伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

「うつ病」の再発を防ぐ本

2023-07-31 21:20:19 | 実用書・ビジネス書
 うつ病の要因と治療のプロセス、ぶり返しの要因と再発予防のための生活スタイル、家族の望ましい対応等について解説した本。
 うつ病は(時間をかければ)ほとんどの人が完治すると説明されて、ホッとするのですが、他方で再発率は高く約60%、完治1年後の再発率が約40%という報告があり、2回かかった人は再発率が70%、3回かかった人は90%とされる(13ページ)など、なかなか難しいものだなと思います。
 昔は、うつ病などで体調を崩した社員が復職するとき、まずは単純な軽作業から再スタートできたが、今は合理化が徹底され、単純作業は機械化されるか派遣社員が担うかアウトソーシングされ、うつ病から復帰した社員が働けるようなシンプルな業務が減り、正社員は戻るときは元の現場での復帰を求められがちだという説明(36~37ページ)はそのとおりだと思います。労働者側の弁護士としては、そこのところ、会社側にそれはおかしいだろと言って欲しいのですが、監修者はむしろ転職も選択肢と示唆している(38~39ページ)のが残念です。治す/再発させないことを優先すればそう言わざるを得ないかもしれませんが…


神庭重信監修 大和出版 2023年6月30日発行



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ポーランドの人

2023-07-30 19:59:18 | 小説
 72歳のポーランド人ピアニストのヴィトルト・ヴァルチキェーヴィチが、バルセロナのコンサート・サークルに招聘された際に世話役として応対した50歳間近の既婚者のベアトリスに惹かれ、その後バルセロナ近くの音楽学院で仕事をしてベアトリスに誘いを続け、ダンテを引用するなどしながら言い寄り続けるなどする恋愛小説。
 老いらくの恋にのめり込む男の姿を、自分が言い寄られることへの快感に自己陶酔しつつも覚めた目であしらう女の側から描いた小説の体で展開し、男が思いを遂げるのか果たさずに潰えるかを最後まで引っ張るかと思いきや、後半は男をではなく女の自己陶酔を描くことの方に収斂し、全体としてはそちらがテーマの作品となっている感じです。
 2003年のノーベル文学賞受賞者の最新作ですが、難解なところはなく(ダンテの引用とか、あれこれ考えていけばきっといろいろあるのでしょうけれども)、読みやすい一方で、それほどの感動・感慨もありませんでした。
 ヴィトルトからベアトリスへの通信でメールとは別に度々「手紙」が出てくるのですが、本当にそれは手紙と訳していいのか(削除したとか書かれてるし)、終盤で突然「めっちゃピューリタンふうに?」(184ページ)とかいう言葉が出てきたのが唐突感があるなど、ちょっと翻訳にも疑問を感じてしまいました。


原題:THE POLE
J.M.クッツェー 訳:くぼたのぞみ
白水社 2023年6月10日発行(原書のスペイン語版は2022年、英語版等は2023年)
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カラー版 マヤと古代メキシコ文明のすべて

2023-07-27 22:34:09 | 人文・社会科学系
 中央アメリカ(メソアメリカ)ないしメキシコの古代文明について説明した入門書。
 冒頭に、マヤ文明の起源が2005年からのセイバル遺跡調査までは紀元前600年頃と考えられていたが、セイバル遺跡の調査により紀元前950年頃とされ、さらに2017年からのアグアダ・フェニックス遺跡の発見で紀元前1100年頃とされたという説明があり、現在も新たな発見でマヤ文明像、マヤ文明に対する認識が変わっていっているということに知的好奇心をそそられます。
 アステカ文明では、1400年代から1500年代という時期に人口20万~30万というテスココ湖内水上都市テノチティトランが繁栄していたことが有名ですが、その強大に見えるアステカ王国が湖上に都市を築いたのは他の条件のいい土地は先住民がいて追い払われしかたなく建設したもので、テスココ湖の水深が浅く干拓が容易で木杭で囲って盛り土した上に湖底の泥土をくみ上げてトウモロコシの茎などの有機物(生ゴミ)を混ぜて作物を作る「チナンパ農法」の生産性が高く、人糞やゴミもすべて肥料にしてしまうので狭い土地でも清潔で、湖内なので水にも困らず、湖が天然の防壁となったという事情で発展したことが説明されていて、なるほどと思います。
 アステカ以外も含め、メソアメリカの古代文明は天災を鎮めるための儀式・儀礼として生贄を必要とし、戦争での捕虜を生贄としていたが、アステカは敗者に対して占領はせずに朝貢と守護神の祭祀を求めるのみであったために周辺諸国が皆アステカに従ってしまい捕虜を得ることができなくなってしまい、あえて支配地域内にあるトラシュカラ王国と意図的に緩やかな敵対関係を維持して捕虜を獲得するための戦争を定期的に行っていた節があるという説明には驚きました。生贄を要する文化文明には共感できませんが、やはり人間、いろいろなことを考えるものですね。
 以前からマヤ文明、アステカ文明には関心を持っていたのですが、私が全然知らなかったことが多数書かれていて勉強になりました。多くの地域で多くの文明や国が生まれては衰退しということを繰り返したことを説明しているのでしかたないのでしょうけれども、そのそれぞれの関係や全体像が理解しにくいところが難点ではありました。


青山和夫監修 宝島社新書 2023年6月23日発行
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読めば得する働く人のもらえるお金と手続き実例150

2023-07-16 23:02:44 | 実用書・ビジネス書
 失業・転職時の雇用保険、副業と社会保険、産休・育休の取り方と給付金、介護休暇の取り方と給付金、労災・傷病手当金、年金などについて、さまざまなケースでどのようなお金がもらえるか、どうすればより有利にもらえるかを説明した本。
 社会保険、労働保険の具体的な部分は、よくわからないことが多く、例えば退職日が1日違うと変わってきたりします(社会保険料が月末退社だとその月分が翌月発生して結局退職月の給料から2か月分控除されるが、月末の1日前退社だとその月分は発生しない。65歳の誕生日の2日前の退職だと失業保険の対象となるが、1日前はその扱いにならない)。会社都合退職の場合に、退職後に加入することになる国民健康保険の保険料が安く計算される(26ページ)とか、傷病手当金がいったん復職した後同一の疾病でまた休職したとき、最初の給付開始から1年6か月しかもらえなかった(最大で1年6か月分ー復職期間分しかもらえなかった)のが2022年の法改正で通算1年6か月分までもらえるようになった(152ページ)とか、私は知りませんでした。そういうふつうには知らないことを社会保険労務士らしくいろいろと説明していて、勉強になります。


蓑田真吾 朝日新聞出版 2023年3月30日発行
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心音

2023-07-15 22:57:14 | 小説
 8歳の時拡張型心筋症のため心臓移植を受けなければ生きながらえることができないと言われ、両親と周囲の人たちが募金運動を始めて1億5000万円余を集めてアメリカに渡り心臓移植手術を受けた城石明音が、帰国後周囲の反発・非難を受け、苦難の人生を歩む様子を描いた小説。
 ネット民には妬みや憂さ晴らしの投稿をするものが多数いるであろうことは想像に難くありませんが、近くにいる人々のほとんどがそういう人々なのでしょうか。登場する人の多くが、私の目には何もそこまでと思うくらい底意地が悪く、小説とはいえ、ちょっとついて行けないところが、私にはありました。第2章で明音を守ろうと決意を固め、バイオリンの演奏を勧め、付き合い、いじめの加害者と闘う教師間野美智子について、どこか力が入りすぎた自己満足・自己陶酔と冷ややかな目で描いている様子と合わせ、どうも作者が明音のような人物の幸福な人生を願っていないのではないかという、ひねた印象を持ってしまいました。


乾ルカ 光文社文庫 2022年7月20日発行(単行本は2019年4月)
「小説宝石」連載

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金庫番の娘

2023-07-13 22:53:19 | 小説
 大学時代の友人の伝手で大手商社での中央アジアのレアアース資源の開発プロジェクトを主導し成功直前で会社を辞めることになった藤木花織32歳が、一転して、父親が金庫番を務める与党の大物政治家久富隆一の秘書となり、久富の息子の幼なじみ隆宏とともに与党政治の世界に飛び込んでいくという政治小説。
 主人公の藤木花織が頭角を現して行くお話ですが、中盤で父親から実現したい理想を聞かれて、「わたしは――。個人が社会の犠牲にならない世の中にしたい」と言いつつ、「そのためには……金庫番として久富に仕える以外の具体案が思い付かない」(245ページ)というのは、これは何なんだ?と思います。そして、藤木花織・久富事務所と並行して2~3割くらいの頻度で東京地検特捜部が出てくるのですが、これが小原という検察事務官の視点で赤レンガ派と現場派の対立にこだわりながら小原がそれを見通せていないために何とももやっとした描写に終始してこのパート、なくてもいいんじゃない?と思えます。しかし、最後に切れ者の有馬検事にバトンタッチして、その有馬検事を藤木花織が翻弄するということで、最終的に力をつけた藤木花織の切れ者ぶりが強調されるというしくみになっていて、最後まで読むとあぁなるほどと思いました。


伊兼源太郎 講談社文庫 2022年7月15日発行(単行本は2019年7月)
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ワーキングガール・ウォーズ やってられない月曜日

2023-07-12 20:41:11 | 小説
 大手出版社にコネ入社した不美人で貧乳、背は高く脚は長くなくて髪が硬いというコンプレックスを持った150分の1サイズ(Nゲージサイズ)の建物等の模型づくりが趣味の28歳オタク経理部員高遠寧々が、やはりコネ入社のBL同人誌出版が趣味の総務部員百舌鳥弥々と絡みながら周囲で起こる出来事にドタバタする短編連作お仕事小説。
 どこか僻みっぽい寧々とわりと純情・直情的な弥々のコンビネーションが、ほのぼのさせていい読み味を出しています。
 最初と最後に登場する寧々の従姉の気っぷのいいお局様墨田翔子が主人公の「ワーキングガール・ウォーズ」という作品があって、この作品はその続編というか姉妹編のようです。しかし、28歳(寧々)とか、38歳(翔子)の働く女性のお仕事小説のタイトルがなぜに「ワーキングガール」なんだろう。ワーキングウーマンやウィミンじゃなくて。そのセンスが、ちょっと哀しい。


柴田よしき 徳間文庫 2023年3月15日発行(新潮文庫2010年7月、単行本2007年8月)
「小説新潮」連載
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理解するほどおもしろい!パソコンのしくみがよくわかる本 改訂3版

2023-07-11 23:17:56 | 実用書・ビジネス書
 パソコンの種類、パソコン本体と周辺機器のしくみ、OSとアプリケーションソフト、インターネット、ネット環境とリスク等について、Q&A形式で説明した本。
 ほとんどは基本情報ですが、パソコンは使い続ければレジストリに書き込まれる情報が増え続け、いらなくなったアプリケーションソフトを削除(アンインストール)してもその関係の記載が完全にクリーンになるわけではなくゴミのような記載が残り、といった具合にレジストリが肥大化するために、必然的に遅くなる(106ページ)、通常のシャットダウンでは次回の起動の時間を短縮するためにメモリの一部やドライバーの設定情報を残してシャットダウンするが再起動ではクリアして再起動するのでパソコンの不調が再起動で治ることがある、シャットダウン時にクリアにするためにはシフトキーを押しながらシャットダウンすればいい(110~111ページ)など、知らなかったこともあり、勉強になりました。
 昨夜、パソコンの電源ボタンを押しても一向に Windows が立ち上がらず、真っ青になりました。この間、起動が遅く、なんか調子悪かったのですが、ついにお釈迦になったか…ホームページ関係もメールもバックアップしてないのに、どうしたらいいのかと、途方に暮れていたところ、コンセントが抜けているのを発見。私もまだまだパソコン初心者であることを再認識しました。(それで昨夜はこの記事をアップできず…トホホ)


丹羽信夫 技術評論社 2023年5月6日発行(初版は2017年2月25日)

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まちがえる脳

2023-07-09 18:02:28 | 自然科学・工学系
 脳はコンピュータなどの機械とは大きく異なり、ニューロン(神経細胞)による信号伝達は確率的なもので不確実であること、それにもかかわらず多くの場合にうまく機能するしくみを始め、脳の活動、特に(死んだ/実験用に統制された脳ではなく)生きて働いている脳の活動にはわからないことが多いこと、世間に流布されているわかりやすい説明の多くが誤りであることを解説した本。
 わからないという話が多いところはモヤモヤ感が募りますが、例えば、記憶の曖昧さを説明しているところで、車同士で衝突した映像を見せた後、「車が激突(smashed)したとき、どのくらいの速さでしたか」と聞いた後に車のガラスが割れたかを聞いたグループではガラスが割れたと答える者が多く、「車がぶつかった(hit)とき、どのくらいの速さでしたか」と聞いた後に車のガラスが割れたかを聞いたグループではガラスは割れなかったと答えた者が多かった、しかし見せた映像には車のガラスは映っていなかった(89ページ)というエピソードは、目撃証言がいかに当てにならないかということを示していて、弁護士にはショッキングです。
 AIが人間の脳とはまったく異なるという説明で、AIは人の認識には影響しない些細なノイズで不可解な答えを出すことが説明され、「止まれ」と書かれた標識の一部に小さなテープを貼ると「時速45キロメートル制限」とまったく異なる標識と認識した、パンダの画像に人にはほとんどわからないようなノイズを重ねると雄牛であると判定し、全体の色調を変えるとテディベアと判定したということを紹介し、AIによる自動運転の車などまだとても怖くて乗れないとか、AIによる病理診断などまだとても信用できないと述べています(152~153ページ)。
 脳の話プロパーのところでも、認知症、アルツハイマー病の判定で脳の萎縮が重視されていますが、脳の萎縮の程度と認知機能の低下は必ずしも明確には対応していない、萎縮がほとんど見られない段階でも認知機能の低下がはっきり現れる人もいれば、大きな萎縮がありながら、日常生活が可能な人もいる(103ページ)とか、脳のある部分が壊れたときに機能代償が起こるときと起こらないときがあるがその理由はよくわかっていない、機能代償が起こるときもどこがその機能を代償するかはほとんど予測できない(105ページ)など、楽観材料にも悲観材料にもなる話題が満載です。
 わかったという話に比べてまだほとんどわかっていないという話は耳に入りにくいですが、脳について多くの迷信/俗説が流布されていることを認識しておくことはたぶんよいことだと思います。


櫻井芳雄 岩波新書 2023年4月20日発行

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最短時間でムダなく成果を上げる パソコン仕事術の教科書 改訂新版

2023-07-08 23:11:44 | 実用書・ビジネス書
 仕事で使うためのパソコンのしくみと設定についての知識、電子メール、ワード、エクセル、その他のソフトウェアの基本的な使い方のコツについて解説した本。
 パソコンの起動が遅いのを改善するという項目では、常駐ソフトと不要な「サービス」の無効化を提唱しています(68~69、84~86ページ)。しかし実際にやろうとすると停止・無効化しても大丈夫かどうかの判断が付かず、なかなか踏み切れません。86ページにこれは無効化してもたぶん大丈夫だろうというのが一覧表になっていて、よしこれは無効化しようと勇んで「サービス」を開いたら大半がもともと無効になっていて、ガッカリしました。もっとも、ついでにWindows10になって以来、ずっと勝手に開いてうっとうしかった右下のパネル表示をなんとか止められないかと試行錯誤していると、タスクバーの右クリックで「ニュースと関心事項」を「無効化」すると無事に消えてくれてスッキリしました。この本には書いていなかったですが、懸案事項の解消のきっかけとなってうれしく思いました。
 Edgeについて、「Microsoftのポータルサイトを利用させたいという意図が強すぎて、扱いづらい」「従来のブラウザとは使い勝手があまりに違うので、効率よく使えない」(140ページ)、Wordについて、「『みんなが使っているから』というただそれだけの理由で標準となったのです。かつて日本語ワープロソフトの標準はJustSystemの一太郎でした。むしろ、Wordの方が使いにくいという声は決して小さくはありませんでしたが、標準である以上、どうしようもありません」(176ページ)というあたり、同感だなぁと思い、やはりそう感じている人はそれなりにいるのだと安心しました。


中山真敬 技術評論社 2023年4月28日発行(初版は2017年3月28日)

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