伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

古代インド文明の謎

2008-04-08 21:41:01 | 人文・社会科学系
 南ロシア起源の白人・遊牧民であるアーリヤ人が紀元前1500年頃に北インドに侵入して、インダス文明を滅ぼし、インダス文明を担った黒い肌のドラビダ人が南インドに追いやられたという古代インド史の定説に対して、中央アジア先史考古学の専門家(わが国で専門家と呼べるのは自分だけかも知れないそうです:154~155頁)が反論する本。
 著者の主張は、インド・ヨーロッパ人は北シリアに起源がありそれが1万年前くらいに西アジア型農業(麦、山羊を中心とする農業)とともに拡散し、インダス文明はその人々に担われ、その人々がガンジス川流域に移っていったために衰退した、インダス文明の滅亡・民族交代はなかったというもの。著者自身、インド・アーリヤ人征服説に基づかないあるいはこれに反対する仮説は異端とされ無視されてきたと嘆き(159頁)、専門家が自分の専門を賭けて発言しているのだから無視はしない方がよい(155頁)とか述べているように、やや悲壮な決意で少数説を論じているもので、学問的興味はありますが、一般人が手を出すべきものではありませんでした。「この仮説に触れた人が、専門家であれ非専門家であれ、論理として受け入れる余地があるのかどうかを検証すべきである」(154頁)って言われても、判断できないし。
 高校時代から古代インド史に興味を感じている私としては、そこよりも、インダス文明は強力な中央集権国家ではなく長老会のような市民団が権力を握る一種の民主制国家だったのではないかという指摘(57~58頁、60頁、67~69頁)の方に注目したいと思います。ギリシャのポリスより昔にアジアに存在した民主制国家って、本当ならすごく興味深いですよね。


堀晄 吉川弘文館 2008年3月1日発行
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