伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

悪魔と私の微妙な関係

2013-08-31 22:52:55 | 物語・ファンタジー・SF
 生物多様性助成機構なる独立行政法人に勤める熱意のない一職員にして、裏稼業でバチカン非公認のエクソシストとして怪しげな一見してやくざ風の自称神父のヨセフとともに悪魔払いのアルバイトを続けている真崎皓乃(これで「あきの」なんて読めないでしょ、ふつう)27歳が、職場に突然登場した外資系ファンド出身の凄腕の上司に振り回され、職場の同僚たちが悪魔に取り憑かれる騒ぎに対応していくオカルト系ファンタジー小説。
 悪魔払いのストーリーと、皓乃と5年交際して長すぎた春を感じた義斗との結婚話が並行して進んでいきますが、ストーリーとは必ずしも関係ない独立行政法人の職員たちの事件への対応ぶりがいかにもお役所らしくて、いらだたしくも思えますが笑えます。荒唐無稽な話ですが、そういうところが妙に現実っぽくて、不思議なバランス感がありました。
 悪魔払い、最初だけ「エッケ・クルーケム・ドミニ」(主の十字架を見よ)ってラテン語で始めて後は全部日本語って、それらしく見せるっていう観点からでもかえって嘘くさいように思えますが。


平山瑞穂 文藝春秋 2013年6月20日発行
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タラ・ダンカン10 悪魔の兄弟 上下

2013-08-29 22:55:29 | 物語・ファンタジー・SF
 魔術が支配する「別世界」の人間の国「オモワ帝国」の世継ぎの18歳(10巻時点)の少女タラ・ダンカンが、様々な敵対勢力の陰謀や事件に巻き込まれながら冒険するファンタジー。
 10巻では、9巻の終わりで悪魔の王アラカンジュとドラゴンで3巻あたりまでタラの師匠だったシェムの2人がそろってタラに求婚したと、例によって次号に続くをやったのを受けて(今回はまともに受けて)、5000年前の「裂け目の闘い」で煉獄に封じ込めた悪魔と通商などの関係を持つのかについての議論・対立、悪魔との交渉・駆け引きとそれをめぐる各種族の思惑を中心に展開します。タラが伯母のリスベス女帝にならって政治的な判断に長けていき、帝国内での地歩を固めて行く点、カルとのロマンスでも性的な関係を深めて行く点ともに、少女から大人への成長を読み込んでいく巻になってきている感じです。
 原題は DORAGONS CONTRE DEMONS (ドラゴン対悪魔)ですが、内容的には人間(主としてオモワ帝国、リスベス女帝、タラ)と悪魔の関係、駆け引きが中心で、ドラゴンはほとんど添え物になっています。読んでみると、日本語タイトルの「悪魔の兄弟」の方がしっくりときます。
 10巻では、シリーズを通しての最大の敵のはずのマジスターがかなり影が薄くなっています。原書が2013年9月5日に発売される予定の11巻「世界戦争(原題:LA GUERRE DES MONDES)」も悪魔との戦いになるはずで、完結するはずの12巻をマジスターとの戦いでクライマックスに持って行けるのか、怪しいというか気になるところです。


原題:TARA DUNCAN,DORAGONS CONTRE DEMONS
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディア・ファクトリー 2013年8月2日発行

9巻については2012年9月1日の記事で紹介しています。
コメント (2)
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雪と珊瑚と

2013-08-27 20:27:23 | 小説
 母親からネグレクトされ家に食べ物がない状態で育ち高校を中退して働き自らもまたシングルマザーとなった21歳の山野珊瑚が、働くために0歳児の娘雪を預けようとして、自宅で赤ちゃん保育を始めようと張り紙をした元修道女くららを訪ねたことから、元の勤務先のパン屋の経営者と従業員、くららと甥の農家とその従業員らの援助を得て、鎮守の杜の廃屋を借りて野菜たっぷりのお総菜カフェの起業をすることになるシングルマザー奮闘小説。
 珊瑚の場合、たまたま出会った周囲の人々に恵まれ、多くの人の助けを得て、結果的に信じられないほど順調に進むわけですが、それでもなお明日は客が来なくなるかもしれない、いずれは客が来なくなるかもしれないと考えて不安になり今を際限なく働いてしまうという心理は、同じ零細自営業者として共感するというか身につまされます。
 小説としてのポイントは、起業物語よりも、家庭での愛を知らずに疎外されて育った珊瑚が周囲の人から温かい支援を受け、孤独だと思っていたところから良好な人間関係をつくっていく過程、乳児の娘に振り回されながら娘の成長に感動し母子ともに成長していく過程の2つの成長物語にあると思います。絶望的な状況からのスタートで人生を切り開いていく、読んで元気になれそうな作品です。


梨木香歩 角川書店 2012年4月30日発行
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ビッグデータの覇者たち

2013-08-26 21:43:00 | 実用書・ビジネス書
 膨大なデータを処理・分析し、一つ一つでは意味を持たない大量の情報を全体像や組み合わせからの傾向を把握するなどして活用するビジネス、身近な例でいえば検索サイトやユーザーにあわせた広告表示などについてレポートした本。
 ビッグデータビジネスの覇者たちについて、グーグルは公開情報(ウェブサイト、ブログ等)の収集と傾向分析で成長してきたので、ウェブ世界とは異質の閉鎖的な関係を前提とするソーシャルネットワークについてはどう扱っていいのか困っていて大きく遅れを取っている、アップルはクラウドには弱い、アマゾンは膨大な注文を処理し在庫を管理し支払を管理しサーバーが壊れても回線が切れてもデータが消えないような堅牢なシステムを構築しその余裕部分を貸し出すホスティングサービスでネット世界を下支えしていて今ではシリコンバレーのウェブやモバイルのベンチャーでアマゾンの世話になっていないところを探す方が難しいなどの話が書かれていて興味を引きます。
 商品の注文・購入履歴はもちろん、ウェブの閲覧履歴、検索履歴、さらにはメールの内容まで、これらのビッグデータビジネスはユーザーの個人情報を蓄積・分析・利用しているわけで(ほとんどの人が読まない長大な約款の中に、一読してもわかりにくい書き方でそのことが書かれていて、利用開始時にそれに「同意する」のボタンを押さないとサービスが受けられない形になっているのがふつうですが、検索サイトの場合はプライバシーポリシーなどにそういう記載があるだけで「同意」の確認はされていません)、個人情報漏洩のリスクと、漏洩しなくてもその企業が個人情報を集積・分析していることへの気持ち悪さを超える利益がユーザーにあるのかが問われるところです。それへの反発からアメリカではダックダックゴーなどの個人情報を蓄積しないといっている検索サイトの利用が増えていると報じられていますが。


海部美知 講談社現代新書 2013年4月20日発行
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新自由主義の帰結 なぜ世界経済は停滞するのか

2013-08-25 18:10:53 | 人文・社会科学系
 大きな政府による経済管理は非効率であるだけでなく人間の自由を奪うとして戦後資本主義・ケインズ経済学を批判して登場した新自由主義が、アメリカ経済を復活させたというのは誤りであり、サブプライム金融危機は新自由主義の理論と政策の誤りに起因するなど、新自由主義を批判する本。
 ニューディールの考え方を受け継いだ戦後資本主義・ケインズ経済学は大きな政府によりむき出しの市場の力を規制して貧困・不況・不平等という古典的な資本主義の病を抑えていた。しかし、新自由主義はそれらの制度を解体し、減税や規制緩和により金持ちと企業をやる気にさせ富を創出すれば恵まれない人々にも富が行き渡ると主張して、富裕層に対する減税と規制緩和を押し進めたが、結果は富裕層への富の集中と労働者の賃金抑制、つまり格差拡大であった。アメリカで共和党保守派は小さな政府を標榜し財政規律を重んじるとされているが、現実には共和党政権時代(レーガン、ブッシュ父子)に富裕層への減税と軍事支出の拡大で財政赤字を拡大しており、金持ちと企業に対する人気取り(ばらまき)によって財政を悪化させたのは共和党保守派である。というようなことが指摘されています。
 この本では、日本では、新自由主義的な政策によって、アメリカ以上に労働者の賃金が抑制されているということも指摘されています。輸出依存型大企業の利益を最優先して巨額の資金を投入して円安誘導をし、消費税は増税、法人税だけは減税というアベノミクスと、派遣法について企業側の派遣労働利用期間の制限を全面撤廃して正社員の派遣労働者への切替を促進しながら個別の派遣労働者は3年で切り捨てというこれまでなら考えられないほどあからさまな経営者側のやりたい放題・雇用の不安定化促進の改正が平然と進められているのをはじめ、労働規制の緩和を押し進める現政権の動きを見ていると、この本が指摘する新自由主義の政策による格差拡大はアメリカ以上に日本に当てはまりそうです。


服部茂幸 岩波新書 2013年5月21日発行
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波打ち際の蛍

2013-08-24 19:37:33 | 小説
 大学講師の元恋人のDV・暴力的セックスで傷つき自殺未遂を起こして仕事も辞め親元からカウンセリングに通っていた川本麻由が、エレベーターの前でうずくまっていた同じカウンセリングに通う年上の男植村蛍と知り合い、蛍と親密になりたいが蛍から求められる度に体が拒絶するという状態で揺れ動く、トラウマ系恋愛小説。
 蛍に触れられると心が離れたりフラッシュバックを起こして、体に触らないでと叫び、1人でいるときも手の甲をかきむしって自傷行為を繰り返す麻由の揺れる心。それが異性(男性)に対する嫌悪感からであればわかりやすいのですが、麻由自身蛍とキスしたい、セックスしたいと欲情しながら現実の場面では体が受け付けないという設定は、より哀しいものがあります。
 他方、年上30歳~31歳の蛍。何度も麻由の拒絶反応に会いながら、会う度に手を握り、キスをし(試み)度々麻由をパニックに追い込み拒絶反応を示させてしまう。学習能力がないのか、欲情を抑えられないのか、学生の設定ならともかく、もう少し大人の、抑えた対応ができないものか。作者の目からは、何歳であれ、男なんて会う度に体を求めてくるものと見えているのでしょうね。麻由にそれに応えられない自分が悪いと思わせているわけですから、男がそういうものであることは変えがたい大前提で、それを少しでも主観的には抑えようとし、言葉では受け入れている蛍はましな方で愛すべき存在と考えているのでしょう。そういう捉え方も(男性読者としてそういう捉え方をされるのも)ちょっと哀しい感じがします。
 タイトルは、麻由と海に行った蛍が波打ち際をスニーカーのままで歩き、濡れるよと指摘されたときに、自分が白線で、ちょっと目を離したら流されていきそうな麻由を心配してのことと応える場面から。それを聞いた麻由は蛍に強く抱きつきたいという衝動を感じつつ現実には蛍に背を向けます。麻由の心理描写としては蛍の保護者目線・上から目線に対する反発はなく、むしろ好感を持っているように描かれているのですが、私には、その蛍の保護者目線と蛍の現実の行動との釣り合い、それに対する疑問も、隠れたテーマになってるように思えました。


島本理生 角川文庫 2012年7月25日発行 (単行本は2008年)
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荒野 12歳・ぼくの小さな黒猫ちゃん 14歳・勝ち猫、負け猫 16歳・恋しらぬ猫のふり

2013-08-23 09:43:30 | 小説
 恋愛小説の売れっ子作家にして好色のモテ男山野内正慶の娘山野内荒野が、中学入学の日に一目惚れした同級生神無月悠也に思いを寄せつつ、荒野を育ててくれた家政婦の奈々子(実は父の愛人)が追い出され、父が悠也の母神無月蓉子と再婚し、その後も浮気は続きといった父親をめぐる女性関係に悩まされ、年上の彼がいるスポーツ万能の麻美、人目を引く美少女で実は同性愛者の江里華たち親友や、荒野に思いを寄せる同級生阿木との関係に振り回され癒されながら成長していく青春小説三部作。
 受け身で接触恐怖症の12歳の荒野が、大人たちの修羅場や悲嘆にも動じないで受け止められる16歳へと成長していく様子が全体を通してのテーマになっています。いつも大人の女性(奈々子・蓉子)に迎えられ動揺したり緊張したりだった荒野がラストシーンでは泣き崩れる大人の女性を迎えるという描写が象徴的です。
 1巻と2巻で作り上げた浮気を続ける父とそれを知りつつ耐える蓉子、隔離されつつ思い合う悠也と荒野、荒野に思いを寄せる江里華という構図を、3巻では壊し、新たな展開を図っています。2008年に単行本化するときに3巻が追加して書き下ろされたという事情のためかもしれませんが、定着した関係を壊すことで新たな関係の模索・構築と成長が描けるという形になっています。
 私の目には、脇役ではありますが、奈々子の思いと江里華の忍ぶ(相手には告ってるから忍ぶより耐えるか)恋が切なく感じられました。
 阿木の荒野への対応。姉たちに揉まれて女性慣れしているという設定なのにもう少しスマートにやれないものかとも思いますが、恋する男、ましてや男子高校生ではこんなものかとも…やはり切ない?


桜庭一樹 文春文庫

1巻:12歳 ぼくの小さな黒猫ちゃん 2011年1月10日発行
2巻:14歳 勝ち猫、負け猫     2011年2月10日発行
3巻:16歳 恋しらぬ猫のふり    2011年3月10日発行
単行本は2008年5月発行、ファミ通文庫で1巻は2005年6月、2巻は2006年1月発行
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社会を変える仕事をしよう ビッグイシュー 10年続けてわかった大事なこと

2013-08-22 20:00:58 | 人文・社会科学系
 ホームレスが街頭で販売する雑誌「ビッグイシュー日本版」の経営者が、その経営理念等を語る本。
 ホームレスへの支援をビジネスとして持続可能なものとするため、雑誌をつくりそれをホームレスが街頭で1冊300円(当初は200円)で販売しその半分以上の160円を販売者であるホームレスが受け取る(140円で仕入れる)という仕組みを有限会社の枠組で作り、最初の4年間が赤字、その後4年間黒字となったが、東日本大震災後また赤字になり、累積赤字が4250万円だそうです(95ページ)。今のご時世で、新創刊雑誌が10年もったこと自体大健闘だと思いますが、運営側は大変でしょう。
 中からか外からか、仕事だけでなくもっと生活全般のめんどうを見て欲しい、ビッグイシュー日本として独自に彼らの寝る場所を提供するべきだという意見があったことを紹介し、著者はそれはやらないと反論したと述べています(34ページ)。人権派とか社会派とか呼ばれる弁護士の場合も同じですが、社会的に評価を受けることをしていると、あちこちからもっとあれもこれもという要請が来ることはありがちですし、やっている側自身がもともと人のためになることをしたいという気持ちですから手を広げたくなりがちです。しかし、現実に持続可能な範囲をきちんと見極めないとどこかで破綻するわけで、そこははっきりしておいた方がいいと思います。
 販売員にもっとしっかり管理・指導しないのかと聞かれるが、いつどのように売るかは販売員の自由に任せ、いつでも始められるしいつでも辞められるところがよいと著者は紹介しています(122~123ページ)。その方がホームレスが現実的に続けやすいということはその通りでしょう。労働者側の弁護士の目からは、販売業務をしっかり指揮管理したら実質的に労働契約と評価されて最低賃金法の規制がかかるからねという意地悪な指摘もできますが。
 組織論として、社会的企業の組織には最低3人は必要で、1人は突っ走ってチームを引っ張る人、もう1人は正気の人で時に考えて引き止めたりする人、3人目は他の2人と全く違う視点をチームに持ち込む人(70~71ページ)、仲間はセンスは共通しているがやっていることや考えていることがまったく違う方がいい、研修などで技術や知識は身につけることができるがセンスのようなものは教えることができない(110~111ページ)というのは、至言だと思います。


佐野章二 日本実業出版社 2013年7月1日発行
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レガッタ! 1・2

2013-08-18 10:35:14 | 小説
 名門高校女子ボート部に入った初心者女子高生飯塚有里の奮闘を描くスポーツ青春小説。「主人公・飯塚有里が在籍する埼玉県立美園女子高等学校は、浦和第一女子高等学校をモデルにしていますが、あくまでフィクションであり、実在の人物、団体等名とは関係ありません」とモデルを明らかにしているのがむしろ潔い感じがします。
 1巻、2巻を見る限り、いずれも新学期に始まり、3月の全国選抜で終わり、各巻毎に1学年が過ぎています。3巻では有里が高校3年生になるわけですが、その3巻は2013年8月9日に発売され、シリーズは3巻で完結したそうです(作者のブログに「完結編」と明記されてました)。
 中学教頭の父親に高校受験のために中2でバドミントン部を退部させられた飯塚有里は高校に入ったら好きな部活をやると宣言しバドミントン部に仮入部するが中3まで続けていた同級生との実力差を見せつけられ、中学にはない競技を探し、ボート部に入部する。しかし、他の1年生は新人歓迎行事「漕ごう会」で結束しており、特にボートについて知識があり目的も明確な木崎美帆と対立し、有里は孤立する。1巻では、ボート部内での有里の孤立感からスタートし、次第に人間関係をつくっていく過程が描かれ、2巻では人望を得た有里が1年生の人間関係、インターハイ予選当日の負傷による屈辱の予選落ちとそれに対する自責の念と人間関係の亀裂に悩む様子が描かれます。訓練と試合も描かれていますが、どちらかというとボート部内の人間関係の方に比重がある感じです。1巻、2巻とも終盤のクライマックスとなるはずの天竜川での全国選抜の決勝レースの様子・結果を書かないというあたり、スポーツを題材にしつつスポーツそのものよりも人間関係を描く小説として話題を呼んだ「バッテリー」を意識しているかも。


濱野京子 講談社

1巻 水をつかむ 2012年6月28日発行
2巻 風をおこす 2013年3月28日発行
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幸せの条件

2013-08-18 08:20:07 | 小説
 理化学実験ガラス器機専門メーカーに就職したが実験器機がまともに扱えず在庫管理・伝票整理に回されたダメダメOL瀬野梢恵24歳が、社長が試作したバイオエタノール精製装置の売り込みのために長野県の農村でバイオエタノールの材料となる米の作付をしてくれるよう農家を勧誘するという飛び込み営業を指示され、うまく行かず途方に暮れているところを、休耕田を借りて稲作・畑作の代行をする農業法人の社長に拾われて農業の手伝いをするうちに、東日本大震災の被災者を支援したいという気持ちもあり、農作業にのめり込むようになり、次第に生きがいを見つけていくという農業青春小説。
 ダメダメだった主人公が、農業法人社長の無愛想な対応や同僚の男たちの無骨さにひぃひぃいいながら、社長の妻と娘のサポートを受け、次第に作業に慣れ地に足のついた見方ができるようになり成長していくという流れがストーリーの中心でもあり一番の読みどころです。
 農作業というか、農業機械の仕組みや使い方についてあれこれ書かれていて、子どもの頃から持っていた農業のイメージを変えてくれるという副次的な効果もありました。


誉田哲也 中央公論新社 2012年8月25日発行
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