動機構を筋肉につけたセンサーの信号で動かして自力の倍の力を出すしくみとか(127~134頁)。「悲しき人形つかい」で読んだときは空想と思っていたんですがすでに実用化間近だったんですね。鵜飼の鵜匠は世襲の宮内庁式部職だとか(187頁)。知りませんでした。
 モーターパラグライダーのところでは、雲に入ると「微妙に湿気が体にまとわりつく感じ。冷たくはないです。逆に、サランラップが肌にくっついたような感覚かな。」(230頁)っていうのがいいなあと思いました。考えてみたら素肌をさらしたまま雲を突き抜ける乗り物ってあまりないですからね。


下野康史 二玄社 2007年3月23日発行
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冥王星パーティ

2007-04-28 08:19:15 | 小説
 高校生時代は純朴で人づきあいの苦手な青年だったが「自己改造」の結果証券会社に就職して派手な女性関係を結びつつそれに疲れてきている桜川衛くんと、高校時代は奥手で堅実だったが次々と男に振り回されて傷心の都築祥子さんが、祥子が作成したアダルトサイトをきっかけに再会するお話。
 社会に出て疲れた頃の28歳が、自分なりの憧れで始めたライフスタイルに疑問を持ち始めて、何か違う、これは「ホントの自分」じゃないと感じていたところに、11年前の高校生時代に遭遇し、純朴だったあの頃を思い出して「原点に返ろう」って思う。そう思いたい気持ちはわかる(40代でもそう思うことはある)けど、当時は当時で今が正しいとか原点だと思ってたわけでもないはずだし、やっぱり逃げだとも思います。そう思っていても、時々はそこに浸りたくなる魅力がありますけどね。
 それはさておき、作品としては、ちょっと散漫な感じだし、最後望月が遠慮するのはそれまでの人物造形からは違和感があって都合のいい設定だと感じますが、最後は前向きになれるのとエンディングの設定には好感が持てました。


平山瑞穂 新潮社 2007年3月20日発行
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みずうみ

2007-04-27 08:25:07 | 小説
 第1章は時々増水し村に豊穣をもたらす不思議な湖と湖とつながり水をはき出しつつ語る眠り人や湖と鯉を守る人などが醸し出す幻想的な小説。第2章、第3章は時と場所が違う舞台で錯綜する細かいエピソードの中に第1章の湖や登場人物との関連が示唆され、時空が相対化され輪廻・転生がイメージされますが、明確な展開や方向性は示されず、そういう感覚の提示に終わっていると思います。第1章が「文藝」で発表され、第2章・第3章が書き下ろしで追加されていますが、第2章・第3章は物語が続くわけでもなく、第2章は第1章の幻想的な雰囲気を壊していますし、第3章まで読み通しても(はっきり言って読み通すのはけっこう辛い)そうだったのかと納得するわけでもありません。第1章の幻想的な物語だけで終わっておいた方がよかったと、私は思いました。


いしいしんじ 河出書房新社 2007年3月30日発行

追伸:朝日新聞が4月29日付で書評掲載
第3章は作者の体験を反映していたんですね。知りませんでした。
でも、それが物語としてうまくいったかというと私にはやはり疑問。
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ひとり日和

2007-04-26 08:01:56 | 小説
 ジコチュウで意地悪で盗み癖のある20歳フリーター女性の主人公が遠縁の70歳過ぎおばあさんと同居して過ごす1年を描いた小説。
 おばあさんの飄々とした様子に味がありますが、まあ、よく読むパターン。
 主人公はどうも意地悪くて私には感情移入できません。こういうのが売れたっていうのは(大部分は中身と関係なく芥川賞とその報道で売れたんでしょうけど)今時の若者にはこれくらいが普通で共感できるってことかも知れませんけど。主人公を尖らせもしないで、しかし丸くしないでざらついた違和感を残すあたりの間合いがジュンブンガクしてるってところなんでしょうか。
 おもしろいって小説でもなく、設定にも文体にもさして新鮮味は感じられません。選考委員たちの激賞ぶりをあてにして読むと期待はずれでしょう。白紙で読んだら悪くはないんでしょうけど。


青山七恵 河出書房新社 2007年2月28日発行
コメント (2)
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名もなき毒

2007-04-25 07:55:29 | 小説
 紙パックウーロン茶への毒物混入による殺人事件と解雇されたアルバイトの怨念をめぐるミステリー小説。
 解雇されたアルバイトの身勝手で被害者意識の強い姿勢が強く印象づけられます。前半でのこの人の様子は、弁護士なら(紹介者のいる人の相談しか受けない弁護士でなければ)たいていは経験している感じで、さすが元弁護士事務所勤務なんて思いました。でも同時にそういう見方をしてしまうと見えなくなる事実もあるし、後半でちょっと極端に走らせすぎて、今の経営者側がやりたい放題に近い労働シーンを考えると、労働者側に偏見持ち過ぎ/経営者側の見方じゃない?とも思ってしまいます。犯罪者となるのは比較的貧しい労働者で、主人公は財界人の逆玉だし。
 毒殺事件(青酸カリ)、シックハウス・土壌汚染の毒(有害化学物質)、人間に潜む邪悪で悲しい怒りの毒を交差させ、最後の人間の性を、正体がわかり名付けられれば対策も講じられるがそれに至らない名もなき毒と位置づける(451~452頁)のがタイトルの由来。
 ところで相続人が子どもだというときに遺留分が3分の1(212~213頁)は2分の1の間違い。それくらいは調べて欲しかったですね。


宮部みゆき 幻冬舎 2006年8月25日発行
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自分の体で実験したい

2007-04-24 19:22:26 | 自然科学・工学系
 科学の発展の過程で未知のことがらについて自分の体で人体実験をした科学者10人の話。
 人間についても動物と同じかどうかわからなかったり、動物は感じたことを教えてくれないし実験に積極的でもないから、人体実験が必要になったときに、他人にやらせるわけにはいかないとか、やっぱり自分で知りたいからと自分の体を使ってしまう。崇高とも、切なく悲しいとも見える科学者の性。10人の人選は科学史的な価値というよりもディテールを示す資料の有無にかかっているので、必ずしもバランスはよくない感じですし、読み物としてみるとそれでももう少し人間の機微を示すエピソード・ディテールが欲しいところ。それにしても致死性の謎の病気の解明のために自ら感染して死んでいった医者たちの話は悲しすぎる。


原題:Guinea Pig Scientists : Bold Self-Experimenters in Science and Medicine
レスリー・デンディ、メル・ボーリング 訳:梶山あゆみ
紀伊國屋書店 2007年2月17日発行 (原書は2005年)
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ふぞろいな秘密

2007-04-23 08:13:33 | ノンフィクション
 「ふぞろいの林檎たち」の女優石原真理子の回顧録。
 ドラマの役柄や「プッツン女優」という言葉から虚像が流れ世間の人は鵜呑みにしていると嘆いていますが、自分で書いた本を読んでも、少なくとも「恋多き女」であることは間違いないでしょう。こんなに次々と共演する男優とHした話が並んで、それを自分で認めているわけですから、芸能界の男女関係って世間で言われているよりさらに乱れているって思ってしまいます。
 他の男優は名前入りでHしたことが書かれているだけですが、玉置浩二との関係はかなり細かくDV男として書かれています。恨み骨髄なんでしょうね。
 入信していた新興宗教や霊感商法被害のことも書かれていますが、こっちはあっさりで食い足りない感じ。


石原真理子 双葉社 2006年12月10日発行
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パチンコの経済学

2007-04-22 20:51:57 | ノンフィクション
 30兆円産業と呼ばれるパチンコ業界について経営サイドから検討した本。著者はパチンコチェーンの元役員。
 近年パチンコ産業は年間売上30億円弱で横ばい、パチンコ人口は約1710万人で1995年からほぼ半減、その理由は機械が射幸性が強く(ハイリスク・ハイリターンに)なりヘビーユーザーだけが残り1回につぎ込む金が増えたためだそうです。
 そして著者の推計によれば日本のギャンブルによる客の純損失は2005年で約5兆3641億円でその3分の2をパチンコが占めているそうです(44頁)。競馬、競輪、競艇、オートレース、宝くじ、サッカーくじを全部あわせてもパチンコの半分・・・。日本のギャンブル支出はイギリス並みで世界トップレベルだとか(45頁)。これにはビックリしました。自己破産で相談者に聞いたら半分以上はパチンコやってますもんね。
 アメリカのカジノのスロットマシンなんかは単調で著者には物足りなく感じたが、アメリカ人に言わせれば日本のパチンコのように釘をいじるのは犯罪行為で、リーチ等の過剰な演出はギャンブル依存症の温床になるから問題だそうです(74~76頁)。現に依存症の人がたくさんいますからね。


佐藤仁 東洋経済新報社 2007年3月15日発行
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