伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ワーキングプアは自己責任か

2008-04-24 22:47:28 | 人文・社会科学系
 ワーキングプアが置かれている生活・労働環境やワーキングプアが増えた背景、非正規雇用を搾取する日雇い派遣・違法派遣、過重な労働を強いられる正社員の様子などを紹介してワーキングプア対策を論じた本。
 タイトルの「ワーキングプアは自己責任か」という論点については、「はじめに」では「どちらの議論が正しいかはわからない。客観的に考えれば、どちらの議論も一面において正しいし、一面において正しくはないということになるのだろう。」(6頁)と結論を避けています。これはちょっとずるい。このタイトルからしたら、普通の読者は、小泉改革(新自由主義経済)がワーキングプア増大の元凶で小泉改革はけしからんという内容を期待しますし、この本の内容も強い論調ではないものの、小泉改革でワーキングプアが増えた・ワーキングプアの状況が悪化したと示唆するものですから。もっとも、世界的にもワーキングプアが増えていることを論じる第2章からは、小泉改革がというよりはグローバリズムの影響だという印象が強くなりますが。
 著者の職業柄、統計数字での論述が多く、読みやすそうな見かけのわりに読み進むのにちょっと時間がかかりました。
 対策で、国民全員に安心して生活できる最低限の所得を国家が給付する「ベーシック・インカム」(社会保障はすべてこれに一本化して行政コストを節約するとともに、税金の各種の控除は全部廃止して財源をまかなう)(203~209頁)とか所得税を廃止して直接税として消費支出に課税する「支出税」(個人単位で消費支出に対して課税し累進課税とする)(217~222頁)という提言は、斬新でとても興味深く読めました。


門倉貴史 大和書房 2008年3月20日発行
コメント
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